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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目

305 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:17:52 ID:nrO9kGK/0
離れて久しい私のふるさとは、何の謙遜もなく、まったくの田舎である。
春にはレンゲが咲き苺の香りが空気を染め、夏の風は青く茂った水田を爽やかに巡っていく。
秋になれば色鮮やかな木々が山を賑やかし、冬は痛いほど澄んだ空に満点の星が輝く。
そしていつの季節にも大気には柔らかな草や土の匂いがまじり、私の心を慰めてくれたものだ。

だから、であろうか。
寝覚めの悪い頭で、長い間帰っていない故郷の生家を、ぼんやりと思い出したのは。
ほのかに石鹸の香る柔らかなシーツと、木造りの壁。それは懐かしいいなかの雰囲気と
とてもよく似ていた。似ていた、が、それだけだった。
見覚えのない箪笥に見覚えの無い燭台――そもそも燭台などというしゃれたものは我が家にはない。
上半身を起こしふと見下ろしてみれば、自分が横たわっていたベッドすらも全く見知らぬ代物だ。
そして私は、何気なく周りを見やる……

……

…………
あああああああああ!!!1!!1!
そんなこと冷静に語ってる場合じゃNEeeeeee!!!!
いやいやいやいやかん、違う、いかん、おつちけ、おちけう、餅つけ、いやいや落ち着け自分。
非常事態発生、至急状況を確認せよ。イエッサー。

306 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:18:59 ID:nrO9kGK/0
室内を見渡す。質素な家具が一通り揃っており、壁に据付けられた一輪挿しには、見たことのない
花が大輪を咲かせている。天井には蛍光灯ではなくランプがぼんやりと光っていた。
静かだ。テレビも無い、ラジオも無い、車の音すら聞こえない。
思わず見なかったことにした窓辺に、おそるおそるもう一度向き直ってみる。
まっくら、暗い、くらい。どうやらまだ夜のようだった。それならもう一度眠ろう、これは夢だ。
そう思って、いやむしろそう願って、私はふかふかの布団にもぞもぞと潜り込んだ。
……寝られん。というか、まったくさっぱり眠くない。どうやら体内時計はすっかり朝のようで、
朝食を求めてすきっ腹がごろごろと唸っている。
仕方なく床を抜け出す。くたくたのシャツにカーゴパンツ。これ、昨夜コンビニに行ったまんまの
格好じゃん。
いつもならワンルームの部屋でベッドから抜ければすぐにキッチンで、朝一番に熱いコーヒーを
淹れて食パンをトースト、といった具合だけれど、今日ばかりはそうもいかない。
――今日だけで済めばいいのだが。
部屋を出ると、そこは通路だった。右と左しか分からないまま、辺りを不審げに見回しながら
そこを進んでいく。私が後にしたのと同じような扉が、二三並んでいた。

その先で私を待ち構えていたのは、
「おはようございます。それではいってらっしゃいませ」
頭から爪先まで、緑色の服にすっぽり身を包んだ恰幅のいいオヤジだった。口ぶりからするに
ホテルのサービスマンのようだ。にしても派手な服だなおい。
ホテル、というより、ペンションだろうか。いや、この際そんなことはどっちでもいい。
宿に泊まった覚えなんてないし。第一ひとり暮らしでかつかつのフリーターにはホテルに泊まる
金なんてない……ん?金?
「あの、お聞きしたいんですけど……お金、はその、どれくらい」
「いやだなあお客さん、昨夜お泊りになるときにきちんと頂いてますよ」
…え?
「ああ、そうだそうだ。お連れの方はもう発ってしまいましたけど、よろしかったんですか?」
……は?
「お連れの方? って?」
「昨夜、あなたを担ぎ込んできた方ですよ」

307 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:20:40 ID:nrO9kGK/0
………話がよく分からない。
「あなたは気を失ってらしたから覚えてないでしょうけど。お連れではないんで?」
「な……何のことでしょう」
狐につままれたような顔の私を見て、派手なホテルマンは一瞬だけ眉をひそめる。けれどすぐに
それを引っ込めると、商売人のあこぎな顔に変わった。
「まあともかく……チェックアウトということで。お部屋にお荷物のお忘れはございませんか?」
「え、あの、いやいやいや、困ります」
突然人をうっちゃるような態度に、思わず口を挟んだ。右も左も……いや、それは分かる。けど
北も南も分からない私を追い出そうというのか、この緑色したデブは。ピザでも食ってろよ。
ていうかピザ食べたい。腹減った。
「はあ、困ると言われましても、こちらも商売ですんで……」
「でも、これからどうしたらいいか分からないんで、今すぐ出て行けと言われましても」
「そのようなことをおっしゃられましても、こちらも商売ですんで……」
「食事だけでも」
「当宿屋には食堂はついておりません。恐縮ですがこちらも商売ですんで……」
何この無限ループ。出て行く以外の選択肢は無いとでも言う気か。
「じゃあせめて、もう一泊」
「代金はお一人様1ゴールドになります」
「……ちょっと待っててください、部屋見てきます!」
もと来た廊下をあてずっぽうで走って戻る。「ゴールド」とかいう言葉の意味は分からなかったが、
要は金だろう。しかもたったの1。一。いち! それなら財布があれば何とか……

308 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:22:51 ID:nrO9kGK/0
「あの、申し訳ございませんが現金のみでのお支払いになっておりますんで……」
何とか……ならなかった。
部屋にかかっていたくたびれたピーコートの中には、かろうじて小銭入れが入っていた。
今の全財産、964円。緑のたぬきの前にじゃらじゃらと小銭をぶちまけたが、奴は首を横に振る
だけだ。れっきとした現金を前にして何を言うんだこの緑のたぬき。
「ですからゴールドでお出ししていただきませんと。第一、『えん』なんて通貨知りませんよ」
何度掛け合ってみても、これだ。
最終的には、「では、またのお越しをお待ちしております」の一言と共にむちゃくちゃいい笑顔で
見送られた。二度と来るか!
行く当てもないし、もちろんどうしてこんなところにいるのか、それすらも分からない。
とりあえず何かしらの情報を得るために、私は宿屋を後に歩き出した。

――――――――――――
唐突に始めてなんかごめん。
最後まで書けることを祈りつつ、のんびりやってくよ。

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