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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目

1 :冒険の書庫の書記代理 :2005/12/17(土) 22:49:59 ID:wtVzywQO0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。

前スレが容量制限で書けなくなったため立てました。

前スレ
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら四泊目」(容量制限落ち)
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128780044/

過去スレ
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら三泊目」
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1122390423
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら二泊目」
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1116324637/
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1110832409/

まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/
※最近更新してない…書庫の中の人捜索中

554 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/02/23(木) 08:10:10 ID:SzDnHggt0

 ムーン「一体どうしようとしているの?もょもと。」
  もょ「ぜんたいてきにレベルをあげなければいけない。そこでだ。サマル。」
 サマル「何だい?もょ。」
  もょ「トーマスさんからええっと…やりの…なんだったけな…」
  タケ(槍術ね)
  もょ「そう、そうじゅつをおしえてもらってくれ。くさりがまじゃやくぶそくだ。」
 サマル「そんなのキツいよ。僕はもょみたいに力があるわけじゃないよ」
  もょ「なにをいっているんだ。サマルはききかんをかんじなかったのか?きとうしとたたかったときに。」
 サマル「うっ…」
  もょ「さいあくのばあいぜんいんがしぬかのうせいもあるんだ。これをきもにめいじておかないとダメだぞ!」
 サマル「わ、わかったよ。」
  リア「もょもとさん。私はどうすればいいの?」
  もょ「ムーンといっしょにじゅもんのとっくんをしてくれ。できればカタリナさんにけんじゅつのほうもおそわってほしい。」
  リア「うん!私も剣術を学びたい所だったのだから頑張ってみるね!」
  もょ「じゃあおれがつかっていたせいどうのつるぎをわたしておくよ。」

もょもとはリアに青銅の剣を渡した。
 
 ムーン「もょもと、貴方はどうするの?」
  もょ「もういちどムーンブルグのしろにいく。むだあしかもしれないがごせんぞさまがのこしたものがあるかもしれないからな。」
 ムーン「なぜそう言い切れるの?」
  もょ「ムーンみたいにじゅもんがつかえるひとがおおかったとおもう。なにかあるかもしれないっておもってさ。」
 ムーン「一人で行くつもり?」
  もょ「もちろん。じゃあまかせたぞ!」
 ムーン「ちょっと!勝手に行かないでよ!」

もょもとは町の外に向けて走り出した。こいつ足が早ええええええええええええええええ!!!!!1111!!!


555 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/02/23(木) 08:11:56 ID:SzDnHggt0
 もょ「はあっ!はあっ!」
 タケ「どないしたんや?急に。お前らしくないなぁ」
 もょ「まぁ、たまにはおれたちだけでもいいかなっておもってさ。」
 タケ「それはちゃうやろ〜?んん?もょもと君。」
 もょ「な、なんだよ。タケ。」
 タケ「もしかしてちょっと恥ずかしかったんやろ?もょ?」
 もょ「そ、そんなことなかったぞ。」
 タケ「そんな事ないよな。って俺には誤魔化す事は不可能やで。」
 もょ「な、なんでもないぞ。ほんとうに。」
 タケ「まぁええわい。深入りはせんとこ。それより何かあるんか?ムーンブルグに」
 もょ「ああ。むかうりゆうはおれのかんだよ。」
 タケ「えっ?それだけなんか?」
 もょ「おう。」
 タケ「話は変わるけど俺から言えることは一つあるで。もょ。」
 もょ「なんだ?」
 タケ「恋愛は沢山して経験を積むことや。それがお前自身にとって糧になるからな。覚えておき。」
 もょ「な、なんだよ。きゅうにそんなことをいいだして…」
 タケ「気にすんな。俺の独り言やで。とにかくムーンブルグに向かいますか。」

しばらく歩いて行く内に誰かが呼ぶ声がした。

 タケ「おい。もょ。誰かが呼んでいるで。」
 もょ「だれだろう?」

段々人影が見えてきた…………………… 

556 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/02/23(木) 08:15:46 ID:SzDnHggt0
ムーン「もょもと〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 タケ「ムーンちゃんやないか。良かったな。もょ。」
 もょ「バ、バカ!なにいってんだよ。」
 タケ「まぁ俺は楽しませてもらうわい。」

ムーン「ようやく追いついたわよ!はぁ〜疲れた。」
 もょ「どうしたんだ?ムーン?」
ムーン「案内役は必要でしょ。勝手に行動されたら困るわよ!それに私の方がお城について詳しいわ。」
 もょ「おお、たすかるぞ。ムーン。よくトーマスさんたちがきょかしたなぁ。」
ムーン「気にすることは無いわ。私は当たり前の事をするだけよ。さっさと行くわよ!」
 もょ「なにあせっているんだ?ムーン?」
ムーン「べつにあせってないわよ!もう!もょもとの馬鹿!!」

こりゃ〜オモロイ展開になってきたでぇ!俺は楽しく静観するとしますか。

俺たちはムーンと一緒にムーンブルグの城に向かう事にした。
 
もょもと&タケ
Lv.12
HP:86/86
MP: 0/ 0
E鋼の剣 E皮の鎧 E鱗の盾 E木の帽子 
特技:かすみ二段・強撃・チェンジ・はやぶさ斬り(もょもと専用)・ゾンビ斬り・大防御(タケ専用)


 

557 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/23(木) 11:24:19 ID:S3uWuhQO0
オルテガ、レッドマン乙

558 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/23(木) 14:23:05 ID:AhbpzWtrO
レッドマン乙。

B級ラブコメみたいだが個人的には後の展開に期待する。

559 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/24(金) 04:38:45 ID:s4mPwJ/60
人格で技チェンジってのは結構面白い要素だと思う。
ゲームならいざしらず、小説で上手く使えるかは賭けだと思うけど。

560 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/24(金) 07:35:49 ID:s98xS4Vd0
つーか眠りや麻痺状態でも交代すればokだしな。
いい意味で素人っぽくて斬新だと思った。
プロ作品なら御都合主義と叩かれそう。

561 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/24(金) 14:04:49 ID:45sH5Ad/0
書き手は以前より減ったけどそれぞれ作風が違っていいね

新人さん出てこないかなー

562 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 08:49:50 ID:6NU2zzLT0
やっぱこの手のSS書くときは攻略本とか必要だよな・・・
世界観やそういうのを知るためにも。

オリジナルで書いてる職人さんもいるようだけど
俺だと知識不足かもしれんな。。。

563 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 09:18:58 ID:2KJnE6XaO
記憶ないとそこの世界の住人だから問題ないけど
記憶あったらスライムぐらい倒しに行こうとするかもな。

あとは町の外に出て「メラ!」とか叫んじゃうんだろうな
で魔法出なくて恥ずかしくなってるに違いない!

564 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 11:12:37 ID:F7iVVm5p0
職人さん降臨待ち

565 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 13:41:49 ID:G8TfpNvM0
もし目が覚めたらDQ世界か・・・

場所によるが、カワイ子ちゃんがいれば文句なしだぜ?

566 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/25(土) 15:08:40 ID:KX6w/5ZI0
その日は泥のように眠った。丸々一日動き続けた反動で、体のあちこちが痛んだ。
夢の入り込む隙間もないほど深い睡眠に落ちていく。
目を覚ましたら元の生活が待っていて、バイトに明け暮れ何となく過ぎていくだけの日々が始まる。そんな
ことを少しだけ、考えたりもした。
けれど、目覚まし時計のかわりに私をたたき起こしたのは、
「おーい起きろ! 朝だよ朝!」
やたらと気合の入ったまだ聞きなれない女性の怒鳴り声だった。
やっぱりこれは現実なのだ。……認めたくないけど。

備え付けの部屋着を、昨日目覚めてからずっと着たきりスズメの一張羅に着替えて、宿の部屋を出る。
カウンターでチェックアウトの旨を伝えているミモザを私はぼんやりと見ていた。まだ眠い。だるい。
「ところで」
緑のオヤジに話しかけていたミモザが、ふと声を潜める。
「この町に強盗が来たって話を聞いたんだけど?」
……やっぱりやる気か。殺る気と書いてやる気。結局、強盗退治なんて危ないと思います(><)という私の
意見はまったく耳に届かなかった。……うー、行きたくない。
「ああ、聞きましたか、お客さん」
溜息をはく私をよそに、宿屋の饅頭ダヌキは訳知り顔で口を開いた。

「そうなんですよ。十日ほど前ですかね……突然現れたんです。この宿は襲われずにすみましたが、道具屋や
武具の店なんかは大変だったみたいですよ。
民家にも押し入ったそうで、金目のものから食料までかなりの被害だったとか」
そしてカウンターに肘を突き、オヤジは話を続ける。どうやら結構喋りたがりのようだ。
「それと、……ちょっと情けない話なんですがね、私どもも一応抵抗はしてみたんですよ。
けれどもこれがまた全然歯が立ちませんで。武具屋の旦那なんか怪我が元で寝込んじまってる始末。それも
たった数人の賊に……おっそろしく暴力的な奴らですね、あの強盗どもは」

567 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/25(土) 15:09:21 ID:KX6w/5ZI0
「ふうん……で、そいつらはどこに?」
ミモザがその続きを促すように相槌を打つ。肝心の情報はまだ出てきていない。

「それがですね、どうもまだこの近辺をうろついてるみたいで……残念ながら私には『どこ』とは分からないのですが、
おそらく近くに根城でも構えているんでしょうな。
それとこれは愚痴になるんですが……昨日も現れまして、その、今度は奪うのではなく、奴らがかっさらっていった
あれやこれやを馬鹿高い値段で売りつけてくるんです。
もともとは自分のものだったとは分かっているんですが、何分逆らえないもんですから、大金出して取り戻す人も
少なくありません」
そこでようやく口を閉ざした宿屋の旦那は、疲れたように溜息を吐き出した。
「まったくもう、住民一同泣き寝入りですよ」
昨夜のミモザの予想は、どうやら大方当たっていたみたいだ。ぽそっとさすが同業者、と言ったら、あんな野蛮な奴と
一緒にするなと鞭を鳴らされた。私だけでなくオヤジも飛び上がる。だからミモザさんこわいってば!

