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もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ :05/03/15 05:33:29 ID:NA3D0HzS
どーするよ?

250 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 20:47:03 ID:uS7qrlJy
>>250
伏線は張ってあった、と思う
いや、俺もあってるかどうか分からんけど

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 21:00:15 ID:vIG2MhsT
ここは黙って待つのが吉

252 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 23:28:23 ID:DUKWxLE7
スレタイの日本語がおかしい件について

253 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:20:50 ID:8aXVJPB1
夜の帳が降りた海は怖い。
まるで、闇が蠢いているかのように俺には思えた。
いや、これは比喩ではないな――本来、夜の闇は動いたりしない。だが、確かに船の縁から見える黒はゆらゆらと蠢いているのだ。
海は海である筈で、夜の闇とは別なのだけど、では海もまた闇を所持しているのだろうか。
俺は所在無げに船員結びの練習をしていた。
目の前には、舵を操作しているトルネコがいる。
このトルネコという男に、俺は同じ匂いを感じ取っていた。
即ち――足手まといの匂いを。
と、マーニャに言ったら思いっきりバカにされた。
船の所持者で商売に長けてて道具の鑑定能力があって宝を見つける感覚に優れている相手と勝負する気かと。
俺はごもっともぉ!と叫び、信長に仕えるサルのように平伏した。
どうやらこの船でのヒエラルキーは

頂点:マーニャ、アリーナ
第一層:ソフィア、ブライ
第二層:ミネア、クリフト、トルネコ
最下層:俺

と、なっているらしい。さて、練炭はどこにあったかな…。
新参たちにも余裕で抜かされていく己に絶望しながらも、考えてみるとそれ自体はいつもの事だったので、
あっさりと立ち直る。
妙な所でタフネスを発揮した後、できた結び目をトルネコに見せた。

「お、良いですね」

トルネコは、一度しっかりと結べているかを確認した後、簡単に解けるかの試行をする。
はらりと無くなる結び目に、合格です、と笑みを浮かべた。
俺は引きこもり体質な為、人見知りが激しいのだがトルネコとはここ何日かでようやく普通に接せられるようになってきた。
このトルネコという男、ホフマン並かそれ以上に――できた男、というか。人の良い男というか。
いわゆる、商売に向いていそうな性格にはとても思えなかった。

254 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:21:47 ID:8aXVJPB1
「ねぇトルネコさん。ミントスを出てから、マーニャとミネアの様子、ちょっと変すよね」

いくら人が良い男が相手だとはいえ、彼は三十路を越える恰幅のいいオヤジである。
しかも、なんと妻に子供までいるらしい。
――つまり、非童貞ってことだよ!!もうだめだ。この人には絶対に敵わない('A`)
一度でも、同じ足手まといじゃないかなどと思った俺が間違っていましたぁ!!!
物凄い劣等感と、目上の相手にはそれなりの言葉遣いをという常識が相まって、敬語とは言えない体育会系用語で話しかける。

「んー……。そうですねぇ。ええ、私もそう思います」

同意を得られた俺は、やっぱりそうなのかと少し考え込んだ。
現在、俺たちはミントスの町から船で西に進路を取り、キングレオと言う名の城を目指している。
パデキアの洞窟でブライの言っていた娘と遭遇した後、彼女を尻目に首尾よく種を手に入れた俺たちは、ソレッタに戻り村長(実は国王らしいが俺は認めていない)にパデキアの種を渡した。
村長がパデキアを植えると、まるでジャックの豆の木のような非常識さでパデキアは成長した。
まあ、あれは物語だから許される訳だが…。
成長したパデキアの根っこが薬になるという事で、分けてもらった俺たちは急いでミントスに戻る。
洞窟で遭遇した娘、アリーナ(姫らしいが俺はこんなおしとやかでないお姫様は認めない)が何故か先に戻ってきていたりもしたが、
とりあえずはパデキアの根っこをクリフトに飲ませる。
煎じもしないで無理矢理飲ませようとしたアリーナとマーニャには、絶対に看病してもらいたくないなと思った。
いやいや、そんな心配はいりませんなwww自意識過剰wwっうぇwwwそんなシチュエーションはありえないwww

「お恥ずかしい…姫様を守るべき私がこのような有様だったとは…」

パデキアの効果は絶大で、クリフトの容態はみるみる良くなった。
ふと思ったんだが、クリフトを殺して生き返らせるってのはダメだったんだろうか?
…いや、もし俺が病気になって面倒だから殺して生き返らせよう!って言われたら泣いちゃうけどさ。
――しかし俺たちは、時に人道を無視してでも成さねばなならぬ事があるのではないだろうか!
今では無い事だけは確かだがー。

255 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:22:32 ID:8aXVJPB1

「いいのよ、クリフト。こうして無事治った訳だし…。さ!デスピサロを探す旅を続けましょう!」

――デスピサロ。
その名を聞いた途端、ソフィアが反応した。
それは声無き声で、宿屋の一室に居た全員を凍りつかせる。
デスピサロ。デスピサロ。――――デスピサロ。
なんと不吉な名前であろう。
何が不吉かなど解る必要は無い。この、ソフィアという優しく明るい少女に此処までの変化を促すという、ただそれだけで十分だ。
畏怖と、そうして僅かばかりの嫉妬を覚える。

「…どうかしたの?」

全員が息を呑む中、かろうじて沈黙を破ったのはアリーナだった。
俺も飛んでいた意識を取り戻し、差し障りの無いように説明する事にした。
ソフィアの居た村が魔物に襲われ、その魔物を率いていた者の名前がデスピサロと言うようだ、と。
喉が、異常に渇いていて喋り難い。

「じゃあ、ソフィアもデスピサロを!?」

「…以前、勇者の住む村がデスピサロに滅ぼされたそうです。もしや、ソフィア殿が…」

そう、ソフィアはずっとデスピサロを追ってきていたのだ。
彼女は喋れないから、ことさらにその意思を主張するような事は無かったけれど。
魔物たちが敬称をつけて呼んでいた存在。
そして、アリーナ達もまたデスピサロを追っているらしい。

「…そうだったの…。うん!よし、じゃあ一緒に探しましょう!旅は多い方が楽しいしね!
3人だろうが9人だろうが変わんないし!」

256 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:30:57 ID:8aXVJPB1
ブライが、姫、パトリシアは馬の名前ですから8人と1匹ですぞとツッコミをいれる。
いや、ツッコミいれる所はそこなのか?…俺はちらりとミネアに視線を走らせた。眼で、良いのか?と訊ねる。
占い師の娘は小さく頷いた。
――つまり、そういう事。
これは偶然なのだろうか?それとも――運命とでも言うのか?
ミネアならば、それで納得するかもしれない。マーニャは懐疑的だろう。トルネコはどうだろう?
何に対する疑惑かすら解らない疑念に囚われていた俺を、突然の来訪者が呼び戻した。

「お待ちください!悪いことだとは思ったのですが立ち聞きをしてしまいました。
ソフィア様が世界を救ってくれる勇者様だったとは…。
以前、この宿に泊まったライアンという者が勇者様を探していたのです。
確か、ライアン殿は遥か西の国、キングレオに行くと申しておりました……」

こうして俺たちは再び船上の人となり、新たなる戦場を目指している訳である。
……。今のはね!船上と戦場を(略
それにしても、キングレオに行くと決まった時からマーニャとミネアの様子がおかしい。
なんだかんだ言ってあの姉妹と付き合いが長いのは俺とソフィアだし、聞くべき事は聞いた方が良いのかもしれない。
俺はマーニャとミネアを探す前に、予めブライに今日の魔法の授業は休みたい旨を伝えることにした。
ミントスの町でブライが一行に加わってから、俺はずっと講義を受けている。
マーニャの抽象的な教え方とは少し違ったより理論的な話らしいのは解るのだがやっぱり難しい。
俺がブライの部屋を訊ねると、中から話し声が聴こえてきた。

「だから……の……圧縮……」

「氷結系は……あくまで……振動を……参考にはなるかもしれぬが……」

「いいから教えなさいよ!」

所々聞き取れなかったためと、扉をノックするため近づいたのだが突然の大声に俺は口から心臓を吐き出す。
いや、吐き出しそうになる位ビックリした。
その為、続いて開け放たれた扉を俺は避ける事ができない。

257 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:31:58 ID:8aXVJPB1
「ぎゃっ」

低い鼻が更に低くなる不幸を実感する。
マーニャは、鼻を抑えてうずくまる俺を見て一瞬、すまなそうな顔をしたがすぐに、

「――何やってるのよ、邪魔よ。……ああ、あんた、なんかすっかりあのお爺ちゃんに師事しているようね。
ふん……ま、私だって別に好きであんたなんかに色々教えてた訳じゃないしこれで清々するわ。もう二度と私にものを訊ねるんじゃないわよ!!」

