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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目
- 1 :冒険の書庫の書記代理 :2005/12/17(土) 22:49:59 ID:wtVzywQO0
- ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。
前スレが容量制限で書けなくなったため立てました。
前スレ
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら四泊目」(容量制限落ち)
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128780044/
過去スレ
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら三泊目」
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1122390423
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら二泊目」
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1116324637/
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1110832409/
まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/
※最近更新してない…書庫の中の人捜索中
- 301 :アミ ◆36yZlE15gs :2006/01/22(日) 01:01:15 ID:iovXzCgt0
- 「私一人じゃ何も出来ないし…ありがたいわよね」
「あたしたちの大切さをわかってくれた?」
「うん…大切というか…優勝したときアミたちを見て、応援してくれてたんだなって。喜びを分かちあえる人がいるっていいなぁと思った。一人で嬉しい、皆ならなお嬉しいってね」
どうやら…多少は成長しているようである。まだ若いからこれから学ぶところはいっぱいあるし、これからであろう。
「まぁこんな話はいいのよ。早く準備してよね」
あたしははぁいと返事して準備を開始した。
空は、見事な秋晴れ。雲一つなく青空が広がる。山裾は早くも赤、黄色と紅葉しだしていた。日はまだまだ暖かいが、吹く風はほんの少し寒さを纏う。
「遅いぞアミ!儂より遅く起きるなんてどういうことじゃっ。気持ちが弛んでおるぞ」
「朝っぱからそんなに怒らないでよ、血圧あがるよ」
「おはようございます、アミさん。昨日はよく休まれましたか?」
「寝過ぎて疲れたくらいよ」
これからまた、世界を股に掛けて、あたし達はサントハイムの人々を捜しに旅にでる。
これからの未来。出会い、旅、そして運命に。あたしたちは。
導かれし者たち。
「ほら行かないなら先に行くよ!」
「アミ〜、待ってよ〜」
「アミさん、アリーナ様〜置いていかないで下さいよ」
「仕方ないのう…」
走るあたしをアリーナが、クリフトが、ブライが追いかける。
あたしの探求(クエスト)すべき道は、アリーナ達と一緒。この空の下…。
さあ、ゆこう。
- 302 :アミ ◆36yZlE15gs :2006/01/22(日) 01:03:27 ID:iovXzCgt0
- あたかも続きがあるような感じになりましたが、これで完結です。
続きはありません。これ以上は4の人と被りますので。
応援、批判、訂正してくださった方、何より読んでくださった方。ありがとうございました。
書記様>体調はいかがですか?
保管ですが、誤字脱字が酷い駄文ですのでアミ◆36yZlE15gsの文章は一切保管しないでください。
それでは名無しに戻ります。本当にありがとうございました。
- 303 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 01:42:21 ID:U1+CNaaL0
- お疲れさまでした
本当に楽しめる作品をありがとう
- 304 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:11:33 ID:WXYon9je0
- 本音を言えば被るのだけが理由なら終わって欲しくありません。
4の人も他の人が4の5章を投下できないなんて暗黙のルールができてしまったら
決していい気分はしない(それどころか気を遣ってやめかねない)と思うのですが。
それとは別にアミさんがここで終わりたいのでしたら
無事完結おめでとうございます。本当にお疲れ様でした。
- 305 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:17:52 ID:nrO9kGK/0
- 離れて久しい私のふるさとは、何の謙遜もなく、まったくの田舎である。
春にはレンゲが咲き苺の香りが空気を染め、夏の風は青く茂った水田を爽やかに巡っていく。
秋になれば色鮮やかな木々が山を賑やかし、冬は痛いほど澄んだ空に満点の星が輝く。
そしていつの季節にも大気には柔らかな草や土の匂いがまじり、私の心を慰めてくれたものだ。
だから、であろうか。
寝覚めの悪い頭で、長い間帰っていない故郷の生家を、ぼんやりと思い出したのは。
ほのかに石鹸の香る柔らかなシーツと、木造りの壁。それは懐かしいいなかの雰囲気と
とてもよく似ていた。似ていた、が、それだけだった。
見覚えのない箪笥に見覚えの無い燭台――そもそも燭台などというしゃれたものは我が家にはない。
上半身を起こしふと見下ろしてみれば、自分が横たわっていたベッドすらも全く見知らぬ代物だ。
そして私は、何気なく周りを見やる……
……
…………
あああああああああ!!!1!!1!
そんなこと冷静に語ってる場合じゃNEeeeeee!!!!
いやいやいやいやかん、違う、いかん、おつちけ、おちけう、餅つけ、いやいや落ち着け自分。
非常事態発生、至急状況を確認せよ。イエッサー。
- 306 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:18:59 ID:nrO9kGK/0
- 室内を見渡す。質素な家具が一通り揃っており、壁に据付けられた一輪挿しには、見たことのない
花が大輪を咲かせている。天井には蛍光灯ではなくランプがぼんやりと光っていた。
静かだ。テレビも無い、ラジオも無い、車の音すら聞こえない。
思わず見なかったことにした窓辺に、おそるおそるもう一度向き直ってみる。
まっくら、暗い、くらい。どうやらまだ夜のようだった。それならもう一度眠ろう、これは夢だ。
そう思って、いやむしろそう願って、私はふかふかの布団にもぞもぞと潜り込んだ。
……寝られん。というか、まったくさっぱり眠くない。どうやら体内時計はすっかり朝のようで、
朝食を求めてすきっ腹がごろごろと唸っている。
仕方なく床を抜け出す。くたくたのシャツにカーゴパンツ。これ、昨夜コンビニに行ったまんまの
格好じゃん。
いつもならワンルームの部屋でベッドから抜ければすぐにキッチンで、朝一番に熱いコーヒーを
淹れて食パンをトースト、といった具合だけれど、今日ばかりはそうもいかない。
――今日だけで済めばいいのだが。
部屋を出ると、そこは通路だった。右と左しか分からないまま、辺りを不審げに見回しながら
そこを進んでいく。私が後にしたのと同じような扉が、二三並んでいた。
その先で私を待ち構えていたのは、
「おはようございます。それではいってらっしゃいませ」
頭から爪先まで、緑色の服にすっぽり身を包んだ恰幅のいいオヤジだった。口ぶりからするに
ホテルのサービスマンのようだ。にしても派手な服だなおい。
ホテル、というより、ペンションだろうか。いや、この際そんなことはどっちでもいい。
宿に泊まった覚えなんてないし。第一ひとり暮らしでかつかつのフリーターにはホテルに泊まる
金なんてない……ん?金?
「あの、お聞きしたいんですけど……お金、はその、どれくらい」
「いやだなあお客さん、昨夜お泊りになるときにきちんと頂いてますよ」
…え?
「ああ、そうだそうだ。お連れの方はもう発ってしまいましたけど、よろしかったんですか?」
……は?
「お連れの方? って?」
「昨夜、あなたを担ぎ込んできた方ですよ」
- 307 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:20:40 ID:nrO9kGK/0
- ………話がよく分からない。
「あなたは気を失ってらしたから覚えてないでしょうけど。お連れではないんで?」
「な……何のことでしょう」
狐につままれたような顔の私を見て、派手なホテルマンは一瞬だけ眉をひそめる。けれどすぐに
それを引っ込めると、商売人のあこぎな顔に変わった。
「まあともかく……チェックアウトということで。お部屋にお荷物のお忘れはございませんか?」
「え、あの、いやいやいや、困ります」
突然人をうっちゃるような態度に、思わず口を挟んだ。右も左も……いや、それは分かる。けど
北も南も分からない私を追い出そうというのか、この緑色したデブは。ピザでも食ってろよ。
ていうかピザ食べたい。腹減った。
「はあ、困ると言われましても、こちらも商売ですんで……」
「でも、これからどうしたらいいか分からないんで、今すぐ出て行けと言われましても」
「そのようなことをおっしゃられましても、こちらも商売ですんで……」
「食事だけでも」
「当宿屋には食堂はついておりません。恐縮ですがこちらも商売ですんで……」
何この無限ループ。出て行く以外の選択肢は無いとでも言う気か。
「じゃあせめて、もう一泊」
「代金はお一人様1ゴールドになります」
「……ちょっと待っててください、部屋見てきます!」
もと来た廊下をあてずっぽうで走って戻る。「ゴールド」とかいう言葉の意味は分からなかったが、
要は金だろう。しかもたったの1。一。いち! それなら財布があれば何とか……
- 308 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 03:22:51 ID:nrO9kGK/0
- 「あの、申し訳ございませんが現金のみでのお支払いになっておりますんで……」
何とか……ならなかった。
部屋にかかっていたくたびれたピーコートの中には、かろうじて小銭入れが入っていた。
今の全財産、964円。緑のたぬきの前にじゃらじゃらと小銭をぶちまけたが、奴は首を横に振る
だけだ。れっきとした現金を前にして何を言うんだこの緑のたぬき。
「ですからゴールドでお出ししていただきませんと。第一、『えん』なんて通貨知りませんよ」
何度掛け合ってみても、これだ。
最終的には、「では、またのお越しをお待ちしております」の一言と共にむちゃくちゃいい笑顔で
見送られた。二度と来るか!