「そうか、よく分かった。ありがとう」
これ以上聞くことはないと踏んだ彼女は、旦那に金貨を一枚渡す。情報料、といったところか。
「クロベ、行くよ? あんたは何かいいの?」
「何か?」
「聞くこと。ないならいいけど。……ないでしょ? ないね? さ、行こう。悪かったね、旦那」
ほんと無理やりな人だなぁ。

568 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/25(土) 15:10:04 ID:KX6w/5ZI0
「あの、ちょっと待って、一つだけ!」
なかば引きずられるようにしながら、私は慌てて口を開いた。
「昨夜の前、私を宿まで運んでくれた人がいたって言いましたよね? それって、どんな人だったんですか?」
「……」
宿屋の主人は私の顔をまじまじと見る。そして沈黙する。
そんでもってもう一度まじまじと見て、ようやく思い出したように目をぱちくりとさせた。
「ああ、昨日の困った方でしたか!」
「困った方……」
何かムカつく。けど、とりあえず認めざるを得ない。オヤジの意図する意味とは違えど、困っていたことに違いはない。
「まあそうですけど。で、おとといの私の連れさんて、どんな方なんですか」
もしも会ったら、……もしも会えたら、お礼を言いたかった。こんな世界に突然やってきて、目が覚めたら魔物の腹の
中だった、なんて笑い話にも出来ない。いやいや、笑い話に出来る私がまずいなかっただろう。
「教えてください、お礼、言いたいんです」
全身緑の服を着込んだタヌキ親父は首をかしげ、思い出そうとしている。緑のタヌキか。……そば食べたくなってきた。
「そうですねぇ……紫色のマントを羽織っていて、ずいぶん大振りの剣を背負ってましたね。あとは……少年のような
ナリをしてましたけど、多分女性の方だと思いますよ」
紫色のマントに、大きな剣の女の人。口の中で何度も何度もその言葉を反芻したせいだろう、隣で同じように
その特徴を呟くミモザには、ついに気づかなかった。

クロベ Lv1 フリーター
HP 17/17 MP 0/1
E かれえだ E ピーコート ミモザのにもつ

569 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 15:15:07 ID:o8J9oamt0
>>565
ククール乙

570 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 15:42:21 ID:F7iVVm5p0
クロベさん乙です

571 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 22:58:59 ID:8RMlxeRE0
「お主達、魔族との決戦に参加すると言っていたが…本気か?」
まだ全快には至っていないヘンリーをベッドで休ませたまま、俺達は海辺で長老と話をしていた。
「決戦に参加せずに逃げても、いつかは殺されるだろうし…何より魔族には借りがある。倍にして返すつもりだ。」
俺は右拳を強く握り締める。魔族への怒りは微塵も風化していないようだ。
「そうじゃったか…。」
カルベ長老は僅かに笑みを零す。
「お主達のような勇気ある若者がいるとは思いもせんかった…。まだ、希望はあるかもしれんな…。」
遥か北に見える魔族の城を睨み続けていたカルベ長老が、今度は海辺の村に視線を変えた。
「この村にも、1ヶ月前には大勢の村人が住んでいた…。皆、呪文の知識に長け、中には中級呪文を操れる子供などもおった…だが…。」
カルベ長老の表情がガラリと変わる。今まで微笑んでいたのに、突然悲しみに満ち溢れた表情を浮かべた。
「魔族が攻めてくると知った途端、この有様じゃ。わし以外皆、村から逃げていきおった…。」
多くの呪文を操れる村人達ですら、逃げていったのか…。やはり、それ程魔族は脅威の存在なのだろう。
俺達の行く先々で、人々の悲痛な叫び声を聴かされる。魔族は、どこまで恐ろしいんだ…。
「わし一人でも魔族と戦うつもりじゃったが…正直なところ、確実に死ぬと思っていた。魔族の強さは嫌というほど実感しとるからな。」
カルベ長老はふぅ、と溜息をつき、俺に視線を合わせた。
「じゃが…今は違う。お主達のような者がいれば、魔族を倒すことも可能かもしれん…。」
カルベ長老が杖をつきながらゆっくりと歩き、ミレーユの前で止まる。
「ミレーユ…じゃったか。これを持っておきなさい。」
カルベ長老は、銀色の素朴な首飾りを外すと、ミレーユに手渡した。
「これは…?」
「…お守りのような物じゃ。大切にするんじゃよ。今日はもう遅い。この村の宿を使うといい。」
そう言って、カルベ長老は家に戻っていった。




572 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:00:02 ID:8RMlxeRE0
次の日、ヘンリーはすっかり全快し、既に修行に励んでいた。
俺はヘンリーと剣術修行を行い、ミレーユはカルベ長老に呪文を教わっていた。
決戦に参加する他の戦士達と修行をするのが望ましいのだが、生憎誰も来ていない。『まだ来ていない』のか、『誰も来ない』のかは分からないが…。
ただ、生きている限りカンダタとエテポンゲが来るのは確かだ。今の時点では、カルベ長老を含め6人…思いのほか少ないが、奇跡が起きれば、或いは…。
「隙だらけだ!」
ヒュンッ
剣が空を切る音が響く。俺の左腕を、ヘンリーの剣が掠っていた。
危ない所だった。戦闘中に考え事などしている暇はない。相手が魔物だったら死んでいたかもしれん。
「掠ったか…。中々反応が良くなってきたな。」
とヘンリーに言われるものの、まだまだヘンリーにはかなわない。先程から、ダメージを受けては回復、受けては回復という拷問に近い修行を続けている。
「メラ!!」
ボウッ
俺の左方向から小さな火球が放たれ、俺に直撃した。明らかにおかしい。ヘンリーは俺の目の前にいるのに。
メラを放ったのは、カルベ長老だった。杖先が真っ直ぐこちらに伸びている。
「まだまだ甘いのう…。決戦は1対1で行われる訳ではない。常に自分と戦っている相手以外にも警戒をしておくんじゃ。」
確かに。どうも1対1に慣れすぎていた。完全に不意を突かれてしまったようだ。
「時々わしのメラが飛んでくるから、常に警戒しておくんじゃ。いつ飛んでくるか分からんぞ。」
完全に拷問だ…ただでさえ俺より遥かに強いヘンリーと1対1で戦わなければいけないのに、メラまで飛んでくるとは…。

「やっと着いたぞ!」
俺が再び剣を構えた瞬間、村の入り口から声が聞こえてきた。
そちらの方を見ると、全身痣や切り傷だらけの旅人らしき者が4人いた。

573 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:01:07 ID:8RMlxeRE0
「お前達は?」
ヘンリーが、旅人達に歩み寄る。
「俺達は魔族との決戦に参加する為にこの村に来た。」
金髪のリーゼント頭の剣士が一歩前に出て、ヘンリーに答えた。
「何、それは本当か!?」
「ああ、このまま黙って魔族にやられる訳にはいかないからな。俺達も協力させてもらう。」
一気に仲間が4人も増えた。それは喜ばしい事だ。が…。
俺は心の底から喜ぶ事は出来なかった。その4人の中に、カンダタも、エテポンゲもいなかったのだ。
まあ、まだ10日あるからそれまでに来る可能性は十分あるんだが…。
それにしても気になるのは、この4人の面々。どうにも既視感が拭い去れない。
金髪のリーゼント頭の剣士、小柄で軽装の盗賊風の男、フンドシとマントの変態男、全身防具で身を堅め、顔以外覆い被さっている戦士。
「む…君は、あの時の地下の魔物を倒してくれた少年!?」
フンドシの変態が俺に迫り来る。一瞬生命の危機を感じ取ったが、あまりの恐怖に動けなかった。肩を鷲掴みにされる俺。
「久しいな!君が仲間に加わってくれるとは、頼もしい!」
…ようやく思い出した。地下が虫に占領されていた城の変態王か。どうりでこのインパクトのあるフンドシにデジャヴを感じた訳だ。
しかし、この変態王強いのか?あの時は虫程度に恐れをなしていたのに…。
「ん?おお!わが城の試練を乗り越え、魔物を倒して洞窟を開通させてくれたあの時の少年か!」
今度は、リーゼント。
「お、お前は…宿屋の女を助けるために俺のアジトn




574 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:01:54 ID:8RMlxeRE0
取り敢えず長老の家に入って一旦場が落ち着いた。
どうやらフンドシ=変態王、リーゼント=ブラスト、盗賊=盗賊の頭(エテポンゲの親分)らしい。また懐かしい奴が揃ったな。
結局、無言のまま全く喋らないもう一人の戦士の正体は分からなかったが、やはりどこかで見た事がある気がする。
「ふむ…今のところ8人か…。まさかこれ程集まるとは思わなかったわい。」
俺も、正直カンダタとエテポンゲ以外にはもう誰も来ないと思っていた。まさか、魔族に対抗しようと思っている奴がまだこんなにいるとは。
これは魔族討伐も夢ではなくなってきたかもしれない。いや、確実に『現実』にしてみせる。
「実はな…先日、魔族達がわしにあることを言いに来たんじゃ…。」
突然重々しく口を開くカルベ長老。
「魔族が直接…?一体何を…?」
緊迫した雰囲気の中、俺はカルベ長老の言葉を待った。
「『部隊長ジャミ、ゴンズの他に、部隊員は50。それと、魔族の秘密兵器を用意してきてやる。覚悟していろ。』…と。」
「ご…50…だと…!」
一瞬で部屋全体、いや、世界が『絶望』で埋め尽くされる。
俺は、荒野に生息する野生の魔物ですら対等に戦えない。50匹の部隊員は魔族の城の奴らで、恐らく野生より知能も高く強いだろう。それが、50…。
それに、秘密兵器とは…?武器…?最強の魔物…?それとも他の何か…?
とにかく今分かることは、この瞬間俺の中にある『希望』が『絶望』に変わってしまったということだ。
「面白い…。」
皆が絶望の表情を浮かべる中、ブラストは一人薄ら笑いを浮かべていた。
「数が50?秘密兵器?面白いじゃないか。相手にとって不足はない。」
どうやら、相当の覚悟をしてきているようだ。このブラストという男は。
「わが城の王や兵士、住人、そして世界の人々の為にも、俺は魔族を倒してみせるぞ!」
拳を強く握り、歯を食いしばるブラスト。

575 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:02:33 ID:8RMlxeRE0
「そ、そうだな…。」
「どうせ捨てる命だ。とことんまでやってやろうじゃないか。」
「ビビってる場合じゃない!やってやろうみんな!」
本心なのか一時的な感情の高ぶりなのか、皆が、ブラストに煽られ奮起する。
「決戦は近いぞみんな!今まで散々弄ばれた分、ここで返り討ちにしてやろう!」
「おお!!」
その日は夜も遅いので全員が早々と眠りについた。