一方的に怒鳴り散らしたあと、ずかずかとその場を立ち去るマーニャに、
俺は呆気に取られてしまってぽかーんと見送ってしまった。

「大丈夫かの?」

部屋からひょっこりと顔を覗かせたブライに、俺は何があったのかを訊ねた。

「ふむ。いやなに、炎を更なる密度で圧縮する法を問われたのでな。…あの小娘がワシにものを訊ねるなど明日は雪かもしれぬのぅ。
まあ知っての通りワシは氷結の呪がメインでな。その前置きをした途端、あれじゃよ」

258 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:32:28 ID:8aXVJPB1
むー。マーニャらしくない…事も無い気がしてアレだな。気分屋だからなあ。もしかしたらあの日とかか?
とりあえずは、ブライにマーニャとミネアの様子を見る旨を伝えると、すんなりと講義の欠席を許可してくれた。
普段はやれ炎は雑だとか年寄りの冷や水だとかで言い争っているブライとマーニャだが、
やはりというか、それ故にというか、どちらかの様子がおかしいと困るものなのだろうか。
ブライは病み上がりの為に念の為にまだ安静にしているクリフトの様子を見に行った。
船の中を歩く途中、先ほどの一件からマーニャに出会っても話もしてくれないかもしれないなと考え、途中でソフィアを引っ掛ける事にする。
勇者様が一緒なら、無下にはできまいという打算である。
ソフィアの部屋を訪ねると、彼女はアリーナと一緒に何やら遊んでいるようだった。
何やら示し合わせたように笑い合う。
俺はそれを見て、小学生の頃俺が教室に入るとクラスメイトがこちらを見てクスクスと嫌な笑いを漏らしていたシーンを思い出した。
背中に嫌な汗が浮かぶ。だがその汗も、ソフィアが目の前に来て『どうしたの?』と小首を傾げると、すっと引いてしまった。
アリーナもその隣でにこにことしている。ソフィアもアリーナも、とても良い子だ。
彼女たちの笑顔に悪意は感じられない。俺は嫌な思い出を頭を振って隅に追いやる。
事情を説明すると、ソフィアだけでなくアリーナもついてくると言い出した。
まだ行程を共にして日が浅い、というのを逆手に取り、よりお互いを知る方が良いと言うのだ。
その尤もらしい台詞に、俺はつい首肯してしまう。

マーニャの部屋を訪ねてみたが無人だったので、ミネアの部屋を訪ねてみる。
はたして、そこにはジプシーの姉妹が揃っていた。

「……はん。若い子二人も侍らせていい気なものね」

259 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:38:42 ID:8aXVJPB1
マーニャの開口一番がそれだ。俺だけじゃなく、ソフィアやアリーナに対しても失礼なその台詞に、俺は失望感を覚える。
面倒だ。今のマーニャは周り全てが敵に見えているのだろう。
俺はこの手の煩わしい事が大嫌いだった。
例えば、悲しげに説得する。例えば、怒鳴りつけて相手を諭す。
そのどれもがまるで滑稽だ。
そもそも、様子を見るなんていうのが間違っていたんだ。俺は、そういうキャラじゃない。
家族が相手だろうが、友達が相手だろうが、他人の悲しみを共有するのは俺には辛過ぎる。
自分のそれだけで手一杯なのに、どうして他人のそれまで背負う事ができるんだ?
苛々する。
まるで世界の不幸全てを背負ったような顔をするヤツを見ていると。
俺だって――俺だって、こんな訳の解らない世界にいきなり放り出されて――。

――いや、違う。

俺は、俺の事情を誰にも話していない。話した所で理解してもらえるとも思えないし、逆に警戒されてしまうかもしれないから。
だから、他人に俺は理解できない。それは仕方の無い事だ。俺の責任である。
俺が理解されない事なんて、今はどうでも良い事だ。こっちの気持ちも知らないで――それは、子供の理屈だ。
だけどどうしても辛い事があると――そう、思ってしまう事は誰にでもある事なのかもしれない。

「マーニャ……。話してもらえないと、俺たちには何も解らない。
あんたたちにとっては、余程の事なんだと思う。だけど、アリーナを、ソフィアを見てくれ。
俺に対してならまだ良い。だけどこの子達には、あたらないでくれよ」

「…………」

長い沈黙。
そうして暫く経った後、ミネアがマーニャの肩に手を置いた。

「姉さん。話すわね、キングレオでの事」

マーニャは肯定も否定もせずに、くるりとこちらに背を向けた。
それをミネアは無言の肯定と取ったのか、彼女は一歩前にでて、ゆっくりと語りだした。

260 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:41:19 ID:8aXVJPB1
「私たちの父、エドガンは錬金術師でした。父は、研究の途中偶然にもある発見をしました。
進化の秘法、と呼ばれるそれの具体的な内容は私も、姉も解りません。……父はそれをよくないモノと判断し闇に葬ろうとしました。

ですが……弟子であったバルザックに父は殺され、進化の秘法はバルザックに持ち去られてしまいました。
……私たち姉妹は父さんのもう一人の弟子だったオーリンと一緒に、父さんの仇を討つ為にバルザックを追い詰めたのですが……。
……あいつは、進化の秘法でキングレオの王子に取り入っていました。王子はまるで魔物のような力を手に入れ、
クーデターを起こし父王を幽閉しました。
……バルザックを追い詰めるのでへとへとになっていた私たちはキングレオの王子――今は、王ですね――に敗れ、
牢屋に放り込まれました。同じく幽閉されていた父王の協力もあって、何とか脱出できたのですが……その時に、オーリンが……」

一度言葉を切り、視線を斜め下へと落とす。
敗戦の記憶、仇を目の前に、逃げ出すことしかできなかった思い出。
そうして、大事な仲間を置き去りにした悔恨――。

「私たちはハバリアの港が封鎖される直前に船に乗り込み、エンドールへとやってきました。
そして…勇者様に出会う事ができたのです」

落としていた視線をソフィアに向ける。
その瞳には、年下の少女に対して一種の崇拝のようなものすら見て取れる。

「今度は、負けません。ソフィアさんに加えて、導かれし光の持ち主が6人も集っているのですから」

軽くトリップするミネア。当然、そこには俺は入っていないのだが仕方が無いか。
ミネアは決して悪い人間ではないし、普段は俺に対してもとても暖かく接してくれるのだが――。
こと、この予言めいた導かれし者たちの事になると、少し他に何も見えなくなるようだ。
それにしても…この姉妹も、仇討ちが主目的だったのか。
ソフィアもまた、仇討ちをする理由は十分だし、サントハイム組はどうなのだろう?…サントハイムの良い噂は、正直な所一度として聞いた事が無いのだが…。
トルネコはそういったものとは無縁なのか。後は俺もだがまあ、俺の事は置いといていいだろう。

261 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:42:34 ID:8aXVJPB1
俺はちらりとソフィアへと視線を転じた。
何処か、張り詰めたような雰囲気。ソフィアはいつも真面目で、期待されればそれに応えようとする。
俺にはそれが少しばかり危うく見えるのだ。
言うべきか、言わざるべきか。だが、この機会を逃してはこれから先いつ話せるか解らないから。

「なあ…あのさ――」

「ミネア。ちょっと勇者ちゃんに依存し過ぎ。これは、結局私たちの問題なんだからね」

突然、マーニャが割り込んできた。俺の台詞が…!