行く当てもないし、もちろんどうしてこんなところにいるのか、それすらも分からない。
とりあえず何かしらの情報を得るために、私は宿屋を後に歩き出した。
――――――――――――
唐突に始めてなんかごめん。
最後まで書けることを祈りつつ、のんびりやってくよ。
- 309 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 07:09:07 ID:u36xZobjO
- (T-T)アミさんお疲れ様でした!
- 310 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 11:23:41 ID:0OV0gyaEO
- >>アミさん
続き、読んでみたかったですが完結お疲れさまです
このスレで初めての完結作品ですね!
また何か書きたくなるのを期待してますw
- 311 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 11:25:38 ID:0OV0gyaEO
- >>308
続き楽しみ待ってる
- 312 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 11:44:00 ID:alOTO2cc0
- ところでエイコタンは名無しに戻っちゃうし魔神は修行に行っちゃうし
他の職人さん達も毎日更新できる訳じゃないし。
落ちる予感。
- 313 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 12:55:15 ID:buqvtzXGO
- >>310
完結したのはいくつかあったはずだが
- 314 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 12:55:48 ID:HX1E+ql/O
- >>306-308
最初の緩急のつけかたとか凄く面白い
頑張って続きを
- 315 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/22(日) 14:43:31 ID:GPpmdAWc0
- >>306-308
――まだ夜じゃないか。ひどい宿屋もあったものだ。
古めかしい石畳の道を踏みしめながら、私は溜息を一つはきだした。ピーコートの襟元をしっかりと
重ね合わせる。日が差さないとやはり冷える。こんなに朝日が待ち遠しいのは久しぶりだ。
辺りを見渡しながら足を進める。見覚えのない町並み、というか、変な町並みだ。
コンクリ舗装でない道やら、電信柱もない風景やら、暗くてよく分からないが遠目にはお城のような
ものも見える。
ゴールドとかいう通貨、何故か不自由しない言葉。
少なくとも北に拉致された、というわけじゃなさそうだ。第一今いるところは情報番組で映される
あの寂れた景色じゃなく、そう、むしろ昔世界史の資料集で見たような、中世ヨーロッパのような
感じがする。当然日本でもないに違いない。
日本どころか、ここはどうも私の知る世界ですらない気がする。
あー……きっと私は本当はこの世界の生まれで、どこかの国の王様になるべき存在で、昨夜眠っている
間に麒麟が私を迎えに……というのは冗談にしても。とりあえずここはどこだ?
そうこうしているうちに、随分と人気の無いところまで出たようだった。
辺りには草木が生い茂り、足元も石畳から踏み固められただけの土の道に変わっている。時計も携帯も
無いから分からないが、とりあえず結構な時間歩き続けてきたはずだ。
まだ日は明けないのか、日は! いや落ち着こう、怒っても仕方ない。多分宿を出たのが夜になった
ばかりだったんだろう。……あの緑饅頭め。
ぐちぐちと文句を言いながら、私は未知の土地をずんずんと進んでいく。
- 316 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/22(日) 14:44:14 ID:GPpmdAWc0
- そのときだった。
草むらがガサガサと音を立てる。不意に生き物の気配を感じて、私は意識をそちらへ向けた。
……
……
……なにこれ。
赤い、ぶにぶにした、ゼリーに顔がついたような変なものが四つほど、群れをなして現れたのである。
そして驚いて思わず後じさりした私に、そいつらは飛び掛ってきた! ていうか生き物なのかよこれ!
ひとつ、いや、一匹が足に、もう一匹が身体に、そして残り二匹は背中めがけて体当たりを繰り出す。
うわやめろ服汚れるこのコート一張羅なのに!とかくだらないことをとっさに考えた。が、それどころじゃ
ない。痛い痛い痛い!痛い!!
柔らかくてプルルンな見た目と触感をしているくせに、パワーはかなりのものだ。ぶつかられただけで
すっころんで、思い切りしりもちをついた。
それを狙ったように、後ろに回った二匹が頭を狙って落下してくる。それを文字通り死に物狂いでよけ、
足と腰にへばりついた二匹を字面通り半狂乱になって振り払い、私はよろよろと立ち上がった。
こんなふらふらな状態で逃げても、多分追いつかれる。そもそも足だってそんなに速いほうじゃない。
やっつけるしかないだろう。
突然暴れだした獲物にひるんだ笑うゼリー達から少し距離をとり、私は道端に転がっていた枝を手に取った。
若干都合が良すぎる気もしないでもないが、今はそんなこと気にしていられない。気にしていたら物語なんて
ちっとも進まないのだ。
再び飛び上がって突撃してくる一匹のぶにぶにを、思い切り打ち払う。ホームラン! 高校時代、伊達に
ソフト部でマネージャーしていたわけじゃない。……あんまり関係ないか。
その不幸なスマイルゼリーくん(命名私)は勢いよく道の脇の石にべしゃっと叩きつけられ、動かなくなる。
……死んだ? 殺しちゃった? ていうか本当に生き物?
いろいろなことが脳裏をよぎる。ゴキブリ以上のサイズの生物を殺すのは初めてだった。
仲間がやられたのを見て危険を感じたらしい残りスマイルくん達が、ちりぢりになって逃げ出していく。
私はそれを呆けたまま見送った。とりあえず危機は去ったようだった。
- 317 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/22(日) 14:45:11 ID:GPpmdAWc0
-
本当にここはどういうところなんだろう? 人はいた。町もある。変な生き物がいて、人を襲ってくる。
結局誰にもこの世界のことを尋ねられないまま、民家の集落を抜けてしまった。
まあ真夜中だし、こんな時間に戸を叩くのは失礼にあたるだろう。
幸い道もあることだ、このまま歩いていけば新しく街が見えてくるに違いない。多分。
今のうちに聞きたい事柄を纏めておくことにした。
ひとつ、街の、もしくはこの国の、もしかしたら世界の名前。それが分かるだけでも随分と気は楽になるだ
ろう。もしかすれば、帰る当てが見つかるかも知れない。
ひとつ、経済事情。「ゴールド」って何なんだ。
そして何より、あの赤くてぷにぷにの笑う軟体生物らしきもののこと。あれはいったい何だったんだ。
またしばらく時間が経った。
ゼリーにぶつかられた脛は、多分黒ずみにでもなっているのだろう、じくじくと痛みを訴えてくる。
そして何度目になるか分からない溜息をはきだそうとして……私は息をのんだ。
竜だ。すらりと長い胴体、淡い紫色の鱗を夜の闇にきらめかせる、美しい竜。
昔話や漫画やゲームなんかでは嫌になるほど目にしてきた姿だったが、こうして本物の目の前に立つと
その雄雄しさ、気高さがよく分かる。
そしてその竜はゆっくりと目をあけると、
「あああああああ!! 熱い熱い熱い!!!!」
ものすごい炎を私めがけて吐き出してきた! こいつも人を襲うのか! 何で竜なんているんだ!
かろうじて火の粉をかぶるだけで逃れ、ささやかながら武器である枯れ枝を見る。先端が見事に燃えて
なくなっていた。背筋がぞわりと粟立つ。うまくかわせなければ、私もこうなっていたのだ。
私の意識が消し炭になった枝先に向いている間にも、竜は次の攻撃に身構える。
- 318 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/22(日) 14:46:03 ID:GPpmdAWc0
- そのときだった。
「危ない、退がれ!」
私は思い切り後方に引っ張られ、その勢いで本日もう一度、見事にすっ転んだ。
打ち付けた腰をさする私を尻目に、ひとりの人間が竜の前に果敢にも立ちはだかる。突き飛ばしたのは
あんたか!
文句の一つでも言ってやろうかとして、……自分が助けられたことに気づいた。一瞬前に私のいた場所が、
見事に黒焦げになっている。
はっと顔を上げた。銀髪の、すらりとした女性がそこにいる。盾をかざして立っているところを見ると、
どうやらあの炎を防ぎきったらしい。アンビリーバブル!