「はぁ…やはり一時的に感情が高まってただけかもしれないな…。」
宿のベッドに横になり、ぶつぶつと呟く俺。あれから数時間、既に怖気づいていた。
数が50、というのは冷静に受け止めている。ギリギリ許容範囲だ。
俺が気になっているのは、秘密兵器。
どうも胸騒ぎがする。この『秘密兵器』というのを聞いた時から…。気のせいだろうか…。
カチャッ
突然ドアが開かれる。そこに立っているのは、例の謎の戦士。
戦士は先程の重装備とは違い、ステテコパンツ一枚という大胆な格好をしていた。
「どうした…?」
戦士は何も言わず、俺に歩み寄る。
不気味だ…。一体何を考えているんだ…。何故突然俺のところに…。
「やはり忘れちまったか…俺のことを…。」
「えっ?」
戦士が初めて口を開いた。『忘れちまった』とは…やはりどこかで会っていたのか?
「まあ…会ったのはほんの数分だったしな…忘れていても仕方ないだろう…。」
と言われるものの、全く思い出せない。どこかで見たことはあるんだが…。

576 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:03:05 ID:8RMlxeRE0
「俺だ。魔物に畑を荒らされていた村の、武器屋だよ。」
「あ………ああー………。」
言われてみるとそんな気が……ん?
待て、確かあの村の武器屋は…。
「暫く見ない内に、随分良い体つきになったな。どうだ、今夜一緒に…。」
「うぎゃああああああああああああ!!!!!!」



次の日、俺とカルベ長老を除く6人は、呪文や剣の修行に励んでいた。
武器屋の腹に大きな切り傷が出来ており、皆が心配そうにしていたが、当然俺だけはスルーだ。
それはいいとして、俺はというとカルベ長老とある話をしていた。
「結論から言うと、無理じゃな。」
がくりと俯く俺と、優雅にコーヒーを飲むカルベ長老。
俺はカルベ長老に稲妻の呪文を教えてもらうよう頼んだが、一言目でその希望を断ち切られた。
畜生、大魔導師のカルベ長老なら容易に教えてくれると思ったんだが…。
「昔はただ一人、勇者と呼ばれる者が使えたが…今は誰一人として使えるものはおらん。わしに使えん呪文がお主に使える訳ないじゃろう。」
「いや待て、俺が勇者の血をひいている可能性が…。」
「たわけ!お主のような頼りなさそうな奴が、勇者な訳ないじゃろうが!」
確かにそうだ。第一俺は異世界から来たんだし、勇者な訳がない。
「諦めて、剣の修行でもするんじゃ。稲妻の呪文など、使おうと思うだけ時間の無駄じゃぞ。」
そう言い残して、カルベ長老は部屋を出て行く。
が、それでも俺は、あの稲妻の呪文が使いたかった。あの時見た稲妻の威力は、それ程凄かったのだ。

休憩時間、就寝前、早朝訓練の前。俺は少しでも時間があれば、雷鳴の剣をいじって、この剣を利用して自分の魔力で稲妻を出そうとした。
が、そんな努力も虚しく、雷鳴の剣は稲妻を放つどころかピクリとも反応しなかった。
そうして、無情にも瞬く間に月日が流れ、決戦前夜………。




577 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:03:37 ID:8RMlxeRE0
「まず、ブラストとヘンリーが前線に立ち…。」
カルベ長老が書いた海辺の村の図を見ながら、作戦会議が行われていた。
皆が集中してカルベ長老の話を聞いている中、俺はと言うと全く集中できなかった。
まだ、カンダタとエテポンゲが来ていないのだ。
決戦前夜…もう二人が来る望みは薄い。もしや、二人ともどこかで魔物に…。
いや、あの二人に限ってそんな事がある筈がない。
きっと、今日の夜中に颯爽と現れるんだよな…そう…だよな………。
自分にそう言い聞かせるも、最早そんな考えは俺の中で消えかかっていた。
それに反比例して膨れ上がる思いは、二人の『死』だけだった。



暗黒の雲の遥か彼方で、月が力なく輝く深夜。波の音をBGMに、波打ち際で夜風に当たる俺。
決戦を次の日に控え、俺の意識は覚醒していて眠れなかった。
明日、ここが戦場になるとは考えられないほど、辺りは静まり返っていた。
ここが魔族の墓場となるか俺達の墓場となるか…全ては明日、決まる。
「眠れない…のか?」
突然俺の後ろから声がする。声の正体は、ヘンリー。
「ああ…。決戦のこともあるけど…それより…。」
「カンダタのことか…。」
「………。」
やはり、ヘンリーも気になっていたようだ。未だ姿を見せないカンダタが。

578 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2006/02/25(土) 23:04:18 ID:8RMlxeRE0
「あいつのことは…もう何も言うな…。お前も、分かっているんだろう…。」
「………。」
やはり、カンダタはもう………。じゃあ、エテポンゲも………?
俺達二人でもかなわなかった闇のドラゴンを一人で倒したエテポンゲが…まさか…そんな事が…。
使えなかった稲妻呪文…。
魔族の秘密兵器…。
そして、現れないカンダタとエテポンゲ…。
決戦を前に抱える俺の不安は、あまりに大きすぎるものだった。

魔族との決戦まで、あと1日

Lv32
HP167/167
MP88/88
武器:雷鳴の剣 鎧:シルバーメイル 兜:風の帽子
回復:ホイミ、ベホイミ
攻撃:バギ、バギマ、ギラ、ベギラマ
補助:スカラ、ルカニ
特技:はやぶさ斬り、火炎斬り、諸刃斬り、魔人斬り、正拳突き

579 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/25(土) 23:09:33 ID:pYfjE/wWO
ローディ乙

580 :ヘタレ ◆ozOtJW9BFA :2006/02/25(土) 23:59:56 ID:47zyAGXv0
「あぁ?」
目が覚めて一言目に出た言葉がそれだった。
それはちらかった自分の部屋とは全く違う空間だった。
殺風景な部屋の清潔なベットの上に俺は寝ていた。
とりあえず昨晩のことを思い出してみる。
(えーと、たしか仕事から帰ってきてG1ジョッキーやってて
 いつの間にか寝たんだよな。どうなってんだこりゃ。)
とりあえず部屋の外に出てみることにした。
そこには豪華な廊下が広がっていた。
(なんだここ?まさか北に拉致されたか!?何で俺が・・・。
 うそだろ・・・。俺も曽我ひとみとかの仲間入りかよ。
 冗談じゃねぇ!!)
※「おや、目が覚めましたか!よかった。」
俺「おわ!?」
突然後ろから声がしたので振り向くとそこには太った中年
のオッサンが立っていた。人が良さそうである。
俺「あ、どーも。あの、ここは?」
※「今日の明け方頃、あなた神殿の外に倒れていたそうですよ。
  でこの宿屋に運ばれて来たんです。あ、ここはダーマ神殿
  です。いくらなんでも知ってますよね。」
俺「・・・。はぁ!?wダーマ神殿ってドラクエの?
  なんだドッキリかwあぁ〜ビビったwあれ?カメラは?」
辺りを見回してもカメラなんてなかった。ただ目の前のオッサンがポカンとして俺を見ている。
気まずい空気が流れ始めた。




581 :ヘタレ ◆ozOtJW9BFA :2006/02/26(日) 00:01:00 ID:47zyAGXv0
※「どうやら頭を打ってしまったようですね・・・。お気の毒に。
  気晴らしに神殿の中を散歩してきては如何ですが?私は朝食の
  準備をしていますので。着替えはあなたのいた部屋に置いてお   
  きましたから着てみてください。」 
そう言うとオッサンは厨房らしい部屋に入っていった。
(・・・信じられねぇ。なんかの冗談だろ。はは・・・。
 とりあえず散歩してこよ。ん?なんか寒いなここ・・・。)
ふと気付いたら俺はパンツ一丁だった。

Eステテコパンツ


582 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/26(日) 04:25:54 ID:G5B8A/il0
ローディ氏盛り上がってきたー
いよいよ決戦か…。…。

新人ヘタレ氏も乙
うまいね。

583 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/26(日) 05:26:20 ID:H04dSTc2O
ローディ氏乙です
いよいよ決戦、楽しみ!

ヘタレ氏の書き出し一行目の「あぁ?!」が変にツボに入ってしまったw

584 :ヘタレ ◆ozOtJW9BFA :2006/02/26(日) 15:19:38 ID:FkC16vvL0
とりあえず部屋にあった布の服を着てみた。
それはまるっきりドラクエの攻略本で見たのと同じ物だった。
(どうやらマジらしいな。まぁ、俺こうゆうことには
 すぐ頭切り替えられるし。うん、ここはドラクエの世界だ。
 納得した。なんでここにいるかとかめんどくせーことは
 後で考えよう。とりあえず散歩だ。つーかドラクエの何だ?
 3か6か7か。まぁそれもそれとなく聞いてみよう。)
とりあえず部屋を出て適当に歩くと大広間みたいなでかい部屋に
でた。そこにはまるっきり仮装大会のような景色が広がっていた。
とりあえず数人で世間話をしてるらしい奴らに近づいてみた。
俺「ムドー」
とりえあえず小声で呟いてみた。反応がない。
(6ではないのか・・・。)
俺「バラモス」
※「ん?魔王バラモスがどうしたんだ?」
(ビンゴ!)
俺「いやバラモスって怖いッスよね。」
※「は?なに言ってんだ?変な奴だな。」
適当に合わせてその場を離れた俺は考えた。
(3か・・・。よしこうなったら俺が転職してバラモス
 倒してやるか。そしたら俺が勇者ロト!俺が伝説を
 はじめてやる!)
そう心で決意すると神官ぽい偉そうなジジイの所に走った。

585 :ヘタレ ◆ozOtJW9BFA :2006/02/26(日) 15:21:23 ID:FkC16vvL0
ジジイは高い台の上にいた。本当に偉そうだ。
とりえずジジイの前に立って言った。
俺「あの〜転職したいんすけど。」
爺「ほう。ではどの職に就きたいのじゃ?」
俺「勇者でお願いします。」
爺「たわけ!勇者は職業ではないわ!このスカタンが!!」
俺「え?そーなんすか?そういえばそうだ。じゃ戦士でいいや。」
爺「本当にいいんじゃな!?ん?レベルが足りんわ!!
  顔洗って出直してこい!!」
俺「あら?すいまんしたー。」
(そういやレベル20にならないと転職できないんだっけ。
 忘れてた。よしレベル上げるか。)
レベル上げのため俺は神殿の外にでていった。
丸腰で。




Eぬののふく

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/26(日) 18:53:54 ID:/G2IpdXF0
(#^ω^)これは宣伝じゃないお!
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

↓このスレだお・・・
■FINAL FANTASY XII 〜FF12スレッド〜ver.0363■
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1140938408/


587 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/27(月) 01:50:49 ID:+/GFcmy20
>>ヘタレ
クソ面白
積極的杉な主人公萌え
つーか丸腰で3ダーマかよw

588 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/27(月) 04:11:05 ID:TMIDZCMiO
ヘタレが早くもyabeeeeeeeeeeee!!!!!11111

589 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/27(月) 09:20:34 ID:7R0yHLBD0
新機軸だなwヘタレ氏
頑張ってw

590 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/27(月) 12:42:35 ID:4nuXj9Sw0
カワイ子ちゃんいないのかよ・・・

591 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/28(火) 09:42:54 ID:gSR118sk0
新たに始めてもいいかい?
前スレとかまとめサイト、隅々まで読んでないので内容被りそうだけども。

592 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/28(火) 16:31:41 ID:fgAuuseJ0
>>591
俺が許す

593 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/28(火) 19:49:36 ID:zPGF0zGpO
>>591に期待!