「とはいえ、多分手伝ってもらう事にはなる、かも、しれないけど、ね。ま、その時は頼むわ」

「OK、任せといて!悪党をのさばらせておく訳にはいかないし、そこそこ強そうだしね。腕が鳴るわ…!」

アリーナの場合、多分戦えれば何でも良いんだろう。俺はいつ彼女がオラ、わくわくして来たぞ!と言い出すかと気が気でない。
そしてマーニャは――やはり、彼女は彼女だった。
女性陣の中で一番年上で、一番大人でもある。いつもはだらしなく、ミネアに怒られてばかりだが、決して気遣いが無い訳では無いのだ。

「ソフィアさん、ごめんなさい。…本当に正直な話をするなら、私たちは私たちの仇討ちにソフィアさんを利用しようとしているのかもしれません。
いえ、事実そういった側面があるのは間違いない事ですから…」

ミネアの謝罪の言葉に、ソフィアはふるふると頭を振った。
そうして、足りない言葉の代わりにミネアの手を取り、しっかりと握り締める。
俺は、彼女の心境を代弁する事にした。

262 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:49:13 ID:8aXVJPB1
「エンドールであんたたちに会えなかったら俺とソフィアでどうなってたか解んないしな。
それに、ソフィアにしてみれば持ちつ持たれつってとこもあるかもしれないし…。
ま、俺は勇者だなんだって言ってまだ小娘のこいつによっかかるのはどうかねえと思ってたけど――けど、ま、あんたたちはそれだけじゃない」

ミネアが、目頭を指でそっと拭う。
俺はその仕草にみっともなくうろたえた。いかん、何かおかしな事を言ってしまったのだろうか。

「ミネアを泣かしたわね…全く、私の下僕の癖に最近調子づいてない?
あんた、今度から私の事もちゃんと師匠(マスター)って呼びなさいよ。あのお爺ちゃんにだけ先生だなんてつけるのはずるいわ」

いつから俺はお前の下僕になったんだとマーニャと口論が始まる。
最初から結果の見えてる戦いだ。マーニャはヒヒヒと笑いながら俺を煽るし、俺は俺で少しばかりムキになっているフリをする。
そんな餌で俺が釣られクマー!と言うヤツだ。
それを見てソフィアとミネアが笑い、アリーナもまたその『お約束』を理解する。
そう、こういう関係。俺は、少なからず居心地の良さを感じているのかもしれない。


HP:58/58
MP:24/24

Eはがねのつるぎ E鉄のまえかけ Eパンツ

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/21(木) 03:42:14 ID:aPfZleI1
携帯から毎日拝見させていただいてまつ。もう、神ですな(;´д⊂ こんなに毎日みるのが楽しみなスレははじめてよ。

264 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/21(木) 07:18:16 ID:N3lS3HmZ
だいぶレベルが上がったねー

265 :宿屋inDQ8 ◆nnvolY11AA :2005/04/21(木) 20:18:58 ID:YY2M+cvq
トラペッタを出た俺は、日が暮れる前を目標にリーザス村を目指していた
道中、半分羊のようなキモイ人間が殴り掛かってきたが慣れない手つきながらも
ひのきの棒で殴りつけ、何とか進む事が出来た。
が、そんなへたくそな戦闘のせいで日没まで1時間足らず、というところまで来てしまった
ようやくリーザス村に辿り着いた時には、既に辺りは暗くなっていて20:00くらいになっていた(そっちの世界でだが)

門の前に差し掛かった時何やら馬車が止めてあった
身分の高い奴でも居るんだろうか・・・俺は金持ちとゴキブリが大嫌いなんだ。全く・・・
中には従者のような奴が居るようで、中からトンカチで金属を叩く音がした。何をやってるんだろうと俺は、中を覗いてみた

!!!

あわわわわわ・・・・ナメック星人が鍋を叩いてるよ・・・意味不明・・・
「これだけでも持って来て正解じゃったかもしれんな・・・
あのようなことが起きても、チカラが残ってるとは先代も良い物を手に入れたのう」
と、独り言を言ってるところからすると年老いてるようだ
・・・って何、冷静にコイツの観察をしてたんだ!

関わらない方が良さそうだな・・・
そう思って村に入ろうとした瞬間───
「ん?何の用じゃ?」

も  し  か  し  て  俺  で  す  か  ?  そ  う  で  す  か


HP16
MP 3

習得呪文
ホイミ

Eひのきのぼう E皮の盾 E私服

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/21(木) 23:45:38 ID:Fx0zKn5C
>>265
イイヨイイヨーすごくイイヨー

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/23(土) 06:03:26 ID:shVBQeOw
いろんなドラクエの世界が見れイイネ(*´Д`)
できることなら、Vの宿屋で目覚めたい。
そして遊び人になってルイーダに昼間から入り浸り、でも結局することないから
掃除なんかしちゃってね。勇者様からご指名かかるまで、毎日をマターリ過ごすのさ。



  
        ああニートがうらやましい・・・orz


268 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/23(土) 14:56:28 ID:yiM0PNw5
馬鹿だな
ニートなんて煮ても焼いても食えない金のかかる家畜みたいなもんだ


269 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/23(土) 21:23:24 ID:wHmVP2LX
>>◆gYINaOL2aE
みんなが生きてる。それだけで俺はこんなにも嬉しい気持ちだ。

>>◆nnvolY11AA
まだなんとも言えないけど、それぞれのドラクエ、楽しみにしてる。頑張れ。

270 :宿屋inDQ8 ◆nnvolY11AA :2005/04/24(日) 09:44:25 ID:xEqL1zoU
振り向いて下をみると、緑色の魔物が目の前に居た。何時の間に・・・
「見慣れない格好の者じゃな。察するにお前はこの辺の者ではないな?」
喋る魔物も居るもんだな・・・弱そうだから少し話を聞いてやるか
てか、周りから変に見られてたんだな、俺って・・・
まぁ、俺の本来の世界の格好だから奇妙な格好にも見えるのはおかしくないだろう
更に魔物の言葉は続き
「旅の者なら、一つ聞きたい。この辺に道化師のような格好した奴を見なかったか?」
道化師?あぁ、ピエロみたいな奴ね。
「いや、見た事が無い。それよりお前は何なんだ?
村の前で常駐して、お前みたいな魔物が村の近辺に居たら傭兵かなんかに襲われるのがオチだぞ?」

どうやらこの魔物はトロデ──トロデーン城という城の城主らしい
元々は人間だったが、道化師──ドルマゲスという魔法使いによって、この様な姿になったらしい
城もそいつのかけた呪いにより人々がイバラとなり、魔物の蔓延る城に化したのだそうだ
さっきまで気づかなかったが、馬車に繋いである馬もじつはこのおっさんの愛娘で
トロデーン城と同じような大きな城の王子と結婚する筈だったらしい
それで生き残った兵士エイトと道中で出会った山賊と旅をしているらしい

あまりにも言ってる事が生々しいので、俺も嘘とは思えなくなってしまった
そして、とても彼らが哀れになってきた
俺にはバトルレックスを倒すという目標があった
しかし、それは単なる憎しみに駆られた復讐ではないのか?
倒しても何になる?───小さな満足感に浸るだけだろう。
生物を殺す、この行動を楽しみにしていた自分を想像したら自分が怖くなってきた
宿の寝床に就いた俺は、イバラ化した人間を想像して中々眠る事が出来なかった

周りに迷惑をかけるかもしれないが・・・・
どうやら新たな目標が出来たようだ───



271 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 13:30:32 ID:V5YC8S0E
携帯から参加…。病院に入院してんで暇で…。下手でも書いていいですかね?

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 14:08:00 ID:xBnPMGBE
>>271
病院からDQ世界へ……
いいじゃない!レッツゴーレッツダイヴ!!

273 :いちおDQ3 :2005/04/24(日) 15:36:44 ID:V5YC8S0E
目の裏側の網膜に蒼い光が散ったような気がした。
それは赤になり緑になり様々な光の共演をみせる。美しい。
と、唐突に周囲が色彩を帯びる。光が白い−
目の前には木で出来た天井があった。ここは−どこだ?
体をおこす。病院で寝てたままの、パジャマ姿。腕には、点滴が入れやすいようにと埋め込まれたままのチューブがあった。
と、窓の外に目をやると城が目に入った。なんだ?インド系?拉致?
テンションが上がって思わず舞をおどってみる。足を挫く。痛い。
まだ入院してなきゃいけない体だ。体力は回復してないらしい。それはそうかと納得してみる。夢にしてはリアルだ。
先ずは現状把握か、とりあえず部屋を出る。
下に降りるとオヤジさんがいた。目があった。筋肉隆々な相手にはへりくつだるのがアイデンティティ。へこへこキョドりながら頭をさげてみる。
「おはようございます、今日は良い天気ですよ。勇者アレルの旅立ちに相応しいね。」
…はぁ?!勇者って…。あなた大丈夫?…とは口がさけても言えないチキンな俺。
城の方から歩いてくる一団が…いる。

274 :いちおDQ3 :2005/04/24(日) 15:37:44 ID:V5YC8S0E
…書いてみると神の凄さがわかりますね。
すごいなぁ。腐った文ですまんです。

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 17:05:00 ID:ncYjjApN
>>274
いい感じだよー。
ガンガレ!!(入院生活も)