突然あらわれたもうひとりの人間に、竜はぎろりと鋭い瞳を向ける。標的は私から彼女に移ったようだ。
今なら逃げられる。……でも、腰が抜けた。立てない。
「バギクロス!」
彼女は迫り来る紅蓮に手をかざすと、謎めいた言葉を放つ。次の瞬間、女性の細身を灼熱の炎が包み込んだ。
あれではいくら防いでも防ぎきれるものじゃないだろう。私は悲鳴をあげ……いや。
「……!」
突如巻き起こった旋風が、炎を竜に押し返したのだ。反撃されるなどとは思っても見なかったのだろう、
竜は降り注ぐ火の嵐に後じさりをする。
「今だ、逃げるよ!」
彼女は振り返り、へたりとしゃがみこんでいる私の腕をがしっと掴む。その出で立ちからは想像もつかない
馬鹿力で、私は引きずられるようにその場から走り去った。
竜の姿が見えなくなるまでがむしゃらに走って、大木を見つけてその下にうずくまる。
そこで初めて、私は自分の命の恩人の姿をまじまじと見つめることができた。
短い銀の髪に褐色の肌。青い目。西洋風の顔立ちでもないが、日本人のはずもない。ついでに見事な
ボンッキュッボンのスタイル。……美人だ。私と同じ生き物には到底思えない。私だって「並だ」という
程度の自信はあるが……やめよう、悲しくなる。
- 319 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/22(日) 14:46:43 ID:GPpmdAWc0
- そして彼女は気風のいい喋りの、何とも派手なお姉さまだった。
「あんたねぇ、そんな格好でこんな野っ原歩いて、死にたいわけ?」
私はその一言にかちんときた。思わず言い返す。
「そんなって……別に普通じゃないですか。あなたこそ、恥ずかしくないんですか、それ」
それ。黒いぴったりとした上下に、黄色いショートベスト。腰元にはベストにあわせたヤマブキ色の
スカーフが巻かれ、その下に短剣がちらつかせている。銃刀法違反じゃん。
盾に麻の丈夫そうな袋がくくられていて、それを背負っている。ファンタジーの旅人のような格好だった。
しかし彼女はそれの何がおかしいのか、とばかりに顔をしかめる。
宿屋のアオカビ生えた饅頭みたいなオヤジといい、全身タイツの美女といい、この世界の常識は、どうも
私の常識とは随分かけ離れているようだ。
「まあいいよ、とにかく街まで戻ろう。ここいらは強い奴も多いからね、油断してるとすぐにやられる」
いかにも軟弱そうな私を見て、「こいつを放置したらのたれ死ぬ」とでも思ったのだろう。彼女は皮手袋を
はめた手をすっと差し出した。強い奴、というのは、あの竜みたいな生き物のことなんだろう。
「あたしは盗賊のミモザ。あんたは?」
分からないことは増える一方だったが、彼女についていけば何か分かるかもしれない。その一縷の希望と
共に、私は彼女――ミモザの手を取る。
「私は……クロベ」
クロベ Lv1
フリーター
HP 6/17
MP 0/1
E かれえだ
E ピーコート
- 320 :元書き手 :2006/01/22(日) 14:49:16 ID:qSbxJOiJO
- 正直もうこのスレ終わりだと思う。初代からずっと関わってるけど職人が厨臭くなった。
別におもしろくないってわけじゃないよ。話自体は凄くおもしろいし更新が楽しみなのは今もかわらない。
ただ過剰に他の職人や読み手と馴れ合い過ぎなんだよ。結果雰囲気悪いとか言って出ていくとか宣言するアホがいるし。一体何様よ?
おまえらマンセーされたくて書いてんのか?職人が自己満足で淡々と投下して、その上でおもしろいとか
おもしろくないとか思ったやつがレスすりゃいいんだよ。ツマンネて言われて凹むような奴は最初から書くなや。
忙しくて更新できなくてごめんとかその程度ならわかるけどそれ以上のプライベートとか必要ないだろ。
雰囲気雰囲気言うけど確実に今の状況を作り出したのは過度に馴れ合う職人でありバカの一つ覚えみたいに乙コールする乞食共だ。
- 321 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 15:46:15 ID:8tt3KEOB0
- 要するに職人はオナニーしてれば良いわけだな?
参考にさしてもらう。
- 322 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 17:31:17 ID:YgmOj1dG0
- アミタソ乙でした
保管に値する文章だと思うんだけど
>>all
変な人は華麗にスルーでヨロ
- 323 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 18:06:52 ID:4MTEKuTZO
- >320
把握した
- 324 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 19:51:02 ID:Sn9D2h6BO
- >>320
言いたいことはわかったけど、元書き手とかいちいち自己主張する必要があったの?
受けなかった負け犬がおもろいって言われてる職人に嫉妬してるようにしか見えないよ
たしかに2chでは職人にしろ糞コテにしろコテハン同士の雑談はそれだけで拒絶反応がおきたり、叩きの対象になるからね
簡単な賛辞やアドバイスならコテでもいいかもしれないけど、長くなりそうな雑談やなんかは名無しでやったほうがいいかもね
まぁ、過疎化の原因はそれだけじゃないと思うけど
職人さんばかりに責任を押し付けずに、読者も少し考えたほうがいいんじゃない?と僕の意見ですがね
- 325 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 20:22:53 ID:4MTEKuTZO
- >324
乙
- 326 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 20:34:09 ID:e2SfEd/A0
- つーか、初代スレからいる身としては、昔より明らかに雰囲気良いと思うんだが。
前は、投下されても誰も乙の一言もなく、その上、職人そっちのけで議論する始末。
なんだか、ずっと妙な粘着も張り付いてて、雰囲気最悪だった。
それに比べりゃ、今は上手くいってるほうだと思うよ
- 327 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 20:36:53 ID:sIAg8TcfO
- >>319
読みやすくて好きです。
頑張ってください
- 328 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/22(日) 23:14:13 ID:wL2ONq830
- >>305二回目の投下で主人公が女性だった事に気づいたw
がんばれー
>>アミさん
乙。お暇でしたらまた、なんか書いてくだされ
- 329 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/23(月) 21:09:25 ID:K1t/n/kQO
- ほ
- 330 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/24(火) 21:42:53 ID:5s3K0BU1O
- 保守
- 331 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/24(火) 22:40:55 ID:bE3uMilO0
- ここは駄文の集合したスレですね
- 332 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/25(水) 01:44:12 ID:l8pzzafM0
- キ // /::::://O/,| /
ュ / |'''' |::::://O//| /
.ッ \ |‐┐ |::://O/ ノ ヾ、/
: |__」 |/ヾ. / /
ヽ /\ ヽ___ノ / . へ、,/
/ × / { く /
く /_ \ !、.ノ `ー''"
/\ ''" //
| \/、/ ゙′
|\ /|\ ̄
\|
- 333 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/25(水) 01:45:11 ID:YLuv9bPr0
- ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ) < 無視すれば良いだろ
(⊃ ⊂) \
| | |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(__)_)
クルッ _____________
∧_∧ /
( ・∀・ )彡<お前が家や学校でされているようにな!
⊂ つ \
人 Y  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
し (_)
- 334 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/25(水) 20:45:42 ID:zhVjnOP0O
- 埋めマンさん帰ってこないかなぁ
- 335 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/25(水) 22:58:44 ID:huA06jYxO
- 4の人と総長は頼むから完結させてくれ…
こんだけワクテカさせといて引退はひどすぎるorz
- 336 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/26(木) 00:59:43 ID:HUkLTesz0
- こんな生殺し状態いやだー
- 337 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/26(木) 01:37:19 ID:LE4YtO5s0
- 4の人、俺は待ち続けるぜー
もちろん他の職人さんも
- 338 :魚間 :2006/01/27(金) 01:53:26 ID:OJfRCd2c0
- >>282の続き
更に10分程迷っていると曲がり角の先からほんのりと明かりが見えた。
「まさか人が!それともトイレか?」
高まる期待と尿意を抑えつつ駆け出した。
曲がり角までがやけに遠く感じる
そして角を曲がるとそこに待っていたのは
ほんのりと光る床だった。
段々血圧が上がっていくのがわかる
期待を裏切られた事もあってか俺のストレスも最高潮に達していた。
「このぉ腐れ床がぁー!平面の分際で人間様を騙していいと思っているのかー!」
そう叫びながら俺は八つ当たり気味に床を踏みつけた。
が、次の瞬間
「あべぉびょら〜〜◎△★求`◆Å〃♀〜!?」
全身に電流を流されたような(いや流されたことはないんだけど)衝撃と激痛が走った。
・
・
・
危ない危ない。もう少しでチビるところだった。
後退りながら一瞬そんなことを思ったが衝撃と痛みに耐えきれず、
俺の足は限界を迎え、倒れていく。
床が目前に迫ってくる。反射的に体を支えようと身構えた
- 339 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/27(金) 09:33:51 ID:hlArZfM7O
- 冷蔵庫がない…
- 340 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/27(金) 20:45:35 ID:g5GWmCvUO
- とりあえず保守。
降臨待ち。