594 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:32:00 ID:zBZ91LXP0
>>591ではないのですが少し書いてみたので読んでもらえると嬉しいです。

あ〜、また多分一限目さぼっちゃったよ・・・。
眠気具合から考えると今は10時ごろのはずだけど・・・何時だろ。
そんなことを思いながら手探りで携帯を探す。
あれ?いつも枕元に置いてあるのに。目覚ましのアラームがうるさくてベッドから落としたかな?
仕方なく目を開きベッドの下を見る。無い。
まぁいいや、携帯は後だ。
テレビのリモコンを探す。無い。
というかテレビ自体が無い。
何か変だと思い部屋を見渡す。
一気に意識が覚醒した。


595 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:32:30 ID:zBZ91LXP0
友達の家に泊めてもらったときや旅行に行ったときなんかは
朝起きたとき自分がどこにいるのかわからなくなるときがあるものだが、
今回は明らかに異質だ。こんな部屋は見たことが無い。
木造の三畳間に古いベッド。何処かに監禁されたのか?
昨日の記憶・・・しっかりある。確実に昨日は自分のベッドで寝たはずだ。
どうしていきなりこんなところに?ワケがわからない。
しかしこれは考えても仕方が無いだろうと思い、今できることをすることにする。
少しでも現状を把握するため窓の外に視線を移す。・・・中世ヨーロッパだ。
僕の目の前には中世ヨーロッパの町並み。そう遠くないところにお城まで見える。
一瞬夢かとも思えたがこの感覚は夢ではないだろう。
混乱している頭でもわかったことがひとつ。小さいながらも窓は開く。
窓のすぐ下は人通りの多い道。つまり僕が監禁されているという可能性は低いということだ。


596 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:32:59 ID:zBZ91LXP0
もう僕一人では埒が明かない。とにかく人に会おう。部屋を出るため一応持ち物や服装を気にする。
僕が着ているのはロードオブザリングの登場人物が着ているような中世ヨーロッパの旅人風の服。
そのポケットに五枚の金貨の入った袋。もういいや、何でもありだ。
部屋を出ると番号のついた同じようなドアがずらっと並んでいる。ここはどうやら宿泊施設のようだ。
階段を下りがやがやと人の声のするほうへ進む。一気に視界の開けたそこは食堂だ。
屈強な中世ヨーロッパ風の人たちが談笑している、日本語で。
もういいや、なんでもありだ、翻訳コンニャクでも食ったんだろう。
もうそんなどうでもいいことはどうでもいい。いろいろ知りたいことがあるんだ。
出口の横にカウンターを見つけ、多少挙動不審になりながらもそこへ突進する。
「すっ、すぃゃせん!」
恐ろしく間抜けな声だ。しかも聞きたいことがあるのに後の言葉が出てこない。
「お食事ですか?」
「い、いぇ」
「チェックアウトですか?お名前をどうぞ」
名前!?こんな得体の知れない場所で本名を出すのは嫌だ。
僕は咄嗟によく使うハンドルネームを口にしようとした。
「え〜と、スズ様ですか?」
!!
「あ、・・・はい・・・」
「それでは行ってらっしゃいませ」
返事もせずにギクシャクと外に出る。
・・・もういいや、なんでもありだ。


597 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:34:05 ID:zBZ91LXP0
外に出てみたものの行くあてなどあるわけがない。ちょうどいい、少し休もう。



どこなんだろう、ここ。さっき聞きそびれた。
某巨大テーマパークにも見えないことはなかったが、それにしては生活臭過ぎる。
街を見渡す。まず目に入るのは城。落ち着いたら入ってみたいかも。
あとは・・・店とか・・・教会。神父さんならいろいろ聞きやすいかもしれない。そろそろ動くか。いざ教会へ。
教会の中にはまばらに人がいる中に一際目を引く大男が一人。
モヒカンだ・・・初めて見たよ・・・さすがになんでもありだなぁ・・・。
でも今欲しいのは面白い人じゃなくて助けだ。次こそは、と息を整えて神父さんに話しかける。
「あのぅ」
「はい、何かお困りでしょうか?」
「はい、ちょっと僕、記憶に欠けたところがあるみたいで・・・ここはどこなんですか?」
「おお、それはお困りでしょう。私でよければお力になりますぞ。
まずここはレイドックの城下町。レイドックの名に聞き覚えは?」
「いえ・・・ありません」
現実世界では。ゲームの中でならあるのだがそんなふざけたことを言うつもりはない。
と言っても城といい街の並びといいゲームの中のレイドックに妙にしっくりくるのも事実だった。


598 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:34:37 ID:zBZ91LXP0
「あの・・・ここは日本ではないんですね?」
「日本・・・あなたの故郷ですかな?そのような地名は私の頭には無いようです。
お力になれず申し訳ない。」
・・やっぱりおかしい。
思いっきり日本語を使っていながら日本を知らないなんてことがあるだろうか。
僕の頭の中にはとても信じられない仮説がひとつ。とても信じられないが一番しっくりくる仮説。
「あの・・・あとひとつ。昨日爪を切ってたら失敗して深爪しちゃって・・・」
「おお、これは痛そうに、さすれば我が教会に5ゴールドのご寄付を。ホイミ!」
!?
まさかそんな・・・
「さて、まだ私にできることはありますかな?」
「いえ、どうもありがとうございました。おかげですごく助かりました。あ、そうだ。
5ゴールドでしたね?」
「いえいえ寄付というものは余裕のある方からのみ受け取るべきもの。
お困りの方から受け取ろうなどとは思っておりませんよ。
さっきのはつい癖で・・・お気になさらないで下さい。」
「じゃあお言葉に甘えて・・・。それじゃホントにどうもありがとうございました!」
「お気をつけて。あなたに神のご加護があらんことを・・・」


599 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:35:11 ID:zBZ91LXP0
神父さんの話をまとめると、ここはどうやら昨日までとは違う世界であり、
ここでは「レイドック」や「ホイミ」などドラクエの世界にそっくりなものがある。
というかドラクエ世界そのものだ。深爪もきれいに治っている。
こんなこと昨日までじゃあり得ないことだ。それをあの神父さんはさも当たり前のように・・・。
そう。ここはドラクエの世界。
何故かはわからないが僕はドラクエの世界に迷い込んでしまった。
そう思うとさっきの大男はどう考えてもハッサンだ。
この街で唯一の知り合いに会えたような気がした。しかし向こうはこっちのことを知らない
話しかけようにも実際に見たあの大男に話しかけるのはちょっと勇気がいる。
知り合いになる必要性も問われるが、いずれは世界を救う大物だ、仲良くして損はないように思える。
・・・簡単に仲良くなれればだが・・・損得勘定丸出しだなぁ。


600 :キョウ ◆Hju2GLbs6k :2006/02/28(火) 21:36:33 ID:zBZ91LXP0
今日はもう人に話しかけるとか気力が続かないので適当に街をブラブラするだけにする。見れば見るほどレイドックだ・・・。
初めてドラクエ6をやったときのことが思い出される。
・・・やっぱり人の家のタンスとか勝手にあさったら怒られるよなぁ?
2時間程歩いただろうか。体が激しく疲れを感じ、まだ日は出ていたが宿に戻ることにした。
お金を払って部屋へ行き、ベッドに倒れこむ。あ〜、一体何なんだ・・・。
意味わからん・・・。帰れるんだろか・・・。
帰れるんなら一週間くらいいてもいいかもなぁ・・・。そういや宿のオヤジ僕の名前知ってたよな・・・。
そのうちに僕の意識は薄れていった。

続く


601 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 00:33:18 ID:EWU8T+eQO
何か一人称が僕ってのが新鮮だ。
あと翻訳こんにゃくイカス

602 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 04:29:37 ID:ldk627yI0
神父のくだりが聖職者らしくていいね。
次回楽しみにしてます。


603 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/01(水) 11:26:38 ID:ZQyItkOQ0

18歳にして新社会人の一員となった私を待っていたのは、見知らぬ家々を訪問し、ひたすら保険の話を聞かせてまわるという仕事だった。
デザイナーを夢見て高校に通ったはずなのに、いざ卒業してみると、このバカみたいな会社への就職が決まっていた。
これ以上勉強するのが面倒くさくなり、進学よりも自分が自由に使える金が欲しい、という安易な気持ちで就職したのだ。
「マナミって、居心地はいい奴だけど、いつもダルそうだよねー」
それが友人達から私に寄せられた人物評だった。
だって、私は来る物拒まず、去る物追わず。
高校3年間の交友関係なんて一瞬で終わるものなのに、いちいち怒ったり泣いたりするのって、面倒くさいじゃない…。
 自分は一体何をやっているんだろうと、ふとした瞬間に思わなくもなかったが…。

一日中外回りに出ていた。未だ着慣れないスーツは心なしか重く感じられる。木枯らしが足元をすくっていった。
今日も一件の契約も取れなかった。
事務所に戻るのは気が重かった。自然、足取りも引きずるような重いものとなる。
ふと、足元ばかり見ていた私の視界の端に何かが映った。
深夜を通して営業しているファミレスのネオンだった。
サボりたい。寒さをしのぐという誘惑に勝てず、私はあたたかな店に入り、コーヒーを頼んだ。
安っぽいスポンジの椅子が、やけに柔らかく感じられ、私はうとうとしはじめた。

ハッと気付いて、慌ててポケットの中の携帯電話を探った。折り畳みを開くのももどかしいくらいに時刻表示を見ると、
あれから3時間以上も経ってしまっている。
帰社時間を1時間も過ぎていることになる。課長の鬼のような形相が目に浮かび、傍らのバッグをひったくるようにして手に取った。
帰らなければ。私はうんざりした。またことあるごとにねちっこく嫌味を言われるに決まっている。
勢い込んで立ち上がった私であったが、そのときになってある事に気が付いた。
そこはファミレスではなかった。

604 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/01(水) 11:28:18 ID:ZQyItkOQ0

どうやらビジネスホテルの一室のようだ。
室内は至って簡素なもので、ベッドとタンス、テーブルしかない。生木が剥き出しの床に、石の壁。
明治か大正にしかお目にかかれないような、いまどき珍しいランプがテーブルの上にはあり、そこからは独特の匂いが漏れている。
ガタンと派手な音がして、何かにけつまづいた。勢いこんで椅子を蹴飛ばしたらしい。
テーブルには、自分の顔の跡がくっきりと付いていた。寝息の湯気が付いているわけだが、それは空恐ろしくなるほどに不細工だった。
ここに突っ伏して寝ていたのか…。
ファミレスからホテルに入った道程がさっぱり思い出せない。しかし、そんなものは課長の説教の前にはどうでもいい事だ。
とにかく今は急がねばなるまい。と、ここでふと私はある事に気が付いた。
このマニアックな部屋…もしかして。
なんて事だ。けだるく生活してはいても、道を踏み外す事は絶対にしまいと思っていたのに。

ここは……ラブホテルなのではないか?