276 :273の続き :2005/04/24(日) 21:50:34 ID:V5YC8S0E
先頭に立つのは黒髪の男。それを2、3人の兵士が護衛しているようだ。
彼がいわゆる勇者なのだろう。その存在感たるや!これがカリスマという奴なのだろうか。
道なりに進んでくる彼をじっと見ていたら、目があった。慌ててそらし、ちらっと見るという乙女心を出してみる。
「君は…?」
…おいおい、話しかけられましたよ!どうしよう。よりによって何故俺が…。
「見慣れない服装だね。どうしたの?」
透明な、声。
そうか、見慣れない服装で立ってジッと見てくる奴がいたら、目にもとまるよね。
カリスマが近づいてくるのに焦りまくり脱兎の勢いで逃げる俺。
とりあえず武器屋の裏まで逃げるのに成功した。

どうしたもんかね…。一人ごちる。とりあえず、俺は第三世界に放り出されたらしい。
帰りたい。授業始まったばっかりだし、彼女にも会いたい。親父とも仲直りしたばかりなのだ。
では、どうすればいい?彼の事が頭をよぎる。それでも、彼なら−−あんなカリスマを持つ彼なら−−何とかしてくれるんじゃないか。
甘い考えだ。結局は他力本願なのだ。
だが。この現状、この世界で無職となった俺が一人でなんとか出来るのか?
とりあえずは、彼についていこう。他は後で考える!
考えをまとめた俺は立ち上がった。兵士がルイーダが云々、酒場が云々言っていたのを聞いていたのだ。


277 :273の続き :2005/04/24(日) 21:52:04 ID:V5YC8S0E
酒場は町の西にあった。入り口を押そうとした時ふと考えた。
…なんて言ってついていこう。


石化した。


…取り柄は…平凡な運動神経しかない俺には無い。偏差値はそこそこあったが大学に入ってめっきりバカになった。
内職をする手先の器用さもない。…荷物持ちする体力もない。
どーしよー。

冷や汗たらたらになっているといきなり向こうから戸が引かれた。
「あれ、さっきの君…」
うわ、ご対面だ。
「あん?なんだこいつ?」
…筋肉ムキムキ、斧をかついだ男が後ろから覗く。
いつもの癖で逃げ腰になっていると、
「どうなさったのですか?」
二人の女が覗いた。一人は幼い感じの、優しそうな人。もう一人は釣り目のちょっとキツそうな人。


278 :273の続き :2005/04/24(日) 21:53:43 ID:V5YC8S0E
「訳ありみたいだね、話してごらんよ」
勇者が話しかけてくる。




とりあえず、現状を話した。その上で頼む。連れていってくれと。
まず反応したのは、筋肉。
「冗談じゃねぇ、俺らは魔王バラモスを倒そうって旅なんだ、遊びじゃねぇ。見た目強そうでもねぇし、呪文を使えるわけでもねぇんだろ?」
狐も
「魔法協会にもいなかったわね。呪文使いってわけないわ」
もう一人の優しそうな女は
「私たちの旅は危険なのです。ここ、アリアハンは福祉もしっかりしてますし、教会に行けば保護もうけられますよ」

…四面楚歌か。まぁ分かってはいたのだが、どうしよ。

279 :273の続き :2005/04/24(日) 21:54:22 ID:V5YC8S0E
モジモジしていると勇者が目を見つめているのに気がついた。
「不思議な目だね。僕らとは違う目をしてる。」

…勇者ホモ説急上昇!?わかったよ、何発だ、耐えてやるから連れてってくれ!…初めてだからやさしくね。

なんてバカな事を考えているうちに勇者は三人を振り返って言った。
「僕らはこれから今まで誰も成し得なかった、魔王を倒しにいく。彼は異世界から来たのだと言う。これはルビスの導きかもしれない。ルビスの使途に無下な態度はとれないよね?」
…なんか話が大きくなってる気がする。…三人の俺を見る目が変わったような…。イヤな予感。慣れない視線。見知らぬ天井とくれば雨、逃げ出した後…逃げんのかい!
自分に突っ込んで妄想している間に話は進んだようだ。


「えぇと、君。僕らに力を貸してくれるんだよね?よろしく、僕、アレル。」
…なんか良く分からないが、連れていってくれるらしい、良かった良かった。


ここから俺の冒険は始まる−そして伝説へ−

HP.12
MP. 3
Eパジャマ

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 22:15:34 ID:V5YC8S0E
どーですかね。なんか神の凄さが良くわかりますた…

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 22:21:35 ID:GJrGkOzC
ホントですね

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 22:33:30 ID:xBnPMGBE
志村、点滴点滴ー!!

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 23:19:25 ID:Ph2OCKZe
>>281
まあそういうなよ
文才ゼロの俺からしたら十分神の領域だ

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 23:40:25 ID:GJrGkOzC
>>283
>文才ゼロの俺からしたら十分神の領域だ

まったくですね

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/25(月) 21:05:43 ID:qoLDxvPy
オレ コレ カナリスキ

いやまじで
続き期待してるよ

286 :DQ3 :2005/04/25(月) 23:58:34 ID:9Si9IUq8
「お前ってホントに取り柄ねーなー」
筋肉だ。名前はデニス。筋肉っぽい名前だ。

その筋肉を生かして代わりに薪わってくれよ。俺は頭まで筋肉詰まってねーんだよ、この○○○ヤロー。
…もちろん心の中で留める。




ルビスとかいうこの世界の神の使い疑惑は旅立ち三分で消えた。
青いゲル状の悪意ある物質との戦闘でいきなり瀕死のダメージを受けたのだ。
最弱らしいモンスターとの戦闘で死にかけ、泡をふく姿を見て、神の使いと思う奴はいないだろう。
気がつくと、青い髪の優しそうな女性に介護されていた。そこで呪文というものの神秘をみた。
一声発するだけで折れた肋骨も痛み無く繋がる。このごに及んでついていた点滴のチューブも引き抜いたが、あっと言う間に傷が塞がるのには脱帽だ。
癒しを与えてくれた女に俺は女神をみた。名前はスノウ。

287 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:02:24 ID:9Si9IUq8
とまぁ、奇跡を体験した俺はこれがこの世界を生きるのに必要な力と考え、女性陣に師事をもとめた。正直痛いのはイヤなので後方支援をば、という打算もあった。


で、今。俺は薪を割っている。
パジャマは余りの装甲のゲッター1さに勇者がお古の服をくれた。


ところで狐と筋肉はやはり性格が悪い。
俺をどうするか会議で、呪文を教えながら旅をしてやる代わりに、旅の雑務を全て押しつけられたのだ。頼みの勇者もニコニコ見ていたので女神にすがりついたが。
女神は料理はしてくれるが、荷物持ちと燃料、水の調達は俺の割り当てとなった。
女神に力仕事はさせるのは男としてのプライドが許さないので、やむをえないが…。


で、冒頭につながるわけだ。筋肉は奴のアイデンティティを行使せず俺をからかうだけだ。ムカつくよ、このバカ。イね。
…頭の中だけ龍になれる俺だった。


288 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:03:28 ID:ECHFbos3
で、雑務が終わると勇者と筋肉はチャンバラをはじめる。かなりの迫力で見ててあきないが、下手すると筋肉は狙いを俺に定めるので危険だ。一度木刀を受けた右腕が変な方にまがった事がある。まぁ、素人には以下略。

だから、俺は狐に呪文講座を習うことにしている。ムカつくが、こいつは論理的だ。語学における文法の様に、未知なるものを学ぶにはシステマティックに構成された論理を学ぶのが一番だと思う。

狐に言われたことを要約すると。
世界には魔力があふれている。これを自らの魔力を媒介に指向性なりなんなりを持たせ、言葉の力を借りて具現化する。これが呪文らしい。

魔力は正直まだ知覚できん。つか、カルトみたいでイマイチ…。だが、現に奴が火の玉や氷を出しているのをみると納得だ。百聞はなんとやら。

289 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:07:29 ID:ECHFbos3
次はひたすら集中の練習。呪文はこれが大事らしい。
女神の説法も同時に受ける。神聖呪文は神への祈りによって目覚めるとか。とりあえず俺は頭は柔らかいのでこんなもんかと受け入れた。

今日はいよいよ契約である。呪文にしろ神聖呪文にしろ、扱うには契約がいる。その代わり、これは身体の成長を蝕む。魔力というのを体に合わせ持つのは体に悪いらしい。

ちょっと迷ったけど、契約をする。狐と女神がやってくれた。
胸に痣ができた。星形なら誰かみたいでやがては時をとめる呪文を覚えたりして、とむふむふしてると、狐に火を投げられた。


…へっ?俺の右手が燃えている…。






思考回路が止まる。





確かにあんたは俺を嫌いかもしんないがなにをすんだと詰め寄ろうとしてはたと気づく。


290 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:08:30 ID:ECHFbos3

…熱くない…?!