- 341 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/28(土) 09:33:18 ID:avmG/eym0
- 夜中の木陰は暗闇でしかなかったが、ミモザがつけた携帯ランプ(……だろう、多分)のおかげで互いの顔は
よく見える。先程の竜――サラマンダーというらしい――や他の獣が姿を表す可能性も無いとは言い切れない。
もうしばらくはこの場から動けそうに無かった。
……いろいろなことがありすぎた。
目を覚ました途端、わけのわからないペンション?にいる。私はどこかで気を失っていて、それを誰かが拾って
そこにとどけられたらしい。
「ところで、えっと……ミモザさん、今、何時くらいなんですか?」
「今? ちょうど昼を過ぎた頃だね。腹でも減ったのかい?」
「……は?」
昼頃? どうみても真夜中じゃないか。こんなまっくらなのに、昼? 馬鹿も休み休み言え、ってなものだ。
「それどんな冗談ですか」
「冗談? 何のことさね。ほんとのことを言ったまでだよ」
干した肉やら固パンやらを取り出しながら、ミモザは事も無げに言ってのける。嘘をついているようには見えず、
それが妙に
「だってお日様も射してないのに、」
「――ここにはね、太陽がないんだよ」
紡ぎかけの私の反論を遮って、彼女はぽそりと呟いた。
私は言葉をなくして上を見る。なるほど、そこには太陽の光はない。しかし、よくよく眺めてみれば夜空だとも
思えない。月もなく、星もない空。そのくせ雲が流れていく様がはっきりと見て取れるのは、どう考えても奇妙な
光景でしかなかった。
「本当に夜になるとね、何も見えなくなる。文字通りの真っ暗闇さ。さっきは太陽が無いと言ったけど、少し違う。
この世界はね、闇に覆われてるんだ。だから日の光も、月の光も届かない」
そう言うと、ミモザもまた上を見やった。頭上を雲が流れていく。
- 342 : ◆JNf/CxpPRk :2006/01/28(土) 09:34:09 ID:avmG/eym0
- 「あの……ここはどこなんですか」
人を狙って襲う生き物、光のない世界。私は、彼女に問いかけた。
「ここはアレフガルド。……知らないってことは、あんたも『落ちてきた』の?」
「『落ちてきた』?」
解らない言葉を、そのまま聞き返す。ミモザはうなずいて、口を開いた。
「アレフガルドの上にはね、別の世界があるんだよ。あたしはそこから落ちてきた。そういう奴は多くないけど、
珍しくもない。クロベ、あんたもそうなのか?」
「それってどんなとこですか!? 帰れるんですか!?」
「ちょ、ちょっと……落ち着きなよ。そう一度に尋ねるもんじゃないって」
にわかに色めきたった私に、ミモザは少したじろいだ様子だった。けれどそんなことに構ってる場合じゃない。
これはいきなりの手がかりなのだ。私が帰るための。
「まあそうだね。一言で言えば……帰れる」
彼女は、言った。そう、はっきりと。
「帰れる? 本当に? 今すぐ?」
「出身の国は? 知ってりゃ送ってやるよ」
ちょっとコンビニでも行かない?的なノリでミモザは言う。そりゃそうだ、家に帰るだけのことなんだから。
これで明日には変な夢を見たと友人に笑って話せるだろう。顔の筋肉が緩むのを感じながら、私は帰る先を
彼女に告げた。
「日本です」
「……ニッポン?」
けれど、返ってきたのは怪訝そうな声だった。
「どこだい、それは」
「……え?」
「あたしの知る限り、そんな名前の国は聞いたことがないよ」
そのミモザの一言は、私を絶望の底に叩き落すにはあまりにも十分だった。
- 343 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/28(土) 09:57:57 ID:AezfiOoy0
- あげるか
- 344 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/29(日) 14:59:26 ID:f/l5cyaxO
- 過疎
- 345 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/30(月) 15:27:05 ID:RrLuJVZG0
- 保守
- 346 :書記 ◆nUtX8ZK/82 :2006/01/30(月) 23:56:01 ID:nnihZGBg0
- こんばんは。
保守ついでに。
二泊目以外の過去スレを閲覧できるようにしました。
http://www.geocities.jp/if_dq/
- 347 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/31(火) 00:01:04 ID:KRrspZjmO
- まだこのパートスレいきてたのかwww
4の人と総長は帰ってきたのか?
- 348 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/31(火) 00:02:10 ID:K9Nuyv9l0
- >>347
4の人は去年の10月頃にエスターク戦をうpってたはず
- 349 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/31(火) 00:05:59 ID:bB43sNzVO
- >>348
マジか!
ちょっ、過去ログ漁ってくる
- 350 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/31(火) 00:45:17 ID:Gfc3CS7G0
- >>346
書記氏乙
体調どうですか。
>>348
4の人は12月にもキタがそれ以降見てない…
- 351 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/01/31(火) 08:32:16 ID:K9Nuyv9l0
- >>349
10月にデスパレス、12月にエスターク戦だったwwwっうぇww勘違いktkr
- 352 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/01(水) 01:13:22 ID:cevsAi6l0
- すごいいいところで止まってるから続きが気になってしかたないよ4の人…
10月に来て12月に来たから2月にも来てくれたらいいなあ。
- 353 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:26:04 ID:FIBKzuq30
- 「あ…あぁ…姫様…姫様ァァァァ!!!」
クリフトの叫びに反応し、視線が集中する。
最初は、それが何か解らなかった。
何が居るのか、何が起きたのか、何が進んでいるのか。
何一つとして解らない中で、それでも今迄の経験が俺にドラゴンキラーの柄を強く握らせる。
ズルリ。何かを引き摺るような音。
アリーナの腹から生えていた腕が見えなくなると同時に、かくん、と、彼女の足が崩れる。
皮肉にも、腹を突き破っていた腕がそれまで彼女を支えていたのか。
支えを失った彼女の身体は、力無く神官へともたれかかり――そのまま、二人とも倒れこむ。
「姫、様――ウワァァァァァ!!…お前はあああ!!」
クリフトが術の詠唱を始める。
今まで聞いた事の無い、言葉。渦巻く怨嗟、滅びの念!
「待て!クリフト、先に――」
ソロの制止の言葉も届かず、呪文は完成する。
それこそ――。
「集団即死(ザラキ)ィィィィィィィ!!!」
組まれた手が方向を定め、神官の背から吹き上げる黒い炎!
とぐろを巻くように頭上で一回転した後、一直線に突き進み、アリーナを傷つけた腕の主を包み込む!
ぐらり、と。はっきりと目に見える。ヤツの身体が傾ぐのが。
「――やった!」
快哉の声を上げるクリフト。そんな彼に――駆け寄る、ソロ。
- 354 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:26:56 ID:FIBKzuq30
- 「……なるほど、ザラキ、か……」
響く声に、クリフトの身体が固まる。
「一瞬で対象の血液を凝固させる…決まれば必殺の術か…かなりの錬度が必要であろうに、その若さで中々優秀では無いか。
だが、惜しいかな…魔族の王たる私には、効かぬ。――極大、焦熱(ベギラゴン)」
無造作に払われる魔王の腕。
たった、それだけで。漆黒の炎は吹き散らされ、新たに生み出された、留まる所を知らない灼熱の業火が大きく顎を開きクリフトを呑み込まんとする。
動けない。今、自分が動けば――その炎は、足元のアリーナを灼き尽くす。だから、クリフトは動けない。
倒れたアリーナを抱え、棒立ちのクリフトに飛び掛り、何とかその範囲外に弾き出したのは、ソロだった。
だが…無傷とはいかず、足が真っ黒く炭化してしまっている。
「…ソロさん…!」
「ぐっ…俺は、大丈夫だ、自分で治せる…クリフト、アリーナを治してくれ…」
その言葉にはっと我に返ったか、すぐにアリーナへと治癒呪文をほどこす。
「う、っく…はぁ…はぁ…ベ、上位治癒(ベホイミ)…」
まるで命そのものがこぼれていくかのように流れ出ていく真っ赤な血液を、クリフトは少しでもアリーナの身体に戻そうとする。
赤黒く染まったその両手を、腹に当て、しきりに治癒呪文を唱えている。
それに、興味を失ったかのように全く頓着せず…悠然とフロア内を進む、その、男。
誰一人として動けない。彼の者が発するプレッシャーに押し潰されないようにするのが精一杯で――俺は勿論、ソフィアすらも――。
やがて、男が眠りに就いたエスタークの前に立つ。
「……エスターク帝が敗れたか。流石にやってくれるものだな……」
ちらり、と見上げていた視線を横に逸らす。
そこには、マーニャがいた。
- 355 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:30:20 ID:FIBKzuq30
- 「――まさか、ベギラゴンだなんて……いやね……上には上がいるの……?……だけど!
私の妹分、弟分をこれ以上やらせはしないよ!」
鉄の擦れる音が響き、マーニャの扇が開かれる。
呪文一つの威力では、劣れども。その練り上げる速度での勝負に持ち込む。
その意図を、付き合いの長い俺は理解した。
刹那の間。
「メラ――」
「――遅い」
サッと中空に舞う血飛沫。圧倒的な踏み込みで、マーニャが十分と見た距離を踏破し、その剣を振るう――。
マーニャの呪文が遅い、だって?
そんな事があるものか!違う、あの男が…疾過ぎるんだ…!!
「…術に関する天賦の才があるようだな、女…だが、それは武術を疎かにして良い理由にはならん。…惜しいな、その才能すらあるというのに」
スローモーションのように、ゆっくりと倒れるマーニャ。
一撃、だ。アリーナも、マーニャも、女性の身であるとはいえ、彼女たちを一撃で昏倒させる事が出来るヤツなんて…。
「…予言は成就しエスターク帝は敗れたが、好都合と言えば好都合か。幸い、勇者はこの場に居るのだからな」
びっと剣から血を払い、再びゆっくりと歩き出す。
- 356 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:30:50 ID:FIBKzuq30
- 「――デス、ピサロ……」
ソフィアが、ぽつりと名を呟く。
ダメだ、と押し止めるには、余りに距離があり過ぎた。それに、この重圧の中、何か行動を起こせたとも思わない。
「デスピサロ!!!!!」
引き伸ばす事無く、すぱっと響き渡る言霊で魔王の重圧を打ち破る。
それはあたかも、言葉をぶつける、のではなく、言葉で相手を斬りつけるかのように。
タンッ、重力に反発し空を舞う音。
デスピサロが、上空からの強襲を受けるべく剣を構える。
ッキーーーーーーーーーーン!!!!