ラブホテルというものはとにかく様々な部屋があるらしい。これまで生きて居て入った事は無い。
無いが、しかし。こういう中世みたいな部屋は、何か意味深なものを表現しているような気がした。
なんでこんな部屋があるんだろう。この疑問を解決するため、私は無い知恵しぼって渾身の結論に行きついた。

答え:雰囲気作りのため…ではないか。

しかし、こんなタンスしか無い貧乏くさい部屋に連れてこられたら、普通にリアクションに困るだろうという、新たな疑念が生じた。
いや、違うよ。私のバカ。
どう考えてもラブホじゃないよこれ。
でも、何だって私はこんな妙な所に居るんだよ。
私はこめかみを抑えた。そこは、勢いよくピクピクしていた。
大きく深呼吸して、少し冷静になって考えてみる。

私は、あちこち調べてまわった。不安から、自分のバッグを片時も離さなかった。
窓を見付け、無性に外の空気を吸いたくなってカーテンを開けた。
そこには、またしても私を悩ませる光景が広がっていた。

605 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/01(水) 11:29:48 ID:ZQyItkOQ0

見渡す限り、濃い緑の森、彼方にそびえる青々とした雄大な山、さんさんと照りつける太陽に反射した湖水の煌きも見える。
眼下には、ドールハウスか何かのように、小奇麗にまとまった古めかしい家々があった。
電線もアスファルトも車もない。
見るからに、そこはヨーロッパのどこかにある光景だった。それも2〜3世紀ほど前の。
何より、今は午後6時頃のはず。この太陽の位置はおかしい。
私はケータイを再び手に取る。18:31とそこには表示されていた。
……おかしい。怪しむ私の目の前で、表示時間は18:32となった。…ちゃんと動いてはいるようだ。


あれからいくら考えても状況に答えが出せず、結局私は部屋を抜け出した。
どこをどう走ったのかよく覚えてはいないが、細長い廊下を渡り、階段を降りたような記憶はうっすらとある。
よほど混乱していたに違いない。気が付くと、簡素なホールらしき場所に居た。目の前にはカウンターがある。
さらに、カウンターには金髪の外人がいた。その向こうに、出口とおぼしき扉がある。

私は壁際に身を潜めた。
金髪が私に気付いた様子はない。
息さえも殺す私。
金髪が扉から背を向けた。
……今だ。

脱出成功だ。どうやら高校時代、校門で待ち構えている服装チェックする教師(スカートの膝丈や、髪やピアス穴を調べるアレだ)
をかわす技術が、ここでも功を奏したらしい。
うしろめたい事をした覚えは無いが、何か聞きとがめられる事を恐れて抜け出した。
そのときは、そこは何かの宿泊施設だろうという見当しかつかなかった。
『宿屋』という古めかしい呼び方をされている事を知るのは、もう少し後になってからだった。

606 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/01(水) 11:32:01 ID:ZQyItkOQ0
お言葉に甘えて書いてみました。こういうのって初めてで…、
何かと不都合があるかもしれませんが、精一杯頑張りますので、
これからよろしくお願いします。

607 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 12:56:02 ID:qTv48tm80
キョウ ◆Hju2GLbs6k氏、591 ◆MAMKVhJKyg氏乙!
キョウ氏のは軽い感じで文章に入りやすいな。
591氏のは細かい描写で雰囲気が分かりやすい。
どちらの続きも楽しみにしてるよ。


608 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 18:27:40 ID:1+mygfwRO
俺も参加したいんだが、物語の構成上、ドラクエ世界につくまで長さがあるんだ。
それでも平気だろうか?スレ違いになったり・・・

609 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 22:10:00 ID:h7Zzm40KO
>608
ゴタクはいいからやってみろ
君には期待している

610 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/01(水) 22:20:52 ID:ZQyItkOQ0
少し書いたので更新

>>603-605 つづきから

会社に戻らなければならない。という観念はこのときすでに消え失せていた。
どうやらここは日本ではいようだ。
街をうろついてみたが、モンゴロイドは一人としていなかった。皆、目鼻立ちのくっきりした外人ばかりなのである。
夢ではない。私の体重を支える両手に触れる石畳。その質感は、あまりにもリアルに冷たかった。
ドッキリでもない。だって、私はまる一日半食べていなくて、道端にひっくりかえっても誰も助けには来てくれなかったのだ。

真夜中の街に人気は無い。相変わらず中世じみていて、私のさまよう限り、どこまでも古風な建物が続いていた。
私は道路の代わりに敷き詰められた石畳の上で横になっていた。
『飢え』ってこんなかんじだったのか。体中が熱くなったような感覚を覚えたかと思うと、唐突に虚脱感がやってくる。
何も考えたくなくなってきた。私の頭の中をさまざまな食べ物がよぎる。何より水、水が欲しい…。

水といえば…。私は気力を振り絞り体を起こす。
昨日、例の宿泊施設の窓から、湖を見たのを思い出した。
もうなんでもいい、水が飲みたい…。私はフラフラと立ちあがり湖へ向かう事にした。
方向感覚は危うかったが、こっちだとカンで思った方向へ進むと、城門らしきものが見えてきた。
さらにその向こうに森、そして木々の合間を縫うようにして、あの湖がかすかに見えた。


喉を潤す水は、かすかに草の匂いがした。
生き返った。こんなに水が美味いと思ったのは初めてだ。
あれから湖に辿り付いた私は、思う存分水を飲んだ。
ひと心地つくと、そのままボーッとして湖を眺めていた。
ここはどこなんだろう。とか、はやく帰らなきゃ。とかそういったマトモな考えは不思議な事に思い浮かばなかった。
ただ、静かな夜にひたっていた。
もう会社へ行かなくてもいいような気がした。空腹は困るけれど、胃に穴があくようなストレス社会にいるよりは、
こうして自然の中でアホみたく呆けている方が幸せのような気がした。

611 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/01(水) 22:22:10 ID:ZQyItkOQ0

ガサリ、と背後から音がして、唐突に沈黙が破られた。
反射的に振り向くと、信じがたい生き物がいた。
そいつと目が遭う。私は金縛りにあったように動けなくなった。
鬼というものが本当に存在するなら、こういう姿をしていただろう。
暗闇でもあざやかに映える真っ赤な皮膚をしている。血を浴びたように鮮烈だった。
下半身は人間ではなく獣のもので、つま先は頑健な馬のヒヅメで出来ていた。
顔は…見るからにアブない。二つの角を持った凶悪な面貌が、私を見てニタリと笑う。開いた口の隙間からびっしりと鋭い牙が見えた。
なにこの生き物、ヤバすぎる。やっぱりドッキリ?
なんで私の事を見て『これはうまそうな人間だ』と舌なめずりしているのよ。いくらなんでもやりすぎ…、
ここで私の思考は中断された。
鬼が私に向かって飛びかかってきたからだ。
おぞましい顔が迫る。

気が付くと私の左腕には数本の深い裂傷が出来ていた。…と、傷が見えなくなる。夥しい血が溢れかえり、傷を見えなくしたのだ。
「……!!」
声が出ない。人間は、あまりの痛み、あまりの恐怖に出くわすと、言葉を失うらしい。
悪夢のようだった。

そのとき、目の前を風のような速さで何かがよぎった。
私と鬼の間に出現したのは、炎のようなたてがみを持つ巨大な豹だった。
二抱えはありそうな太い喉から低い唸り声を発し、四肢を力強く地に付けている。
ああ、もう助からない。ただでさえ化け物に襲われているのに、新手がやってくるなんて。
失血からか、涙からか目がかすみはじめた。意識も朦朧としてくる。
だが、気絶する刹那に、見た気がするのだ。
この場にそぐわないリボンをつけた小さい頭、そして青いマントを翻す小柄な人物を。

 つづく

612 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 22:36:27 ID:UZX4R5uL0
最近新人さんが増えてきたな、うれしい限りだ。

613 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/01(水) 23:30:27 ID:+TG0sYFr0
そのかわりに前にいた職人さんがいなくなったような・・・
タカハシとかオルテガとか

614 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 00:06:57 ID:64mjN3bi0
591 ◆MAMKVhJKygさんのはドラクエXかな…?
ドラクエXが舞台なのはあまり見ないなぁ、いっそ自分で作成するしかねえかなぁ…
と思ってた矢先なので渡りに船(?)です。
文体も好みであるし、 超 G J !!!!!

615 :魚間 ◆4PnqyfvO3. :2006/03/02(木) 01:47:33 ID:eOp6HauB0
え〜と以前荒れる原因を作った私ですが、続きを投下することを皆様は許してくださるでしょうか?