「どう?気づいたかしら?それが、魔力よ」
…右手から透明な気流の様なものが出て皮膚と火の間に空間がある。

「ここ二週間の訓練であんたの中に魔力が生まれたのが分かってたの。だけど、自分の魔力を媒介に空間の魔力を集めるにはある種のカンがいるのよ。手っとり早いのはあたしがそこまでやってやること。さぁ、唱えなさい。火炎球の呪文を!」

おお!なんというか、腕が延びたような、見えない腕で空を掴むような感じがする。恐れ恐れ、昨日の授業で言われたスペルを叫ぶ!


291 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:09:29 ID:ECHFbos3
「メラ!」

右手から何かが迸る感覚。恍惚とする、それでいて高揚感で包まれる。






その結果、右手から放たれた火球は勢い良く筋肉にぶちあたった。





ちょっと、さすがにフライパンであんたの筋肉で殴られたら死ねるというかちょっとまっt





とりあえず女神の神聖呪文で助かる俺。これは殺人ではなかろうかと思いながら気を失った。



HP.10
MP. 8
E旅人の服 E荷物
呪文
メラ

292 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 00:15:17 ID:h6ukMeMD
ワロス

俺のこの手が真っ赤に燃える

293 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:24:18 ID:7aq4z8YB
大陸間移動を果たした俺たちソフィア率いるアリーナとマーニャの下僕たちは、船を港にはいれず接岸し、陸から港町ハバリアへ足を踏み入れた。
逸る気持ちを抑え、宿で一度休息を取る一行。
急いでキングレオに行かないとならないのも確かなのだが、いかんせん長い船旅は皆初めてで、疲労の度合いが半端でなかったのである。
俺も部屋に入るや否や寝る準備もそこそこにすぐにベッドに潜り込んでしまった。

そして、夜。

急に眼が覚めてしまった。
もう一度寝直そうと何度か寝返りを打つのだが、どうもいけない。
少し外の空気にでも当たってこようか――そう考えて外に出ようと、音を立てぬようそっと部屋の扉をあけ廊下にでる。
――目の前に薄ぼんやりとした人影がある。
すわ!?幽霊か!?
俺は内心ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブルしながら、それでも旅の間で少しずつついてきてしまった度胸のせいで、それが果たして何なのか確かめようと眼をこらす。
碧色の髪。
なんだ、ソフィアじゃないか。薄暗くてよく解らなかった。
こんな時間に、どうしたんだろう?
ソフィアは迷い無く歩き、やがて宿屋を出て行ってしまった。
俺は彼女が気になったのもあるし、どうせ外に出ようと思っていたのもあったので、なんとはなしに彼女について行く事にした。
適当なところで声をかけてもいいし、後ろから驚かせるのも良いかもしれない。まさかいきなり斬り殺されたりはしないだろう。アリーナなら危ないが。
彼女を追いかけ宿屋を出ると、既に町からも出て行こうとしている。
慌てて後を追う。だが、歩調がかなり速い為か中々追いつけない。
町の近くとはいえ、一歩外に出てしまえばそこではいつ魔物に襲われてもおかしくない。
そしてこの辺りの魔物はエンドールやコナンベリー、ミントスの魔物と比べてもかなり強いのだ。
俺たちもまた少しずつ強く(或いは慣れてきているだけか?)なってきているのだが、まるでそれに比例するかのように魔物もまた強くなっている。
不安に襲われた俺は、彼女に声をかける事にした。



294 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:25:06 ID:7aq4z8YB
「おーい!ソフィア!」

だが、彼女の足は止まらない。
何故だ?聴こえていない筈はないだろうに――。
一度戻るべきか?多少迷うが、此処で彼女を見失ってしまえば例え戻ってミネアやクリフトに相談しても迅速な対処はできないだろう。
意を決して、一人でソフィアの後を追う。
幸いなことに――彼女の目的地はさほど遠くないようだった。
やがて見えてきた建物――あれは、祠だろうか?――に、その小さな姿が飲み込まれていく。
俺も慌てて彼女の後を追った。

「おわ!?」

するとどういう訳か入り口近くで立ち止まっていたソフィアに軽くぶつかってしまった。
そこで初めて俺の存在に気づいたかのように、ソフィアはひどく驚いているようだった。
俺が、宿屋から出て行く姿が見えたから追ってきた、途中で呼びかけたがそれも聴こえていないようだった旨を伝えると、
ソフィアは首を傾げて、俺の声は聞こえなかった、代わりというかなんというか、誰かに呼ばれて此処まで来たような気がするがよく覚えていない、との事だった。
もしかして、罠だろうか?
顎に手を当てて考え込む俺に、ソフィアはそういう嫌な気配は余り感じない、と言う。
…大丈夫だろうか?
未だ迷っている俺を尻目に、ソフィアの方はこの建物自体に興味津々と言った様子だった。
彼女は出会った時から好奇心が旺盛で、新しい物や場所にはとても関心を示す。
――だが、好奇心は猫をも殺す事もある。
まあ、そうならないように俺が見守る事ができれば良いのだが、残念ながら俺はまだまだ守られる側である。
…差は詰まる所か余計に開いている気もするがー…。
俺がまた内面世界に引き篭もっている間にソフィアの方はきょろきょろとしながら前進している。
俺は再び彼女を追った。

295 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:25:57 ID:7aq4z8YB
建物自体はそこそこの大きさがあるようだった。
高さも横幅も俺が知っているような家々のものとは違い大分大きい。どちらかというと、祭壇のイメージだろうか…?
建物の中央に、眼の高さ位まである十字の塀の中で一際大きな炎が赤々と滾っている。
とりあえず、火の大きさだけで俺の身長以上あるわけだ。
そして中央の炎を守護するように――或いは寄り添うように、7つの少し小さな、それでも十二分に大きな炎。
そもそも何が燃えているんだろうか?こんな所で炎を焚いている理由はあるんだろうか?
疑問は尽きないが、魔法が実在する世界でそういう事をあんまり気にしてもしょうがないかもしれない。と、最近達観してきている。
…思考停止だな。これは危険な気もするが…。
俺たち二人は、その何とも言えない不思議な空間に眼を奪われつつ、ぐるっと回り込み奥を目指した。
ソフィアの足が止まる。俺がどうしたのかと彼女の視線を追ってみると、そこには1つの人影が見えた。

「ようこそ。此処は、お告げ所。神のお告げが降る聖なる祠」

こちらが誰何の声を上げる前に、人影が語りだした。
声の雰囲気から察するにどうやら女のようだが。
俺とソフィアは一度顔を見合わせる。

「バトランドの戦士ライアンが、勇者を捜し求めてやって来たのです。
神の示された勇者の姿をライアンに伝えておきました。
光が一段と輝きを増しています。やがて、出会いの時が来るでしょう」

一方的に叩き込まれる情報に俺たちは軽い先制パンチを食らった気分だ。
というか、オラクルマスターはミネアだけで間に合っている。

296 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:31:53 ID:7aq4z8YB
「神って、なんすか?」

「神は、神です。全知にして、全能なる存在」

「本当にいるの?」

「いますよ」

「見た事あるの?」

「ありません」

「じゃあ、いる事の証明はできないんじゃね?」

「私には神の声が聴こえます。それに、存在するのですから、それは存在するのです」

淡々とした応答。うぐぅ、よく解らん。
俺はとりあえず一度質問を変える事にした。

「全知って事は、何でも知ってるの?」

「そうです」

「じゃあ、俺の事も知ってるんかな?」

「貴方についての神の御意思は量りかねますが、神が知りえぬ事はありません」

297 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:33:08 ID:7aq4z8YB
ふーん…?
どうも眉唾物の話しだが、仮に実在するとしたら神様とやらに会えれば元の世界に戻れるかも…?
しかし、なあ。全知全能ならもっと色々やって色々良くしてくれりゃいいのに。って、俺も抽象的過ぎるか。
少なくとも――ソフィアにこんな過酷な運命を背負わせる事は無いんじゃないかと思う。
それとも、神とはそういうものなのだろうか?存在するにしろ、しないにしろ。
あんまり良いイメージが無いな。神様とやらには。
いやまあ、神様に罪があるとするならその存在自体が罪だって事になっちまうし、それはあんまりかもしれないが。
カルトにしろ、原理主義にしろ、神の名を盾に好き勝手やるのがいるとなあ。
俺の世界の宗教はイデオロギーの面が強すぎるし――神がいつも見ていると説かないと己を律する事ができない奴が多いのが、人の落ち度なのだとしても。
神という概念が存在する世界としない世界を比べるのはナンセンスだが、どうだったろうなと考える事はある。
まあ、今より良いと断言できるほど神を憎んでもいないのだが。
俺の元の世界の話こそ今はどうでも良い。悲しい事だが。
この世界に神の概念がなければ、比較する事もできたかもしれないがね。