金属と金属がぶつかり、弾かれ合う音が響く。
着地、二の太刀三の太刀と、ソフィアは止まる事無く剣を繰り出す!
「お前が…!お前が……!!」
「……!?バカな。何故貴様――」
「お前が、殺した!父さんも、母さんも…師匠も長老も…!!シンシアモォォォォ!!!!」
初めて見せる魔王の動揺。呟かれる疑念は即座に慟哭でかき消され、デスピサロもまたすぐに正気に返る。
唐竹、袈裟、逆袈裟、上から叩きつけるような斬撃。
打ち下ろし、打ち下ろし、打ち下ろす、単純な動きにデスピサロは全く揺るがない。
いつものソフィアなら、それはフェイントだ。上へ注意を引きつけておいて、足元を崩す。
デスピサロもそれを見越してか、反撃らしい反撃を行わない。
だが、俺は――いつも彼女の姿を眼で追っていた俺は、いち早く気付いていた。
彼女の剣にあるのは、怒りと迷いのみ。そこに駆け引きなどありはしない。
すぐにデスピサロもそれに気付くだろう。だから、自分の足を拳で叩き、震えを止めて、俺は駆け出した。
- 357 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:31:58 ID:FIBKzuq30
- 「シンシア?…誰の事だ。いや、大方それもあの村の者の名か。
そういえば、擬態(モシャス)で貴様に化けた娘がいたが…」
ソフィアの剣が軽いのは、確かにあるだろう。
だが、それにしたとしても――例えそれがライアンやソロであったとしても、デスピサロが傾ぐ事は無いのでは無いか。
彼奴の強さなどというものをこの俺が計り知れるとも思わないが、今迄の戦いでソフィアをああも簡単にあしらう者はいなかった。
「なるほど、それ故に私を殺すか…道理だな。
だが、妙だ。筋が通っているというのに、何故、そんなにも貴様は迷っているのだ?」
打ち下ろした剣が迎え撃つ剣と噛み合い、鍔迫り合いが発生する。
それも、デスピサロは受けるだけ。ソフィアが押し込むが、デスピサロはそれに対抗する為の力のみを発揮している。
ソフィアを覗きこむかのように顔を近づけ、瞳を見据える魔族の王。勇者と、魔王の、邂逅。
口を開くソフィアだが、言葉が続かない。
彼女は未だ失語の影響で、咄嗟に雄弁なる言葉を紡ぐ事が出来ない。
「……ソロが居るという事は、貴様たち、ロザリーに出逢ったな。
何か吹き込まれたか……」
ちらりと視線をソロへと向けるデスピサロ。
ソロは、雷撃招来(ライデイン)の術を練り上げ解放するタイミングを計っている。
ソフィアが長く時間を稼げると考えれば、マーニャの治癒へと向かうのだろう。
それをしていないという事は、つまり――そういう事、だ。
「…どうして、人間を滅ぼそうとするの!?ロザリーと一緒に、二人で…ロザリーヒルの皆と一緒に、幸せに…暮らせば良いじゃない!?」
「それは…今更だ。もう、遅い。
それに人間を滅ぼさねばならぬ事に、変わりは無い。…人が生きていれば、いずれロザリーは…」
- 358 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:36:25 ID:FIBKzuq30
- 「そんなの…そんなの解らない…」
「解らない?本当に、そう思うのか?違う。これは確定した事象だ。
人が存在する限り、ロザリーは常に怯え、危険を感じながら暮らさねばならぬ」
「だけど、私達は違う!」
「そう、お前達は。だが、そうじゃない者達もいるだろう?」
「大多数の関係の無い人達まで、滅ぼそうと言うの…!?」
「そうだ。…そう、お前達は関係ない、というのだな。自分たちと違う人間の仕出かす事は、与り知らぬ事だ…と」
「――それは……」
「案ずるな。間違っている訳では無いさ。…だがな、勇者よ。獣も、鳥も、ホビットも…魔物すらも。喰らう為以外には、必要以上には、殺さないのだ…。
愚にもつかぬ、蒐集欲を、見栄を、満たす為に…他者を傷つけるのは、人間というカテゴリーに属するモノだけなのだ。
欲深い人間と、そうではない人間と、どう区別をつける?貴様たちで隔離してくれるのか?
ロザリーと四六時中離れずにいる、というのは現実的では無い。永い時を共に生きれば、数日、数時間、数分、数秒…離れる事にもなる。
愛しい者一人守るという事は…存外に難しいのだ。それは人間を滅ぼす事以上に、な」
「嘘!狂った魔物は享楽に耽る為に人を殺すわ!それに――お前は、私の大切な人達を喰らう為以外に、殺した!」
「その理屈で言うならば私は狂っているのかもな?…魔に、とて。護るべきものはある。それが可笑しければ嗤うがいい」
「私にだってあったのよ――貴方は……貴方は、誰の気も知らず、自分の事ばかり…。
だから誰かを殺せる、ロザリーを悲しませる!ロザリーは、そんな事…望んでいないのに…」
「他人の気を知っているかどうかは興味が無いが……何も知らぬのは貴様達だよ、天空の勇者。
雑兵ですら察している事にも気付かず、こうも向こう見ずでは、な」
- 359 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:42:22 ID:FIBKzuq30
- デスピサロがすっと体を横にずらす。
押し込んでいたソフィアは力をいなされ、数歩たたらを踏んだ。
一閃。
ぱぁっと、場違いな音がする。
そう、思った。だって、こんな鮮やかな。
鋭利な刃と、使い手の技量次第では、こんなにも――死、とは。綺麗な音がするのだろうか?
「――イヤァァァァァァ!!!」
ソフィアの絶叫が聞こえる。
ああ…何度目だろうか…俺は、また…彼女を守れなかったんだ…だって、彼女に、こんな…悲痛な声を出させてしまったんだから…。
むかむかと、胸をせり上がってくるものを、びちゃりと吐き出す。
どうやら、腹、のようだった。
止め処なく溢れる俺の血液が、だくだくと地面とソフィアを汚していく。
「………ご、めん………汚しちゃっ………て………」
「勇者よ。これも、私の責だと思うか?」
頭上から、声がする。
俺はソフィアに抱えられているのか。
これは、ダメだ。なんとか彼女に距離を取ってもらって……頭を、冷やしてもらわないと……。
- 360 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:43:25 ID:FIBKzuq30
- 「違う。それは違うな。その雑兵が死に瀕しているのは貴様の責だ。
何も出来ず、駒に甘んじている貴様の、な。…だが、それを責めるのすら酷なのか、最早…我等には、何も…」
苦悩に満ち満ちた声。
既に痛みすらも消え果た世界で、俺にはそう聞こえた。
「……栓無き事か。良い。ここで楽にしてやろう。せめて、貴様だけでもな」
ズンッ。
魔王の剣が。
無造作に、余りに簡単に、俺の頭上にある彼女の心臓を――貫きせしめた。
ああ。
あああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
――あ、ぁ。
ソフィア、ソフィア、ソフィア!!!
俺を抱えていた腕からふっと力が抜ける。
後ろ向きに倒れていく少女を、支えようと身体をよじるが、それは丸っきり動きとして反映されない。
とさっと、小さく軽い音がする。
何度も何度も彼女の名を呼べど、それは声にならない。
ごぽごぽと、腹から逆流してくる血泡を散らす結果となる。
「……」
地に這い蹲る俺たちを見遣る魔王の慧眼。
それは、冷たく、哀れみが宿っており。
- 361 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:45:03 ID:FIBKzuq30
- 「…そうか、ソロと…貴様か…勇者に声を与えたのは」
「――……は……?」
「雑兵と言えども侮れぬものだ…これで、変わるのか、それとも何も変わらないのか。…今はまだ、その答えが出る時では、無いのか――」
ッガァァァァン!!