616 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 02:00:05 ID:7/LJ+Xe90
>>615
もちろんOK

617 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 02:00:50 ID:7/LJ+Xe90
スマン、上げてしまった・・・

618 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 03:31:11 ID:R9zfZjltO
初代からいる住人としては4の人と総長の行方が気になるもうもどってこないのかなorz

619 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 04:26:46 ID:AMpwjSplO
>618
4の人はたまに光臨するだろが

620 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/02(木) 11:42:41 ID:I6sZjJpU0
職人さん達乙です

名前が出たのでちょっとカキコ
一行二行書くのに手間取ってとっても時間かかってます…
でもゆっくり投下していきますよ

621 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/02(木) 11:52:33 ID:BJ3YrwGW0

>>610-611 つづきから

眠りから覚めようとしているんだな。と分かった。
水底から浮かび上がってくるようなふわふわした感覚は、毎朝繰り返していた事だったから。
「飼ってもいい?」
「拾ったの」
「ダメです!」
目を開ける前に、ぼんやりとした意識ながらそんな言葉を聞いた。
「犬・猫・魔物ならまだしも、人間の娘を飼うなんてもってのほかです!…まぁ、本当に呆れた。
そもそも、この娘さんの意志を考えてごらんなさい。そんな事が言えますか?……おっと、気が付かれましたか?」
喋っていたのは、白髪混じりの赤毛を切りそろえた壮齢の男だった。いかにもお人好しそうな丸々とした顔を、心配そうに歪めている。
私は、ベッドに横になっていた。
一瞬、また例のあの宿泊施設で寝ていたのかと思ったが、それとは違う場所のようだ。石壁でなく、豪奢な壁紙が見える。
顔だけ動かして傍らに目をやると、男を挟むようにして、金髪の少年と少女がこちらを見ていた。
二人とも小学生くらいだ。少女は、肩より少し上のサラサラの金髪で、両脇に蝶々結びのリボンをつけていた。
男の子の方はというと、くせっ毛があちこちはねていて、まるでヒヨコのようだ。しかも青い眼は好奇心に輝いていて、いかにも子供らしい。
「ご気分はどうです?少し話が出来ますかな?」
男は日本語を喋った…しかも流暢に…と、思った矢先、彼は奇妙な言葉をつむいだ。
「アンクルホーン」
何かの外国語かと思い、私は不理解を示すため首を横に振った。が、男は構わず続ける。
「あんたを襲っていた魔物の名前ですよ」
男は、子供たちに聞かせてはならないといったふうに、私だけに耳打ちした。
「高い知能を持ち、人間をいたぶって食らう種です」
魔物。あの悪鬼が…。私は総毛だった。
しかし『魔物』。なんだこのリアリティのない、けれども私の体験を一括で説明できる言葉は。
「だからこそ助かったんですよ。ヤツがあんたに微弱な攻撃を加えているスキに、この子達が助けたんですよ。アンクルホーンを倒してね」

…え、この人今なんて?

622 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/02(木) 11:53:47 ID:BJ3YrwGW0

男の話だと、この子供達があの赤い鬼――アンクルホーンを倒したらしい。
信じられない。嘘でしょ、こんな小さな子供達が…。
私はまじまじと二人の子供を見た。私の目にはあからさまな疑いが込もっていたが、子供達の方ではそんな事は気にならないらしく
無邪気に見詰め返してきた。
「あと、ボロンゴもいたよ」
「ボロンゴ、おいで。おねぇさんにごあいさつするの」
「ちょっと、お二人ともお待ちな…」
ボロンゴ?疑問に思う間もなく、そして男が子供達の呼びかけを制するよりはやく、何かが部屋に入ってきた。

心臓が止まるかと思った。
扉を破らんばかりに押し開けて部屋に乱入してきたのは、あの炎のようなたてがみの獣ではないか。
アンクルホーンとやらに私が襲われて、怪我をして、気絶する直前に見た大きな豹だ。
男の話からして、異形のものを魔物と呼ぶのなら、この『ボロンゴ』とやらも魔物に類するのではないか?
そんな私の混乱と疑問を察したらしい男が説明してくれた。
「ええと…、このボロンゴは、キラーパンサーという魔物なんですが、いい魔物というか…」
「ともだちなんだよね」
『ボロンゴ』はそう言った女の子の脇に巨大な顔をすり寄せて、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「とにかく危害はありませんので」
私はボロンゴのサーベルタイガーのような牙をこわごわ見詰めるばかりで、言葉を返すどころではなかった。

623 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/02(木) 11:54:48 ID:BJ3YrwGW0

さらに男からは、ここはグランバニアという名前の街だという事を聞いた。あの湖の近くの、そして例の宿泊施設のある街。
この部屋は、そのグランバニアのとある施設らしい。病院みたいなものだろう、と私はそのとき思っていた。
「出血は多かったです。ですが、見た目の割りに傷は浅く済んでいます。もちろん命に別状ありません。
大丈夫ですよ。しっかり気をお持ちなさいな」
男は、励ますように言った。言い聞かせるような様子はまるで父親のようだった。
「それよりも深刻なのは、…あんたちっともごはんを食べていなかったでしょう。急性の栄養失調ですよ」
「それは…この辺りでは頼る人がいないから」
自分ではれっきとした返事をしたつもり――むしろなんでこんな当たり前の事を聞くんだろうと疑問に思いながら言葉をかえした。
しかし男と子供達は3人が3人とも顔を見合わせて笑った。
「この街の誰かに助けてもらえばよかったんだよ。なんでそうしなかったの?」
少年の言葉に私は絶句した。子供だから知らないのだろう。見ず知らずの人に助けを求めても、誰も関心を示さない事を。
しかし、いい大人でもある男が言った言葉に、私は自分の中にある何かが崩壊するのを感じた。
「このグランバニアの城下町の人々はみんないい人たちばかりなんですよ。行き倒れになりそうな人間をほっとくはずありません。
あんたはどこかの家のドアを叩いて、助けてくださいと一言言えばよかったんです」

624 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/02(木) 11:55:45 ID:BJ3YrwGW0

いや……そんな事言われても…知らないよ、そんなの…。

理不尽なこの状況に対する怒りが、緊張の糸が、キレた。
「そんな事知るわけないじゃない」
私の口から、呪詛のような声が出た。
いつも無気力な私からは想像できない声だ。あれどうしたんだろう、と思う間もなく次々と言葉がほとばしった。
「目が覚めたら全然知らない場所で、周りに知り合いはいないどころか、外人ばっかりで…」
愚痴が止まらない。
「どうしろっていうの?…何をしろって!?」
とうとう私はパニックになった。
この街はそうかもしれないけれど、日本の、私の住んでいる町では理不尽な犯罪と、他人に対する徹底的な無視がはびこっていて…。
そんな平和な街があるなんて事、知らない。
「ケータイはどこに行っても圏外だし、こ…ころされかけるし…!」
アンクルホーンに殺されかけた恐怖を思い出し、体中に震えが走った。
私の言葉の奔流は、涙声になって唐突に終わった。
辺りはシンとなった。
気遣わしげな男。私と男を心配そうに交互に見比べる子供達。そして未だ震えの止まらない私。四者の重い沈黙で部屋が満たされた。

最低だ…私。
この人たちは助けてくれたのに。
頼れる存在にやっと出遭えて、私、間違った甘え方してるよ。

私は、言葉の壁を勝手に感じ取り、誰にも助けを求めなかった。
街の露店で果物や食べ物を売っている店を見かけたが、同じことだった。
言葉が通じなさそうでも、彼等が自分とは何の関わりもない他人でも、ぶつかってみれば良かったのだ。
自分がこんなに甲斐性無しだったとは。

625 :591 ◆MAMKVhJKyg :2006/03/02(木) 11:56:50 ID:BJ3YrwGW0

「娘さん、あんたどうやら訳有りのようだ。しばらくこの城で養生なさい」
長い沈黙の果てに、男が真面目な顔をしてこう言った。
「え…城?」
私は、あまりにも意外な言葉に、謝る事も忘れて、おうむがえしに言葉を返した。
「申し遅れました。あたしは城仕えの小姓のサンチョです」
私が口を挟む暇もなく、男――サンチョは二人の子供を抱き寄せて、さらに言った。
「こちらはグランバニア王家のレックス王子様と、レミ王女様にあらせられます」
子供達はそれぞれサンチョが言った通りの名前で自己紹介した。
王子?王女?ああ、なんかもう……ついていけない…、けど…、

「娘さん、あんた名前は?」
「……ナナセマナミ」
「ナナ…マ…?」
「マナミでいいよ」

これだけは言わなきゃいけない。
「あの…助けてくれてありがとう」

怒鳴った事が本当に恥ずかしく、申し訳なく、私は蚊の泣くような声でお礼を言った。
顔を上げられなかったので彼等の表情は分からない。けれど、三人とも、笑っている。そんな気がした。
私、何やってるんだろう。こんなむず痒い事して。
不思議と心地よく感じる温かさを、どうすればいいのか分からずに、もてあましていた。

 つづく

626 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 18:55:58 ID:64mjN3bi0
GJ

627 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/02(木) 19:43:22 ID:7/LJ+Xe90
乙です

628 :ヘタレ ◆ozOtJW9BFA :2006/03/02(木) 21:06:05 ID:ZwMG3db50
「すげぇ!」
そこには今まで見たこともない壮大な景色が広がっていた。
森の中をぬけると、広大な海が姿を見せた。
まだ魔物は出現していない。
無駄にテンションが上がった俺はくちぶえをふきながら歩いた。
(早くでてきやがれ、モンスター共。レベル上がらねーだろ。)
せいぜい最初だからスライムや大がらす程度だと決め込んでた俺は
自信満々で歩いていた。
「グルル・・・。」
後ろで嫌な声が聞こえた。声の主はスライムや大ガラスじゃないことだけは確かだった。
おそるおそる振り向く。目の前に写った物は熊だった。
しかもごうけつそうな。
(ひぃぃ!熊!? しかもすげーごうけつそう!ごうけつ熊!?
 何で!?そういえばダーマ付近はスライムなんてでねーよ!
どないしよ・・・。)

629 :ヘタレ ◆ozOtJW9BFA :2006/03/02(木) 21:07:18 ID:ZwMG3db50
俺「バギクロス!」

俺「・・・。」
(終わったな・・・。あぁなんでよりによってダーマだったん
 だ。これじゃレベル上げできないじゃん・・・。)
覚悟を決めた俺はジャブを打ってみた。
(左ジャブは内側にえぐりこむようにして打つべし!)
ペシッ
情け無い音がした。熊にダメージはなさそうだ。当然だった。
しかもどうやら怒っているようだ。
熊「グワォ!!」突然熊は襲いかかってきた。
俺「ヒィ!?」
そのときだった。
※「ベギラマ!」
その声と同時に帯状の炎が熊を包んだ。熊は速攻森の中へ逃げていった。
※「大丈夫か?」
ベキラマでごうけつ熊を追っ払ったこれまたごうけつそうな
男は言った。
俺「ありがとうございます!弟子にしてください!」
とりあえず今の気持ちを簡潔に述べた。
※「は!?」
やれやれ俺の大嫌いな説明をしなければならないようだ。




Eぬののふく
 

630 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/03(金) 13:15:52 ID:Y8SkKjqq0
>>496 続き

3568行目から
http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date10385.txt

631 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/03(金) 13:16:43 ID:Y8SkKjqq0
上に追記

見出し「●賢者メイ」から

632 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/03(金) 13:42:25 ID:Y8SkKjqq0
>>630-631
間違って消してしまったので再アップ
何度もゴメン
>>496 からの続きは「3568行目 ●賢者メイ」から
http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date10388.txt

633 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/03(金) 15:38:15 ID:e78HWHGKO
GJ
毎度おもしろく読ませてもらってるぜ
ただケータイだと長くて途中で切れちまったorz
区切りのいいところでページを分けてくれないか?