くんっと袖を引かれる。
何か訊きたい事があるのだろうか。どうした?と訊ねてみるが、ソフィアは眼を伏せ頭を振るばかり。

『此処は…此処は、何か、嫌…』

…震えているのか?
ソフィアのこんな姿を見たのは久しぶりな気がする。
それこそ、あの村や、エンドール以来では無いだろうか…?
この祭壇に邪悪なる者達の気配は無く、禍々しい邪気のようなものも感じない。(俺はまだまだ素人だが)
そんな俺が感じるのは――圧迫感、だろうか?
俺は女に軽く会釈をした後、ソフィアの手を引いてハバリアの町へ戻る事にした。
とりあえず、ライアンという戦士が確かにこの辺りに来ているらしいというのが解っただけ収穫だったと今は思おう。

298 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:34:24 ID:7aq4z8YB



俺たちの目前には、威風堂々とした城が立ちはだかっている。
なるほど、キングレオ城の名に恥じないものだ。

「相変わらずこの城はいやーな空気に満ちているわね」

隣にいるマーニャが、眉間に皺を寄せる。
ミネアがきゅっと自分の服の襟元を掴む。

「バルザック……。今度こそ、絶対に許さない」

思い詰めたようなミネアの言葉。
それとは対照的なのがアリーナだ。

「お城っていうだけでちょっとサントハイムを思い出すわ」

なんとも能天気な台詞だなと思い、アリーナを見ると、彼女の眼は思いのほか真剣だった。
此処ではない何処か。この眼は何処かで見た気がする。…そうか、あの時のソフィアも…。
――今は決して届く事が無い、哀切を帯びた瞳。
彼女たちには、非常に重たい荷があるのだろう。
現在、城の前にいるのはソフィア、アリーナ、ミネア、マーニャ、そして俺の五人である。
他の男たちは皆馬車で待機している。
この面子になったのも、事情を考えると妥当と言えば妥当なのだが妙に偏ったものだ。
アリーナだけは、彼女を心配するクリフトと揉めたのだが、
結局何処ぞのストリートファイターのような、俺より強いヤツに会いに行く的な事を言う姫君を止める事はできなかった。
俺としてはそんな強敵に出会う事無く、穏やかにつつがなく波風の無い人生を歩みたいのだが…。
…まあ、そんな事を言えばついてこれないクリフトに怒られてしまうかもしれない。潜入に近い形になる以上、全員でぞろぞろと行く訳にもいかなかったのだ。
俺は何のかんのと言ってもソフィアを出来る限り助けてやりたいと思っているし、その為にはついて行く必要があるのも確かだ。
俺がついて行きたいと言う限り、ソフィアは許可してくれそうなのだが――最近、こちらを心配そうに見る事が増えている。
もっとしっかりしないと危ないかも、俺。

299 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:35:53 ID:7aq4z8YB
見張りもおらず、開け放たれたままの城門をくぐる。
前方には庭が広がり、二つの噴水。そして、大きな正門。流石に正門の周りには、兵士が二人ほど立っていた。
先頭を行くソフィアが何かを見つける。どうやら、噴水の近くに人影があるらしい。
俺たちが近づいていくと、相手もこちらに気づいたようで小走りに近づいてきた。

「ボクはホイミンという旅の者です。
どうか、お城の中に連れて行かれたライアン様をお助けください!
魔法のカギがあれば中に忍び込める筈です」

なんだこいつ?ちょっと迂闊じゃね?
まあ、俺たちは城の兵士には見えないだろうが…。
アホな子かな、と思ったのだがどうやらかなり焦っているようである。
ライアンという戦士とどういう関係なのだろうか…?
ちなみに、ぱっと見は男に見えるのだが詩人のようなゆったりとした服装に、整った顔立ちの為性別がはっきりしない。
うほっ、なのかボクっ娘なのかは敢えて言及を避けよう。俺は後者の方が夢があって良いと思う。

「助けてと言われると途端に見捨てたくなるのは何故なの?ねえ、あたし。
そういえば、あの時も鍵がかかってて中に入れなかったわね」

サドっ気全開のマーニャに内心おどおどしつつ、
その時も魔法のカギとやらを使ったのかをミネアに訊ねた。

「いえ。以前はオーリンさんが扉をこじ開けてくれたんです」

この台詞が決定的だった。
これを聞くまでは、彼女もカギを先に取りに行かないとだめかーと言っていたのだ。
マッスル・プリンセス・アリーナその人である。

「人間に出来た力技なら私に出来ない訳がないわ!」

おまいはいつから人類最高の力を持っている事になったんだ。オーガか?
そもそも、忍び込むんだろう?門の前には兵士がいるんだぞ。

300 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:38:32 ID:7aq4z8YB
「城には大抵裏門がある筈よ!そっちからいきましょう!」

こうして俺たちは、アリーナが細い腕で信じられない力を発揮しこじ開けた扉をくぐり、城の中へと潜入した。
ホイミンも焦っていたことだし、兵は拙速を尊ぶという事で良しとしよう。


そこは、外見の立派さとは違い大分おかしな城だった。
一階にも二階にも玉座、王の間が無い。
城の廊下でキモスな男と娼婦のような女が追いかけっこをしている。それを咎めるべき兵士も殆どいない。
散乱したご馳走であったもの。床にぶちまけられたワイン。
それら腐敗臭に混じり、別の異臭もする気がする。毒ガスでも噴き出してるんじゃないのか?いや、それは困るが。
二階の一室に、ひっひっひっと解りやすく笑う学者っぽい男がいた。
軽く小一時間問い詰めたところ、なにやらこの国の王は城の人間を使って魔法の実験をしているらしい。
それを聞いたミネアの表情が沈痛なものに変わった。
とりあえず、こいつを簀巻きにするのは後でも良かろうと一度部屋を出る。

「これで一通り確認しましたね…こうなってくると逆にあそこしかない、となるのですが…」

まだ当てがあるらしく、こちらへ、とミネアが先導する。
城の奥の廊下を歩いていると、壁に向かって立っている兵士が三人ほど見えてきた。

「こ、こら!大人しくしろ!」

中央の、趣味の悪いピンク色の鎧を着た兵士――いや、あれは城の兵ではなく戦士、か――の気合の声が辺りに響く。
戦士――ライアンは、両隣にいた兵士たちを一息で吹き飛ばして見せた。

「あの戦士、中々できるみたいね。兵士をあんなに吹っ飛ばすなんて!」

喜びながら駆け出すアリーナ、そしてソフィア。俺たちも後に続く。


301 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:41:14 ID:7aq4z8YB
「む!?…碧の髪、そして蒼い瞳…。間違いない!お告げ所のお告げ通りだ!
ぬおおっ!このライアン、遂に捜し求めた勇者殿にお会いする事ができた!
勇者殿!貴方様を捜して、私は…どれほど旅をしたことか…っ!」

涙ぐむライアン。ぬおおって凄いな。
彼の勢いに、ソフィアは驚いて眼をぱちくりとさせている。
俺はなんとなく面白くない。

「……と、今は苦労話をしている時ではなかった!
この部屋の中にいるのは、世界を破滅せしめんとする邪悪の手の者と聞きます。
共に打ち倒し、その背後に潜む邪悪の根源を突き止めましょうぞ!
さあ!中へ!」

ライアンが壁の一点を押し込む。
すると、がこん、という音と共に壁が消え通路が現れた。
すげえ。からくり屋敷みてえだ。
俺は感心しながら奥へと進む。

「おのれ、曲者め!であえ、であえ!」

後方から響いてきたのは数人の兵士の声だった。
数人――これしか、いないのか?どうも、この城はおかしい。まあ、好都合なのだが。

「こやつらは私が引き受けた!勇者どの、早くキングレオを!」

一番先頭に居た筈のライアンが一気に戻ってきて、兵士たちと切り結び始める。
いや、三人同時に相手するとか、凄いとは思うんだが…俺たちに強敵押し付けですか('A`)
あれ?っつか、なんだこの流れは?キングレオは姉妹の仇って訳でもないような…。オーリンとかってのの仇なんだっけか?
ライアンが無事ならそれはそれで良いような…邪悪、邪悪、ねえ。
邪悪の手の者と聞きますって、誰に聞いたんだろう?あのお告げ所の女か?――ふむ。