耳を劈く怒号と共に、俺の視界が白濁する。
白んだ世界は容易に光を取り戻す事はなく、出来る事といえば熱を失っていく彼女を、抱き締めるのみで。
少し吹き飛ばされたのかもしれない。だが、今は意識を手放してしまわないようにするのが精一杯で周りを確認する事もできない。
「…ピサロ」
「フ…ライデインか。まだ、そこ止まりなのか?」
「ああ。本当は、今少し――時間が欲しかった所だが。なに、人生はいつも転機の連続だし――肝心な時にいつも間に合うかと言えばそうでもない。
お前が、俺とソフィアの村に来た時と、同じに」
「そうだ。…私達は、いつも間に合わぬ」
「だからこそ、今あるもので、出来る限りをやるしかない。嘆いたって、仕方が無いのだから」
「…同感だ。私と貴様は…似ているのだろうか?」
「止めてくれ。そんなの、お前も不本意だろう?」
- 362 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:46:04 ID:FIBKzuq30
- デスピサロの剣が持ち上がる。それを受け、下段に構えるソロ。
それは、まるで一枚の壁画のよう。
碧髪の、鋭い目つきをした美しい青年と、長い銀髪に紅い瞳の、魔族の王。
二人が対峙する周りには、眠りについた地獄の帝王と、累々と横たわる青年の仲間たち。
決着が――つく。
永かった旅の目的の一つが、今――。
「デスピサロさまぁ!」
が、張り詰めた空気を、ミニデーモンの幼い声があっさりと破ってしまう。
デスピサロもソロも、視線を外さぬままではあったが。
「たいへんです!ロザリー様が…ロザリー様が、人間たちの手に!」
「…なんだって、ミニモン!それは本当か!?」
「え?ソ、ソロ様…?」
その報を聞き、真っ先に驚愕の声を上げたのは、ソロだった。
対して、デスピサロは――既に剣を鞘に収め、部屋の出口へと歩みを進めている。
「待て、ピサロ!俺も――」
「…それには及ばん。お前は、その者達を救ってやるんだな。
まだ…独りで戦っている時の癖が抜けていない。それでは、これから先…立ち行かんぞ」
- 363 :ピサロ ◆gYINaOL2aE :2006/02/02(木) 04:47:13 ID:FIBKzuq30
- マントを翻し、それきり足を止める事無く、姿を消す。
ミニモンが、ちらちらとソロを気にしながらも、続いて行った。
後に残されたのは。
浅い呼吸を繰り返すアリーナ。かろうじて出血だけは止められたマーニャ。二人の治癒でついに力尽きたクリフト。
俺と何よりソフィアの状況に、顔面を蒼白にしながらもすぐに脱出(リレミト)の準備をするソロ。ソフィアに、ありったけの治癒呪文をかけ続ける俺。
そして、呼吸が止まり、その肌の温もりを失ったソフィア。
あまりに静かで、惨憺たる光景。
初めてだった。
これほどまでに、打ちのめされたのは。
最早何も考える事もできず、ただ、ひたすらに術を練る。
やがて、それすらも出来なくなった。もう、俺に出来るのは…自分の失われていく体温で、少しでもソフィアを暖めようとする事だけだった。
HP:2/105
MP:3/48
Eドラゴンキラー Eみかわしの服 Eパンツ
戦闘:物理障壁,攻勢力向上,治癒,上位治癒
通常:治癒,上位治癒
- 364 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 04:56:31 ID:m/2uprz/O
- リアルタイムで読ませて頂いたよ…
まさにフォルチュナート(幸運)だ。
- 365 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 06:15:32 ID:1861fqpuO
- ああ…これは良い……
- 366 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 06:40:22 ID:cJMH0BG50
- 待ってて良かった…
- 367 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 07:50:52 ID:emZLg6AIO
- これはやばい
- 368 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 08:46:06 ID:9ZVfyApi0
- 4の人キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!
正直4の人のトリップ見るだけで興奮する
でもこの展開は…。・゚・(ノД`)・゚・。イイケドナケル
- 369 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 08:48:36 ID:VPi5tInkO
- これがあるから、このスレを見ているようなものだ。
- 370 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 09:19:26 ID:xe86bAF/0
- ありがとう。ありがとう。
震えがとまらないよ・・・
- 371 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 14:26:16 ID:Tv4VOiaf0
- 4の人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
ソフィアが…ロザリーが…
- 372 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/02(木) 17:00:14 ID:P7KcaBUf0
- 目が覚めてみるとベットの上だった。
長い時間寝ていたらしく、少し頭痛がする。体に力を入れ、起きあがろうとした時、
異変に気付く。この布団は・・・
いや、それどころかこの部屋自体、見覚えが無い。ここは何処なんだ?
軽く混乱してきたが、取りあえず体を起こす。と、着ている服に目が行った。
まったく見覚えのない服だ。オレはどうしちまったんだ・・・
何とかこれまでの事を思い出そうとするが、何も思い出せない。
そんなバカな。そうだ、オレの名前は・・・
なんて事だ。名前すら覚えてないなんて・・・
さらに混乱し、頭痛も酷くなってきたが、ここで頭を抱えている訳にも行かない。
部屋を見渡すと、端の方に布袋とその横には・・・
オレの目がおかしいのか?どうみても剣にしか見えない物が・・・
そっと持ち上げてみるとズシリと重い。銅で出来ているようだ。
布袋の中には丈夫そうな服、皮で出来た帽子、あとは財布らしき物が入っていた。
開けてみると、中には見た事の無い硬貨が入っていた。Gと彫ってある。
何だこれは。中世の世界に迷い込んだみたいじゃないか・・・
おそるおそるドアを開けると、同時に隣のドアも開き、戦士のような格好をした
男が出てきた。
「よう、ルークさんよ。ちゃんと眠れたかい?」
ルーク?オレの事か?この男は?
頭の中を?マークが駆け回っていく。そんなオレを尻目にその男は
「もうこんな時間だ、そろそろ出ようぜ。10分後にロビーで落ち合おう。
と言い残し、自分の部屋へ入って行った。
- 373 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 17:11:52 ID:oI/bmBEr0
- 「DQの宿屋で目が覚めたはずの現実世界の人」を保つのは難しそうだな・・・
- 374 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/02(木) 17:22:02 ID:P7KcaBUf0
- ルークも部屋に戻り、ベットに腰掛けて1から考える。
信じられない事だが、俺は異世界に迷い込んだしまったようだ。
と言っても、元の世界の事も思い出せないのだが・・・
さっきの男と行動を共にしているようだが、一体どんな関係なんだ?
まあ今の所、あの男と行動を共にするしかないようだ。
外に出る準備を始める。
服を着替え、帽子を被る。少し迷った末、剣をもってドアを開ける。
廊下を抜け、階段を降りるとロビーとその先にはカウンターが見えた。
あの男はまだ来てないようだ。
所在無さげに立っていたルークにロビーにいた老人が近寄ってきて、
小声で言う。
「あんた、昨日アモスと泊まっていたな。あいつには気を付けた方がいいぞ」
アモス?さっきの戦士の名前のようだな。どうゆう事か詳しく聞こうとしたが、
当のアモスが来たため、老人はそそくさと立ち去ってしまった。
「なんだ?あのジジイは」
と聞かれたが、言葉を濁す。
「まあいい。行くぞ」
支払いをすませ、足早に宿の外へ出て行くアモス。
慌ててついて行く。
- 375 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/02(木) 17:39:45 ID:P7KcaBUf0
- 外に出ると、やはり見覚えの無い町が広がっていた。
レンガの家、石畳の道、小高い丘の上には立派な城まで・・・
こりゃマジで中世の世界だな。思わず苦笑いを浮かべながらアモスの後を追う。
建物の看板に目が行く。見たことも無い文字・・・
のはずなのになぜか普通に読めてしまう。
武器と防具の店、ゴールド銀行、道具屋・・・
と、道具屋の前でアモスが立ち止まる。
「そういえば、オレは薬草を3コしか持ってないんだが、あんたはいくつだ?
えっ?薬草?なんだそれ・・・
戸惑った表情を浮かべたオレに、何を勘違いしたのか
「何だ、持ってないのか。3コじゃ心許ないな」
と言い、道具屋へ入っていく。
「親父、薬草3コくれ」
「はい、24Gになります」
「あんたが持つ分だから、自分で払いな」
慌てて財布を出し、何とか支払いを済ませて薬草とやらを受け取る。
- 376 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/02(木) 18:02:01 ID:P7KcaBUf0
- アモスはどんどん進んで行き、町外れの方に向かう。
このままではサッパリ状況が分からないままだ。
覚悟を決め、立ち止まってアモスに話しかける。
「なあ、アモス・・・さん」
「なんだい?」
「えっと・・・今からどこへ・・・何をしに行くんだっけ」
「はあ?」
呆れた表情を浮かべるアモス。
「いや・・・確認だ、確認」
「・・・まあいいか。今からナジミの塔へ行って、そこに巣食う魔物の親玉を
倒すのさ。上手く退治できりゃ、王様から報奨金がたんまりという訳さ。
他の奴らに先を越されない内に行くぞ」
また歩き出したアモスを追って町を出る。入り口の横に「アリアハン」
と書いてある。この町の名前らしいな・・・
正直言ってまったく現状を掴み切れないが、今は流れに身を任すしかないようだ。
半分ヤケクソな気分になりながら、ルークは見知らぬ大地を歩き出した。
つづく
- 377 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/02(木) 19:12:17 ID:q6S6t+qX0
- 毎回他の職人達が更新する気失せないか心配になる。
- 378 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/03(金) 01:44:26 ID:19Xn7mjA0
- >>376続き
町を出て道なりに進んで行く。
「あれを見てみろよ」
アモスが指差す先に海が広がっていた。
ひときわ目立つのが小島にそびえ立つ塔だ。
「アレがナジミの塔さ」
ニヤッと笑いながらアモスが言う。
「でも、どうやって入るんだ?船でも使うのか?」
「バカ言え。船なんて何処にあるんだよ。この地方には港も無いんだぞ」
「じゃあどうやって・・・」
「その内、分かるさ」
アモスは上機嫌で鼻歌を歌いながら進む。
ふと、さっきの老人の言葉を思い出す。
「アモスには気を付けた方がいいぞ」
一体、何を指して言ったのか良く分からない。
今の状況では、コイツに頼るしかないじゃないか
「構えろっ」
いきなりアモスが発した大声で現実に引き戻された。
驚いてアモスの構える先を見ると、奇妙な3匹の生物がいた。
- 379 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/03(金) 02:02:43 ID:19Xn7mjA0
- 体は青く、ブヨブヨしたゼリーみたいな物体。
妙に愛嬌のある顔をしているが、コイツは何者なんだ・・・
横でアモスは
「何だ、スライムかよ・・・」
と、余裕の表情を浮かべている。
「こんなカス、オレ一人で十分だ。そこで見てな」
と言って謎の生物に飛びかかり、あっという間に3匹とも切り殺してしまった。
「こんな雑魚じゃあ何の経験にもならないな。行こうぜ」
悠然と歩き出すアモス。しかしオレは初めて見る戦闘にショックを受けていた。
オレにも同じ事が出来るのか?