634 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/03(金) 16:09:52 ID:6H7EVfwIO
>>632読めんし

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/03(金) 16:30:33 ID:O9/XClJG0
>>632  タカハシ
GJ!
特に賢者の石の辺りの解釈、面白かったです。
次回も楽しみにしてます。


ところで漏れもss書いてみたんだけどまだプロローグしか完成してない物でも
投下してしまって大丈夫だろうか?
     


636 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/03(金) 17:25:22 ID:Y8SkKjqq0
ほんとにごめん
携帯の亊、全く考えてなかった
二部を切り出してアップし直しました
次回からはスレにちょっとづつ直接投下していこうと思います 今回までご容赦を…

>>496 からの続き
1103行目の見出し●賢者メイから
http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date10392.txt


>>635
投下したモノ勝ちみたいですよw

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/03(金) 17:52:11 ID:fgJksskTO
>>633-634
http://fileseek.net/proxy.html
↑これ使ってごらん

638 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/03(金) 17:58:00 ID:Y8SkKjqq0
>>637
これで携帯でも読めるようになるのかな?
ありがとう!
というわけで携帯は以下のURLを。
http://fileseek.net/proxy.html?http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date10392.txt

639 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:12:22 ID:O9/XClJG0
635です。落とした物勝ちとのことですんで思い切ってw
では投下します。


――少女が泣いている。

 一筋の光も差さないくらい、くらい闇の中。
 体は脳に何も伝えず、地面の存在すら怪しい。
 何も、無い。
 少女の他は何も無い世界。
 そんな世界で少女は声すら上げずに。
 誰にも見せず、誰にも見られず。

 ただ、泣いていた――そんな夢を、見た。


640 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:14:48 ID:O9/XClJG0
陽射しと鳥の鳴き声で意識が覚醒する。
 目が覚めた後、一時のまどろみ。
 自分が毎朝ささやかな愉しみにしている時間だ。
 ただ、こんな夢を見た後では反転して嫌な時間となる。
 それは目に見えていた。
 だから、目覚ましの二度寝防止を頼りにいつもは被る布団を、今日は足で跳ね上げ一気に起き上がろうとした。
 いつもの日常との違いなんてそれだけの筈だった。
 ――違和感。
 布団が跳ね上げられないのだ。
 風邪で力が入らないのではなく、足は完全に布団を蹴り上げている。
 けれど上がらない。まるで布団が大きくなった感じがする。
 自分はこんな大きな布団は持ってない。
 第一、ワンルームの一人暮らしをしている部屋にはそんなスペースはない。
 妙だ。と思いつつも手で布団を跳ね除け目を開いた。
 視界に映るのはいつもの見慣れた天井ではなく、木製の知らない天井だった。
「――ッ! 」
 どこか朦朧としていた意識が一気にローからオーバートップすら突き抜けて覚醒する。
 心臓の鼓動が早まり。体中の毛穴が開いて。じわっ、と嫌な汗が噴き出して来た。

641 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:16:27 ID:O9/XClJG0
見知らぬ天井を見ただけで、ここまで狼狽することは無いだろう。
 だれか。そう、例えば悪友の手が込んだ悪戯かもしれない。
 それとも実は昨日の晩、深酒をして意識が無くなりここに運ばれただけかも知れない。
 ここまで狼狽するのは理由がある。
 いつの間にか震えていた。記憶より小さな手≠ナ鼓動を押さえるように胸元を固く握り締めた。
 自分の体は――5・6才の子供のモノになっていた。
 ごくっ、と息と不安を無理やり飲み干しベットから降りる。
 床はフローリングのように艶のある物では無く、ニスの塗られていないただの板だった。
 窓からの陽射しは強い。自然と目を細め外の様子をうかがう為そちらに足を向けた。
 ぎぃ、ぎぃ、と一歩踏み出すたびに床が軋む。まるで自身の未来が軋むように。
 窓辺まで歩を進め、半開きになっている観音開きの雨戸のような木製の窓を押し開く。
 一瞬、白く視界が染まり飛び込んできたのは石造りの中世ヨーロッパの様な町並みだった。
 眼下には時代がかった服装の人物が大勢歩き回っている。
 教科書のイラストでしか見たことの無い荷馬車まで行き交っていた。
 ――なんで。そう口にしようとしたが声にならなかった。
 本当に驚くと人間は固まってしまうものらしい。
 人が多い路地を駆けてきた馬の蹄の音と罵声で我に返るまで呆けていた。

642 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:18:01 ID:O9/XClJG0
 我に返った後、状況を確認することにした。
 何故こうなったのか考えるにしても材料が足りないからだ。
 まず昨日から順を追って今に至るまで記憶を再生する。
 1、バイトが終わり23時頃帰宅。疲れてはいたが、いつもと変わらない。
 2、コンビニで帰りに買ったパンを食べ、風呂に入り、ジャックダニエルをロックで一杯。
   25時頃までネットをやって寝た。これもいつも通り。   
 3、良く覚えていないが夢を見て目が覚めたら子供になってここに居た。
 夢以外に変わった事は何も無い。
 とはいえフロイトじゃあるまいし夢が原因など――まるで御伽噺だ。
 大体それが原因でも手の出しようが無い。現状無意味だ。これは保留することにする。
 次にどこに居るのか。だ。
 外の町並みは石畳で舗装された幅5・6m程の路地。さっきは気付かなかったが緩やかな斜面になっている。
 これは中世ヨーロッパの町の特徴だ。
 下水道が無かったため窓から投げ捨てた汚物が自然に流れるようにする為だったと思う。
 建築物もテレビで前に見たローマ辺りの物にどこか似ている。
 テーマパークのような安っぽさが無く重厚である。という意味もこめてだ。
 この時点でここは日本ではないことは確信できた。
 更に、時代も現代ではないだろうこともだ。



643 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:19:36 ID:O9/XClJG0

 時代がかった服装の人物達、荷馬車、ここまでなら手の込んだ外国のテーマパークという線もある。
 しかし人が多い路地を駆けてきた馬≠アれは、在り得ない。
 テーマパークで行うには危険すぎるアトラクションだ。
 さらにシーツの肌触りが随分ごわごわしていた。織物の生産技術が低い証拠だ。
 この様な目立たない消耗品まで厳密に再現していてはコストが高すぎる。
 つまりは目の前の光景はリアルタイムで現実。ということ。
 結論。
 目が覚めたら体は子供。おまけに中世ヨーロッパの何処か。原因は不明、あやしいのは夢。対策無し。
 ――全く、最悪だ。
 『正直、ありえねえだろ』とバイト先の先輩の言葉が頭に浮かんだ時。
 ドンドンと部屋をノックする音と、若い男の声が聞こえた。
「シャルル。入るぞ」と。
 思考の海に沈んでいた意識を浮上させ慌てて扉の方へ振り替える。
 すぐ後に軋んだ音を立てて扉が開いた。 
 男はこちらが返事をする間を置かずに部屋に入ってきた。
 大きい。それが第一印象だった。
 なにせ180cmはある。今の自分が子供であることを差し引いてもでかい。
 この時代なら十分に大男の分類に入るだろう。


644 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:20:55 ID:O9/XClJG0

 体格もがっしりしているし、もじゃもじゃの髭と、肩まであるウエーヴしたくすんだブロンドの髪をしている。
 映画に出てくる騎士のような人だった。
 実際に裏付けるように腰には柄に十字の刻まれた立派な剣を下げている。
 男はこちらに向かい真っ直ぐに歩き、目の前まで来るとしゃがんで目線を合わせて口を開いた。
「シャルル、旅の疲れか? だがな、もっと早く起きなければいけない。父さんはもう食事を済ませてしまったから
食事は下で主人に言って出して貰え」
 そう言った後こちらに返事を促すような視線を向けてきたので「はい、解りました」と無難に答えた。
 すると男は一瞬驚いた顔をした後、笑顔を浮かべ乱暴に頭を撫でてきた。
「昨日までのお前がウソみたいだ! やれば出来るんじゃないか。
その調子で今日はおとなしくしててくれよ。父さんはこれから仕事で城に行かねばならないから、
お前は宿で待っててくれ」
 ぽんぽん、と軽く頭を叩き踵を返して男は部屋を出口へ歩いていく。
 扉を閉める瞬間立ち止まり、懐を探った男は振り返り「シャルル」と呼びながら本を投げて寄こしてきた。重い。
「プレゼントだ。退屈だろうからそれを読んで待ってなさい」
 そう言い残し、今度こそ部屋から出て行った。
「――シャルル、か」
 一人、呟く。
 子供になっていたのは判っていた。


645 :シャルル ◆zu/zVku.Kc :2006/03/03(金) 18:23:01 ID:O9/XClJG0
 
 それでも全くの他人になっていたのは予想外だった。
 昨日まで名前は佐藤≠セった。それが起きてみればシャルル≠セという。
 佐藤≠ナあるのにシャルル≠ニして認識され扱われるのは、されて始めて知ったが中々に応える。
 見知らぬ土地、見知らぬ時代、そこで常に認識されない。本当の独りというのだ。
 正直に話しても信じて貰えないだろう。下手をすると宗教裁判にでも掛けられるかもしれない。
 これからも元に戻らないかぎり孤独は続く。
 そんなのは御免だった。
 少しでも多くの情報を集め、対策を立てる必要がある。そう思い、男に渡された本に目をやった。
 古めかしい装丁の本で、重かったのは表紙が牛皮とおぼしき皮で、紙ではなく羊皮紙を使っているからだった。
 ロ…リア記<^イトルは掠れていてはっきりと読めなかった。開いて中を見ることにする。
 しかし、先ほどの会話もそうだったが明らかに日本語ではないのに何の問題も無く使えているものだ。
 まぁ使えないよりは断然良いし、今考えても答えなど出ないからそれも保留だな。等と考えながら本を開く。
 けれども判明した事態は予想の斜め上をいっていた。
 中に記されていた本のタイトルはロマリア記
 他にも登場している地名がポルトガ、カザーブ、アッサラーム、イシス、と並んでいた。
 ……中世ヨーロッパですらなかったのだ。ここは。
 今、自分が居る世界はかって愉しんだゲーム。
 ――ドラクエVの世界だった。