302 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:42:58 ID:7aq4z8YB
どうやらこの隠し部屋こそ、この城の王の間であるらしい。普段の謁見とかどうするんだろう。
玉座の後ろには、獅子のレリーフが飾られている。
いや、玉座の後ろなどをじっくり観察する余裕などありはしない。

「騒々しい事だ…」

――獅子王。
そう呼ばれる存在が、玉座に座している。
豪奢な金髪が、確かにまるで鬣のようだ。

「…ん?ほう…お前たちは…バルザックを仇とやってきたエドガンの娘らだったな」

キングレオがマーニャとミネアを視界に収め、ニヤリと笑う。
姉妹は既に戦闘態勢を取り、各々の武器を構えている。

「生憎だがバルザックはもうおらんぞ。残念だったな…。
まあ、退屈しのぎに丁度良い。此処まで来てしまったからにはタダで帰す訳にもいかん。人間どもの力の無さを思い知らせてやろう」

つまり――人間では無いのか。目前の男は。
俺の推測を裏付けるかのように、キングレオの姿が歪む。
服が破れ、腕が、足が、生える――。
それは、変成(へんじょう)であった。なるほど、こんなものが、人である筈が、無い。

「お前たちをそのような脆い生き物に創った神を恨むが良い――」

四本の足で立ち上がり、四本の腕をそれぞれ別の生き物のように動かす。
巨大な身体。巨大な顔。顔を囲う変色した鬣――。
俺は、圧倒的な威圧感を感じていた。
あの大灯台にいた虎など、比べ物にならない。
――劣等感。
解る。解ってしまう。俺は、アレに比べれば――劣等種だ。

303 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:44:01 ID:7aq4z8YB
アリーナが、ソフィアが、ミネアがキングレオに斬りかかる。
爪を、剣を、槍が閃く。だが、さっと鮮血が舞う中でもキングレオは不気味に笑っていた。

「――遅いのだよ、お前たちは!」

ガン!ズガン!!
連続して響く破砕音。壁にめり込んでいるのはソフィアとアリーナだ。
――あの二人をほぼ同時に捉えたのか!?
彼女ら二人はうちのスピードキングだ。その二人を一度に殴り飛ばすなんてありえない――。
ミネアが慌ててソフィアに駆け寄り上位治癒(ベホイミ)を唱える。俺はそれを確認し、アリーナに近寄り、彼女を抱き起こした。
口の端から紅い筋が伝っている。
俺は慌てて荷物の中から薬草を取り出し、彼女の口元へと運んだ。

「――う……。う〜、いった〜……ありがとっ」

ぴょん、と跳ね起きる。だが、その足元はおぼつかない。
――薬草の効果が、ダメージに対して及んでいない。
こんなケースは極稀だった。今迄、痛恨の一撃を誰かがもらう事があっても、ミネアかクリフトの上位治癒で十分事足りたと言うのに。
ソフィアもアリーナも無防備な所を喰らった訳ではないのにこのダメージだ。

「調子に乗るんじゃ――ないわよ!」

マーニャが放つ大炎熱(ベギラマ)の炎が獅子を焦がす。
だが、焼き尽くすにはそれでも足りない。
俺は怯む心を叱咤して、鋼の剣を構え獅子に突貫する。
突き。それが、かろうじてものになって来ている俺のほぼ唯一の攻撃手段だ。
しかし、獅子は。
俺の全力の突きを、指先で、まるで無造作に止めてしまった。

「…弱いな、お前は。しかし、成る程、エドガンの娘たちはあの時よりかは多少腕を上げたようだな。だが…それも、無駄な努力だ」


304 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:45:44 ID:7aq4z8YB
キングレオが大きく息を吸い込む。
――ヤバイ。俺は咄嗟に、剣を無理やりに引き、バックステップを踏む。
周囲の熱が消える。体温が凍る。キングレオが迸らせるのは極寒の吹雪だった。
ヒュォォォォォォ――!!
冷気が俺の耳を切り裂いた。指の先が氷結し、感覚が死滅していく。

「――キャァァァ!!」

それは誰の悲鳴であったろう。
だが、それすらも確認できない。顔を僅かにも上げる事すら叶わない。
俺はキングレオの巻き起こす凍える吹雪、ただそれだけで既に生と死の境をさ迷ってしまっている。

「…あんたは下がりなさい!こいつは、あんたには荷が勝ちすぎるわ!」

マーニャの指示が飛ぶ。
確かに、これは――ダメだ。攻撃の余波だけで俺にはとても耐えられない。この上直接攻撃など喰らった日には――。
幸いな事なのかどうか、キングレオは俺を弱者と定め、そしてヤツは弱者には注意を払わないようである。
俺は、一歩、二歩と、凍りつきかけた足で後退した。

「弱い…脆い…人とは何と罪深き事よ…。
力無き者には仇を討つ所か、生を甘受する資格すらない」

ソフィアが、アリーナが吹雪の中を猛然と突き進み、獅子へと肉薄する。
マーニャは、長い呪文の詠唱と集中を行っている。
ミネアはソフィアの治療を行った後、自身も聖なる槍を獅子の身体に突き立てた。

「黙りなさい…!お父上を幽閉した挙句国を売り、デスピサロなどに城を与えられて喜んでいる愚王が…!」

「…父?ああ、あの男か。あの男も弱かった。獄死というのも、無様な王に似合いだと思わぬか?」

305 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:47:57 ID:7aq4z8YB
「――獄死、ですって。王様が……あの方まで、死んでしまったの……?
あの、優しかった王様を獄死させるなんて……どうしてそんな非道い事ができるの……」

「…弱いという事は罪なのだ。王は、国は、強くなくてはならん。優しさにかまけ、強さを放棄したあの男は大罪人だ」

……その理屈は、俺には少しだけ解ってしまった。
甘い顔ばかりでは、つけあがるヤツラは必ず存在する。
優しい。ただ、それだけで。永遠に搾取され続ける。
だが、俺はこの国の現状など知らなければ興味も無い。
この瞬間、最も俺が興味を持っている事はこの状況をどう切り抜けるか、だ。

キングレオの放った炎熱(ギラ)の炎が床を走る。
吹雪だけでなく炎も操るとはなんと器用なライオンか。
それでも先ほどの吹雪よりはマシだったのか、臆する事無くソフィアとアリーナが獣の身体に鉄を突き入れる。
確かにこちらの攻撃も効いている。だが、それ以上にこちらが満身創痍だ。

「――出来たわ」

ぽつりとマーニャが呟く。
手中には凄まじい魔力の奔流が渦を巻いていた。

「見せてやるわよ――この、天才魔術師マーニャ様の秘技!ミネア!勇者ちゃん!アリーナ!一気に決めるわよ!」

「OK!」

アリーナが嬉々として返事をする。
彼女の魂は、危機において尚、輝きを増すのか。

「――キングレオ。これが、最後です」

「お前たちの短い人生の、な」

306 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:49:45 ID:7aq4z8YB
ミネアが再びソフィアに治療を施した後、低く槍を構える。
ソフィアも、皆とそれぞれに視線を合わせて大きく頷いた。
それに呼応するかのように、キングレオもまた四本全ての腕の拳を握る。

――アリーナが、ソフィアが跳躍する。

――マーニャが、船に乗っている間からブライの協力を得て研究していた魔法、火焔球(メラミ)を解き放つ。

――ミネアが、敢えてワンテンポずらしたタイミングで距離を詰め、下から槍を突き上げる。

それは、全てが捨て身の攻撃だった。
彼女たちは、この強敵の前に己が命を賭けている。
特に、前衛の三人はキングレオの重い打撃にこれ以上耐えられないであろうと予測している。
それでも――例え、マーニャのあの呪文が止めとならなくても、誰か一人が残れば。
その人が、決めてくれる。
俺にはそれがとても眩しくて、格好良く見えた。
同時に、キングレオの打撃に、一度として耐えられないであろう己が身の貧弱さが悔しかった。
だから――。

――俺は、詠唱を開始していたのだ。

呪文。それは、意思の体現を促す式。
高度な魔法になればなるほど様々な物質のあり方から学び、正しく理解する事でイメージを更に強化していかなければならないのだが、
最も基礎的な魔法の行程は、精神を繋ぎ、意図を伝え、力を喚び、イメージを現実に回帰させる法であるとブライは言う。

意思。俺の意思。
俺の意思は――彼女たちに、傷ついて欲しくない。

307 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:55:55 ID:7aq4z8YB
そこに必要なイメージはなんだ。
――防具だ。防具があれば良い。
古い伝承に在る何者にも貫かれない盾を顕現させる。
イメージ。だが、どんなに最強の盾をイメージしても、それはどのような形ならば最強なのか?何で構成されていれば最強なのか?それが俺には解らない。
そして何よりも、それは最強の矛の前では存在し得ないのだ。
俺の中でその存在は矛盾する、と意識してしまえば、盾の強度は一気に崩壊する。
ダメだ。盾ではダメだ。いや、もう間に合わない――なら!!