答えが出ないまま進むと、いきなり空から何者かが襲ってきた。
「危ないっ」
アモスの声が飛ぶ前に、とっさに身をかわしていた。
自分にこんな動きが出来るなんて・・・
襲ってきたモンスターを見ると、ガイコツを持ったカラスだった。
考える前に体が動いていた。
剣を構え、カラスに襲いかかると縦に剣を叩きつける。
「グエーッ」
叫び声を上げながら絶命するカラス。
- 380 :オルテガ ◆8JKqodVw2k :2006/02/03(金) 02:25:03 ID:19Xn7mjA0
- 不思議と不快感は感じなかった。前にも味わったような感触。
(ひょっとして、元の世界で人殺しでもやっていたのかな・・・)
くだらない事を考えながら、先へ行くアモスに追い付く。
「中々やるじゃないか。まあ、それくらい出来なきゃ雇った意味も無いんだがな」
そう呟くアモス。
どうやらオレは、コイツに雇われている身らしいな・・・
続けてアモスは言う。
「万が一、薬草が尽きるような事になったらホイミを頼むからな。見りゃ分かる
だろうが、オレは魔法はサッパリだからな・・・」
また分からない言葉が出てきた。
ホイミ?呪文?全く意味が分からない・・・
まあどうでもいい。ようやくこの状況にも慣れてきた。
その内に意味も分かるだろう。
アモスは
「少し急ぐか。日が暮れる前にレーべの村に着きたいからな」
そう言うと急ぎ足になり、ルークも慌ててついて行く
次はレーべの村か・・・
今までのオドオドした気持ちは無くなっている。
ワクワク感さえ感じるようになって来た。
しばらく進むと道の先に集落が見えてきた。
あれがレーべの村のようだ。
つづく
- 381 :松田侑之臣 :2006/02/03(金) 06:17:44 ID:ZE1BvLsv0
- はじめまして。職人さんに感化されて私も話が浮かびました。拙い文ですが、頑張ります。
- 382 :松田侑之臣 :2006/02/03(金) 06:40:42 ID:ZE1BvLsv0
- 柔らかな日差しと鳥の鳴く声がする。まるで絵に描いたようなびゅーてほーさんでーの朝。俺は違和感に苛まされ起き上がった。確か俺の部屋の窓は本棚につぶされて…ってうわーーーー!!なんだよここ!煉瓦に囲まれた部屋にベッド一つのみ。おいおい、どこの独房だよ…
- 383 :松田侑之臣 :2006/02/03(金) 07:02:04 ID:ZE1BvLsv0
- 一体ここはどこだ?確か俺は昨日は一日中エロ同人誌の原稿を描いていたはず。そうか!記憶喪失だな。えーっと俺は松田侑之臣(まつだゆうのしん)職業同人作家28歳蠍座B型彼女いない歴28年…って今の状況には関係ねぇー!と、とりあえずここを出よう。
- 384 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/03(金) 07:51:49 ID:W8mvdhrWO
- とりあえずトリップつけようぜ?
- 385 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/03(金) 08:11:03 ID:9sArZfKJO
- 改行もお願いします…
- 386 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/03(金) 08:28:55 ID:SK2/lCCI0
- 致命的なまでに駄目駄目だ…
- 387 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/03(金) 14:09:06 ID:JcG7/gop0
- そうしてしばらく私は二の句を告げられずにいた。
見知らぬ景色、不可思議な世界。ここは私の生まれ育った次元とは別物なんだ、と、先程までは思えていた。
どうしてこんなことになったのかは分からないけれど元いた場へと戻るのは容易いことではないだろう、とも薄々
感じてはいた。
だけど一度でも「帰れる」と言われた後で突然それをひっくり返されれば、やはりこんなにも辛い。
「そう気を落とさない。何とかなるだろうよ。多分」
黙り込んだ私を見て何かを察したのか、女盗賊はぽそっと言った。見ず知らずの人にこんな風に励まされるのは
悪くない。
「そうだ……よかったら、上の――あたしが来た方の世界に行ってみる?」
突然の申し出だった。私は垂れていた頭を上げて彼女の顔を見つめる。
「手がかりはあるかもしれないし、無いかもしれない。ま、何にしてもそろそろここから離れたほうがいい」
そして思い出したように、ミモザは私を見、手に持った干し肉を見た。
「……あんたも食べる?」
一日ぶりに口にした食べ物はとてもおいしかった。私がしょっちゅう酒の肴にしているようなジャーキーと違って
味気も素っ気もない代物だったけれど。
私が目覚めて宿を出たのは朝に当たる時間のようだった。そして半日かけて歩いてきて、サラマンダーに遭遇し
ミモザに助けられ今に至る。と彼女は言う。
夜しかないこの世界――アレフガルドでは、時間の感覚がまったく掴めない。
今日は何日ですかと聞こうとして、すぐに無駄だと気づいた。どうせ違う世界の日付が返ってくるだけだろう。
「食った?」
手渡された食料を全て平らげた私をまじまじと見て、ミモザは聞く。私はそれに満足そうに答える。
「いただきました」
「よろしい」
そして彼女はにこりと……いや、にやりと、笑った。
「町に着くまで荷物持ちヨロシク」
- 388 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/03(金) 14:09:58 ID:JcG7/gop0
- ……はい?