つづく

646 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/03/03(金) 18:25:56 ID:Y8SkKjqq0
>>645
乙です
出だしからものすごく惹きつけられた
展開楽しみ

647 :646 :2006/03/03(金) 18:31:10 ID:Y8SkKjqq0
うわごめん
ageちゃった…

648 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/03(金) 23:56:04 ID:gMfLGjR70
>>545続き

しばらくしてマトリフが帰って来た。何処へ行ってたかを聞いてみたが、言葉を濁される。
まあ、旅立つ準備でもしていたんだろう。
それから3人で今後の方針を決める話し合いをする。

「で、まずは何処へ向かうんだ?」
オレの問いにマトリフが答える。
「そうじゃな・・・まずはトリスタンが行ったと思われる行程をそのまま辿って行く事にしよう。 
まずはロマリアじゃな」
そう言ってマトリフは地図を取り出し、ロマリアを指し示した。
アリアハン大陸とはかなり離れた大陸にロマリアはあった。

「船はどうするんだ?」
オレは当然の疑問を口にした。なぜならアリアハン大陸は周りを海に囲まれている。
違う大陸を目指すとすれば、必然的に船が必要となるだろう。
しかし、マトリフに言わせると船が無くてもロマリアには行けるらしい。
その方法を聞いたが、全く理解不能だった。旅の扉だのワープゾーンだの・・・
ホント良く分からん世界だよな。慣れてきたけど・・・

そこへミリアムが口を挟んできた。
「そんな回りくどい方法より、最初からトリスタンが消息を絶った場所に向かって、その周辺を
探し回った方が早いし、効率がいいんじゃない?」

649 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/04(土) 00:04:38 ID:ZUrUvhEl0
オレは悪くないアイデアだと思ったが、マトリフは即座に首を振って却下した。
「最初からあの場所へ向かうのはあまりに無謀じゃ。はっきり言わせて貰うが、ミリアム、それに
ルーク殿の今の力であの辺りのモンスターが相手ではどうにもならんよ・・・
ワシとて、実戦からは数十年は遠ざかっておるからの」

ミリアムは尚も引き下がらずに反論する。
「でも・・・急がないとトリスタンが・・・」
「大丈夫じゃよ。間違いなく、トリスタンは生きておる。それよりも探しに行く我々がくたばっては 
どうしようも無いじゃろう?まずはロマリアからじゃ」

確信を持った口調でマトリフは言う。なぜ生きていると言い切れるんだ?
オレはもちろん口には出さないが、トリスタンが生きている可能性は低いと考えている。
報告が途切れ、行方が分からないとなれば、そう考えるのが妥当だろう。
自分の肉親の無事を信じたいのは当然だろうけど・・・いや、それとは別に100%確信している口調だ。
・・・まあいい、どうやら結論が出たようだ。最初の目的地はロマリアに決まった。

オレはさっきの会話の中で気になった事を聞いてみた。
「さっき言ってたトリスタンが消息を絶った場所は何処なんだ?」
「ジパングと呼ばれる場所じゃ」
マトリフはそう言ってアリアハンの真北にある小さな島を指した。

ジパング・・・ジパング?
頭に衝撃が走った。
ジパング・・・間違いなくその名前に聞き覚えがある!・・・しかし何処で?

「どうしたの?大丈夫?」
ミリアムが心配そうな顔でこっちを眺めている。 
「いや、なんでもないさ」
 
言葉を返しながら、また手がかりが遠ざかっていくのを感じていた。



650 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/04(土) 00:13:19 ID:ZUrUvhEl0
話し合いを再開して、今度は細かい事を決める。
出発は明日の朝に決まった。薬草、毒消し草などの旅の必需品は、出発のついでに買い込む事にする。
装備も良い物にしたいが、ここアリアハンは武器、防具、共に品揃えが悪いらしいので諦めるしかない。

方針が決まり、ミリアムは旅立ちの準備の為に帰っていった。
 
「今夜は泊まってゆくがよい」
マトリフがそう言ってくれた。無一文のオレにとっては渡りに船だ。
ありがたく泊めてもらう事にする。
 
夕食の後でマトリフが自分の行っている研究について話し始めた。 
その研究とは・・・呪文、それも失われた呪文・・・

マトリフの話によると、この世界には様々な呪文が存在しているという。
敵への攻撃呪文、自分や仲間の傷を回復する呪文、他にも多種多様があるらしい。
それを聞いてようやく納得がいく。塔で使ったホイミの正体の。

マトリフの講義は続く。
「ワシが研究しているのは、遥か昔にこの世界に存在し、やがて失われていった呪文じゃ。 
それを現代に蘇らせる研究をしておる」
「失われた呪文・・・例えばどんな呪文があるんだ?」
「そうじゃな・・・例えば一度でも行った事がある場所なら、そこに瞬間的に移動出来る呪文、これは
完成間近じゃが・・・他には究極の攻撃呪文、さらには死者の魂を蘇らせる呪文すら存在したという」
 


651 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/04(土) 00:16:22 ID:ZUrUvhEl0
死者の魂を蘇らせる?それって生き返らせるって事か?
にわかには信じられない話だが、マトリフの顔は真剣そのものだった。

その後も呪文についての講義は続き、正直言って理解出来たとは言い難いが、ひとまず呪文についての
基礎知識を得る事は出来た。

さらにマトリフから呪文書を借りて読んで見る事にした。
ホイミは回復系の呪文の中で一番初歩的な呪文だと書いてある。
他にもオレが使える呪文はあるのだろうか?
考えても分かるはずも無いし、この前みたいに頭の中に声が聞こえて来る事も無いようだ。

・・・これについては今後の宿題だな。
これからの旅には更なる強敵が待っているようだし、早いうちに自分が使える呪文を知っておく事は
絶対に必要不可欠な事だろう。
 
更には、便利な呪文を新たに覚える事が出来ればいいけど・・・
マトリフによると、呪文を覚えるのは閃きに近い感覚らしく、本を読んでいれば覚える事が出来る
という訳ではないらしいので、簡単には行きそうにも無い。

長い講義が終わり、寝室に案内された。
目の回るような一日を振り返り、思わず溜息が漏れる。

652 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/04(土) 00:18:43 ID:ZUrUvhEl0
旅の計画は決まったが、だからといってやる気が増すとは限らないようだ。
むしろ今後の事を考えるとテンションが下がる一方だった。
 
魔王バラモス・・・名前だけでどんな奴か分かるはずもないが、世界中に様々な異変を異変を
引き起こしている張本人。万が一トリスタンを探し出せたら、今度はその魔王を倒す旅か・・・
そうなったらどうなる事やら・・・
探し出す前から考えても詮無い事とは分かっているが、考えずにはいられない。
オレは生きて元の世界に帰れるのだろうか?

そう考えているうちに、今日の疲れも手伝っていつの間にか眠りについていた。

・・・その夜、昨日と全く同じ夢を見た。
昨日と同じ部屋、同じ男。男が慌ててる姿まで昨日と一緒だった。
やはり声は掛けられず、やがて昨日と同じ様に夢の世界から少しずつ遠ざかって行くのを感じていた。

次の日

気持ちがいいとはとても言えない目覚めだ。
夢の事が頭から離れそうにない。あの男は・・・

オレの頭の中で、一つの仮説が出来上がりつつあった。
余りに突拍子の無い、非現実的な仮説が・・・
と言っても、それを話す相手もいないんだが。

653 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/04(土) 00:19:47 ID:ZUrUvhEl0
誰かにオレの話を聞いてほしい、不意にそんな願望が湧いて来た。

突然こんな世界に飛ばされたという事、この世界での体験、そしてこれからの事も。
どれだけ心細かったか、どれだけ危ない目にあったか、これからどうするべきなのか。
誰かに話したくて、相談に乗って貰いたくて堪らないんだ・・・

勿論、そんな事を話せる相手なんかいりゃしないし、いたとしても信じてもらえる訳も無い。
マトリフとミリアムならあるいは、とは思うが、まだそんな話が出来るほど信じてはいない。
本当の仲間と感じるには時間というものが必要だろう。

この孤独感の本当の正体にようやく気付かされた。
異世界に飛ばされたから、信じ始めていたアモスに裏切られたから、だけではなかったんだ。
自分の正体を誰にも話せない寂しさ、この思いを誰とも共有出来ない寂しさだったんだな・・・

すっかり頭の中がネガティブな思考に支配される。
何を考えてるんだ?オレは。
今から旅立とうと言う時に考える事じゃないだろ・・・
強引にそんな気持ちを振り払い、立ち上がって準備を始める。

寝室を出て、食堂に行くと、マトリフは既に準備万端といった様子だった。
早く出発したいのだろう。朝食もそこそこに、外に出る。

まだ早い時間帯だが、既に町は動き出していた。

654 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/03/04(土) 00:21:07 ID:ZUrUvhEl0
忙しそうに左右を行き交う人々。
そこに魔王やモンスターに怯えるといった様子は窺えない。
バラモスの存在に殆どの人は気付いていないと王様は言っていたが、どうやらその通りのようだな。

そんな事を考えながら町の中心部へ向かって歩き出す。
中心部に着くと、マトリフはG銀行へ金をおろしにいった。
オレはミリアムとの待ち合わせ場所に一人で待つ事にする。

「その旅はやめておいたほうが身のためだぞ」
突然の声に、その方向をみると・・・
そこには宿屋で会った老人が立っていた。
「また爺さんか・・・アンタ一体何者なんだ?何で旅の事を知っているんだ?」
オレの質問には答えず、ろうじんは更に話を続ける。
「老人の忠告は聞いておくものだ。無視して行けば、間違いなくお主の身に災いが降りかかる
事だろう。何も知らない世界で死にたくはあるまい?」
それだけ言うと、オレから背を向けて人ごみに紛れ、消えるようにいなくなっていた。

続く

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