「当然でしょ、世の中全てギブアンドテイク。これ常識」
うん、そうですね。
「おまけにさっき助けてやらなかったらあんた死んでたわよね。ギブアンドテイクどころか、って話よね」
まったくその通りです。
「じゃ、そういうことだから」
了解いたしました。
私は頷いた。逆らう余地はこれっぽっちも残されていなかった。
だけどまあ、これでいいじゃないか、と私は思う。
歩き続けたところで家に帰れるわけでもなし、ミモザの申し出を断ってひとりでどこかに行こうとしたところで当てが
あるわけでもなし。何よりこのままだと死ぬ。原因が空腹だろうと疲労困憊だろうと竜だろうと関係ない。超死ねる。
死ぬのは御免だ。だから、これでよかったのだ。
そして、もちろん背中には私のものじゃない荷物が乗っかっているわけである。最初こそ、こんな重そうなもの持てる
かあ!などとあくまでも頭の中だけで叫んだわけだが、こうして持ってみると意外にそうでもない。盾が、予想して
いたよりもはるかに軽いのだ。
「そんな調子じゃ町に着くころにゃ夜が更けるよー……って言っても今も夜更けみたいなものか」
自分のボケに自分で突っ込みをいれつつ、私の前を美女が行く。持つものを持たない彼女の足取りは、何だか
憎たらしいくらい軽やかだ。
私は町までの遠い道のりを浮かべ、うんざりと溜息をこぼした。
- 389 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/03(金) 14:11:46 ID:JcG7/gop0
- さっきまで座り込んでいた木陰を後にしてからも、何度か襲撃を受けた。
あれらは総じて「魔物」というんだとミモザが教えてくれた。ちなみに赤くて笑うぶにぶにはスライムベスという魔物
らしい。それを伸してやったことを話してみたところ、どうやらそいつらはこの辺りで一、二を争うほど弱っちいという
ことだった。
それともう一つ分かった事実。それは今現在私をこき使っているこの女盗賊がめっぽう強い、ということだ。
サイズの小さな魔物は腰に据えた鞭で散らし、敵わない相手と見るや素早く撒いて逃げ出す。その鞭だって鋼鉄の
鎖を編みこんだもので、SMの女王様がばしばし鳴らすような皮製の軽いやつとは大違いだ。あれで叩かれれば
ミミズばれどころではすまないだろう。
一方、私はといえば、スライムベスやら泥の手首(マドハンドというそうだ)やらが現れたときにはそこいらの枝を拾って
突きまわし、竜だの石像だの骸骨だのに出くわしたときは草むらに縮こまり、ミモザに引っ張られてその場を後にする。
なんか情けない。すごい情けない。
でも仕方ないだろう。こんな風に命のやりとりをすることなんて、これまでの人生の日常ではありえなかったんだから。
私は惨めったらしく息を吐き出して、ミモザの旅荷物一式を背負い直……さなかった。
「もうだめ」
思わずその場にへたり込んでしまう。もう限界。ここまで走ったり歩いたりしてきたのが奇跡だ。まったく、自分で
自分を褒めたい。ちょっと古いか。
とにかく、もう限界なのだ。高校を出てからこっち、まともに運動などしていないのだから。
「もうだめってね。歩かないと先に進まないよ」
振り返るなり、ミモザは呆れた声を出した。駄々っ子をあやすママみたいなこと言ってる。確かにそんな状況だ。
「せめて水、水を……」
「はは、ごめん。さっき終わった」
それは笑いながら口にできる言葉ではないと思う。
私はがっくりと肩を落とした。漫画とかなら顔に青い筋が入っているところだ。
「ま、水が終わったってことは町が近いってことだ。そのくらいの目安で水筒に入れてきてあるから。本当なら
三割くらい残るはずなんだけど、ふたりで飲んだから終わるのも早かったんだろ」
さすが旅人はこういう状況に慣れているのだろう。冷静だし計算づくだ。
- 390 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/03(金) 14:13:08 ID:JcG7/gop0
- 「でも結局のとこ、今飲む水はもちろん、」
「ないね」
「も う だ め」
そういえば道中スライムベスに体当たりされた足が痛む。忘れていたわけじゃないが、どうしてこう疲れると
そういうことに敏感になるのだろう。
「ほら立つ。荷物は持ってやるから」
ありがとうございます、と思わず言ってしまったが、そもそもこれはミモザの荷物だ。
それでもありがたいことに違いはなかったので、私は最後の力を振り絞って立ち上がる。
その瞬間。
「あだだだだだだd(ry」
足に激痛が走った。
あまりのことにもう一度地べたに尻をつく。多分今、涙目になってる。
「あー……こりゃ駄目だわ」
私のカーゴパンツの裾を持ち上げて、ミモザは呟いた。痣になっているだけだと思っていたが、ところがどっこい
そこは赤くなって腫れかけていた。「折れてるね」
「痛い痛い痛い! ちょ、触んないでってば!!」
ちょんと突っつかれて、私は思いっきり叫んだ。骨折するなんて生まれて初めての貴重な体験だったが、できる
ことならそんな初体験は一生遠慮したかった。
「だーいじょうぶ。せいぜいひびだから」
何でこの人はにこやかにそういうことを言えるんだ。打撲だったのが重いものを持って走り回って疲労骨折した
とも言う。その原因はあなたです。
……はあ。治るのにどれくらいかかるんだろう。
「ま、とりあえず治してやるから落ち着きな」
そう言ってミモザは目を閉じ、意識を集中させ――
- 391 :クロベ ◆JNf/CxpPRk :2006/02/03(金) 14:14:01 ID:JcG7/gop0
- 「ホイミ」
その途端、真っ赤になった私の足をぽわんと光が包み込んだ。みるみるうちに痛いのがとんでいって、あっと
いう間にいつもどおりの健康で貧弱な足に戻る。初めての骨折の全治はものの数秒だった。
「うん、すっかりいいね」
さっきまで患部だったところをぴしゃりと叩かれたが、鈍い痛みはちっとも感じない。本当にすっかりいいようだった。
そういえばのどの渇きもさっきよりましになった。疲れも取れているようだ。
「すごい……魔法みたい」
「魔法だよ」
ぽかんと口を開ける私にそう言って、ミモザは「それも知らないのか」と呆れ顔をした。この世界ではどうやら魔法は
周知の事実のようだ。……すごいじゃん。
「どうやるんですか? 私にもできる?」
「まあそれは町に着いたらね。はいこれ」
尊敬と興味に目を輝かせて質問攻めをする私に、ミモザは草むらに放られたままの荷物を預けた。
見え始めた町の灯が、遠くで私を笑っている。
クロベ Lv1
フリーター
HP 17/17
MP 0/1
E ひろったえだきれ
E ピーコート
- 392 :松田侑之臣 ◆jaF8vkSwkU :2006/02/03(金) 17:20:26 ID:PzeX+v2b0
- >>384-386
住人の皆さん本当に御免なさい。
もっと勉強します。
- 393 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/03(金) 18:30:54 ID:KzzaFc+i0
- >>392
投稿形式を見直すと良いと思う。
一回に送信する量が三行程度なのも読みづらい原因、他の職人さんは
少なめでも一回に15行程度は送信してる
同人作家の駄目男がドラクエ世界にという発想自体は悪くないんだし
- 394 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/02/04(土) 01:11:36 ID:fLUh4mTr0
- 今北
4の人凄杉。別次元。
一字一句噛み締めるように読んだ。
何気に>>352 GJ!
>>クロベ
面白くなってきた。
続き楽しみにしてる。
>>松田侑之臣
ガンガレ
新人は大歓迎
- 395 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/02/04(土) 02:42:08 ID:x/DjKyan0
- ここからトリップが変わりますが、同じ人物です。
紛らわしくなってしまって申し訳ありません。
- 396 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/02/04(土) 03:01:43 ID:x/DjKyan0
- >>380続き
レーベの村に入り、辺りを見渡す。
当然だが、アリアハンとは違い、家や施設が数軒あるだけの小さな村だ。
宿に入り、食事をしながらアモスと話す。
「明日は朝一で洞窟に向かうぞ」
「洞窟?塔じゃないのか?」
「塔に入るには岬の洞窟って言う所を抜けないと行けないんだ。その先が
塔につながっているんだ」
「そうか・・・どんなモンスターがいるんだろうな・・・」
「そりゃ行ってみてのお楽しみさ。明日に備えて早く寝るぞ」
アモスと別れ、自分の部屋に入り、服を替えてようやく一息つく。
ゆっくりと今日の一日を振り返る。
オレは、この世界でルークと呼ばれる男に乗り移ってしまったようだ。
まだ元の記憶は戻りそうにない。
まあ、その内に記憶も戻って元の世界に帰る方法も思い付くだろう。
楽天的な考えをしている内に、いつの間にか眠りについていた。
- 397 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/02/04(土) 03:20:18 ID:x/DjKyan0
- 次の日
「ガンガンッ」
と大きな音がする。うるさいな・・・
「いつまで寝てんだ。とっくに朝だぞ」
ようやく目が覚めた。
そうか、ここは異世界で・・・
昨日の事を思い出す。そうだ、朝一って言ってたな。
慌てて準備をして外に出る。
アモスは腕を組んでイライラした表情をこっちに向けてくる。
「いつまで待たせるんだ。急がないと日が暮れちまうぜ」
「悪かったよ。行こうか」
「代金はお前が払え」
いちいちセコイ奴・・・
とは思うが、それでこいつの気が済むならいいか、と思って代金を払う事にする。
町を出て、南に向かって進み、険しい森の中へ入る。
何度かモンスターと遭遇したが、昨日の敵と同じような奴だ。
楽勝でなぎ倒し、先へ進んでいく。
しばらく進むと大地に大きな穴が開いていた。
洞窟の入り口のようだ。アモスに続き、中に入る。
- 398 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/02/04(土) 03:38:07 ID:x/DjKyan0
- 嫌な臭いはするが、思ったよりは明るい。
道は枝分かれしているものの、そんなに複雑ではない。
角の生えたウサギのようなモンスターなども襲って来たが、そんなに
苦戦する事はなく進んで行く。
狭い道を抜け、大きな部屋にでた瞬間、思わず息を飲んだ。
部屋の先に人間が倒れていた。冒険者らしき格好をしている。
アモスが近寄っていき、顔を覗き込むと
「死んでいるな・・・まあ、こんな所で力尽きるような雑魚は
最初から来るなって事だ」
そう言いながら死体の荷物を探る。
「何してんだよっ」
思わず声を荒げて非難するが、
「みりゃ分かるだろ。死んだらあの世には持って行けないんだ。生きてる
人間の役に立った方がコイツも浮かばれるさ」
と言いながら、再び探る。
- 399 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/02/04(土) 03:54:14 ID:x/DjKyan0
- 「おっ、財布か・・・ちっ、200Gかよ。武器は・・・こん棒かよ、
こんな物はかさばるだけだな。行くぞ」
「このまま放っておくのかよ。せめて埋めて葬って・・・」
「アホか?無駄な時間と体力を使ってどうすんだ」
吐き捨てるように言い、先へ行ってしまう。
胸がムカムカしてくるのを感じる。
冒険者としては、あいつが正しいのだろう。
それにしても、今の死体に対する行動は・・・
本当に行動を共にしてて大丈夫なのか?
迷ったが、こんな所で取り残されるわけにはいかない。
先に行ったアモスを追う。
ようやく追いつき、先に進むとひときわ大きく、長い階段がある。
階段を上った先には、これまでと違った景色が広がっていた。
- 400 :オルテガ ◆zYgagV2g.w :2006/02/04(土) 03:55:07 ID:x/DjKyan0
- つづく
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