城の床を蹴り、少女に少しでも近づくべく駆ける。
跳躍している彼女の後ろから、精一杯に腕を伸ばして俺は俺の意思を体現させる。

「物理障壁(スカラ)!!」

キングレオの拳が、ソフィアを弾き飛ばした。少女が盛大に宙を舞う。
マーニャの身長程もあるであろう特大の火の球がキングレオに着弾する。
圧縮され、炎熱や大炎熱よりも更なる高温を宿した火球がキングレオの肉をぶすぶすと焼き尽くした。

「おのれ――おのれぇ!!貴様、だけでも…!」

キングレオの瞳がぎらりと光り、碌に治療を受けられなかったアリーナへと向けられた。
中空にある彼女の身体を、キングレオの拳――否、凶悪な爪が、アリーナの身体を刺し貫かんと迫る!

――そこに浮かぶのは、三枚の盾。

獅子の瞳が驚愕に見開かれる。それは、アリーナにとっても同じ事だ。

308 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:57:18 ID:7aq4z8YB
「――!?ふざ、けるなぁ!」

更に突き込まれる爪に、盾の一枚が砕け散る。
二枚目――三枚目。それすらも、獅子は咆哮と共に貫いた。
だが、そこまでだ。
盾との拮抗で磨耗した爪を、アリーナは易々とやり過ごし、キングレオの顔に渾身の蹴りを見舞う。
ぐらりとその巨体を揺らす獅子。
無防備に晒された腹部に、ミネアの槍が突き刺さった。

「こ…この私が、敗れるのか…。お前たちは一体…」

身体中から血液を溢しながら、尚、立ち続けるのは王としての意地だろうか?
アリーナが、ミネアが、油断無く構える中、吹き飛ばされたソフィアが剣を杖に立ち上がった。

「勇者…と、言ったな…地獄の帝王様を滅ぼすと言われる勇者…?
ばか、な…勇者なら…デスピサロ様が既に殺した…筈…」

キングレオの身体が歪む。ミネアが槍を引き抜き、寂しそうにこう言った。

「王よ。貴方の理念や信条が間違っていたとは言いません。
ですが――この荒廃した城を見て尚、王として正しいと。そう、言えますか?
人を捨て魔物になった事が、城の人間を使って実験を繰り返す事が…!!」

「ふ……。強き事は素晴らしき事……強き、エドガンの娘たちよ……。
余が間違っていたとするなら、それは唯、一つ……お前たちに敗れる程に弱かった、余の……。デスピサロ様に……デスピサロに及ばなかった、余の……。
……教えてやろう。バルザックは……サントハイムに……」

最後の言葉を聴いたアリーナの顔色が変わる。
だが、少女はすぐに頭を振り一度は平静を取り戻したかのように見えた。

百獣の王の最後。
彼は力を求め、最後まで力が足りないが故の結果であると信じて力尽きていった。

309 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:58:06 ID:7aq4z8YB
ソフィアが、がっくりと膝をつく。
俺は慌てて彼女に駆け寄った。

「ソフィア!大丈夫か、ソフィア!」

俺の呼びかけに、少女は小さく頷いた。
ミネアも傍に来て、急いで治療を始める。

「それにしても、意外だったわね。私はてっきり、あの状況で物理障壁を使うなら勇者ちゃんにかけると思ったわ」

「うん、私も」

マーニャとアリーナがそんな事を言う。
これの意図する所はなんなのだろうか?

「んな事言ったって、ソフィアはミネアに何度か治療してもらってただろ。
アリーナは、俺の薬草が精々だったから、アリーナのがヤバイと思ったんだよ」

「あれ?そういうものなんだ。そうよね、危ない方を優先するのが普通よね」

やっぱりクリフトがおかしいんだと、アリーナは一人合点が言ったようだ。
マーニャの方は、ふーんとか、ほーとか、気の抜けたような相槌を打つばかりだ。

「その、な。…ごめん、な。痛い思い、させちまって」

ソフィアに謝意を述べると、少女は頭を振って先ほどよりも大きく意思を表す。
俺の掌を取り、そこに細い指でゆっくりと文字を書き始めた。

『呪文、使えたね。良かったね』

無我夢中で発動させた、初めての呪文。それはとても、スマートと言えるような流れでは無かったけれど。
彼女は、己の身体の痛みよりも何よりも先に、俺への祝福を優先してくれたのだった。

310 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 02:03:43 ID:7aq4z8YB
HP:3/68
MP:21/30

Eはがねのつるぎ E鉄のまえかけ Eパンツ

戦闘:物理障壁(スカラ)
通常:

311 :DQ3 :2005/04/26(火) 02:13:37 ID:ECHFbos3
流石ですね。俺も頑張って少しでも良いのをかいてみたいです。

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 05:31:17 ID:e73v/huZ
>>309の最後で泣いた俺は普通だよな?とても言いたいことがある。








最良スレ確定

313 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 06:48:26 ID:u4i4BBCd
>>312
俺はスカラを唱える辺りでぐっと来た

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 08:05:59 ID:gWayposz
普通におもろいよ、うん
まとめ催吐欲しいくらい

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 08:42:09 ID:F+XCoqqR
>>311
個人的にはだけど、ウケを狙いよりリアルさ重視で書いてあると読んでて面白いです。
楽しみにしてるよ。っていうかあんまりリアルワールドに帰ってくるなよ。ガンガンいこうぜ。

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 08:43:07 ID:McXq3xrq
げえ。
ウケを狙いより→ウケ狙いより

317 :DQ3 :2005/04/26(火) 11:15:49 ID:ECHFbos3
日が沈む。町の明かりを眼のはしにとらえながら背中の荷物を呪う。
肩に食い込むリュックの紐をなんとか軽減出来ないものかと思案する。火の玉出すより早急に必要な考えのように思えるのだが。

とりあえず顔もあげられないほど疲れながら必死についていく俺。女神と勇者がちょっと先で待ってくれている。

レーベという町についたのは深夜をまわったころだった。宿屋に転がり込み、荷物を下ろす。
一日の拷問に耐えきった肩を風呂で労っていると筋肉が入ってきた。

「よぉ、虚弱体質。ちったぁ筋肉つけろよ?」

はぁ、せっかくの憩いが台無しだな…。薄ら笑いを浮かべながら体を洗う。

「どれ、背中でも流してやるよ。荷物、ご苦労だな」

…意外な展開だ。実は良い奴かもな、こいつ。


318 :DQ3 :2005/04/26(火) 11:16:39 ID:ECHFbos3
風呂を堪能した後は狐の部屋に向かう。肩を労る魔法の開発に余念がないのだ。


次の日。俺が爆睡していると、大興奮の狐が入ってきた。
いざないの洞窟というところから外の大陸にいけるという。
必要な食料や道具を買い込み、でかける。…鶏肉なんか買うな。重いから。

また肩に食い込むものを感じながらしばらく歩いていると、突然筋肉が吹っ飛んだ!

「魔物の巣に入ったみたいだ!注意しろ!」
立ち上がった筋肉が叫ぶ。めいめい武器を抜き、構える。俺も荷物を下ろし、買ってもらったナイフを抜く。
剣とは違い、致命傷は与えにくいのだが、鉄や銅の剣は重すぎて持てないのだ。
やがて、筋肉を吹っ飛ばしたモノが現れた。ぬめぬめした長い舌をたれるままにした、ヒト程もあるカエル。それが三体。

319 :DQ3 :2005/04/26(火) 11:17:30 ID:ECHFbos3
攻撃は最大の防御とばかりに狐がしかけた!
「ギラ!」
俺が扱う火の玉よりも高熱の帯が奴らを包む。が、ぬめぬめした体皮のせいで致命打には程遠い。
火が消えるや否や、勇者と筋肉が切りかかった。血しぶきが舞う。あまりに生々しい光景に、胃からこみ上げるものを感じる。
「うげぇ…」
昼間食ったものが胃液と混ざりながら吐き出される。
俺が吐き気と戦っている間に勇者が一匹しとめたようだ。だが。
「がはっ!」
ずっと攻撃の矢面に立たされていた筋肉が膝を折った。狐と女神はと見ると、新しく現れた巨大アリクイを相手に奮闘していた。
俺がやるしかない。
吐き気をこらえながら意識を集中させ覚えたての呪文を放つ。
「メラ!」
右手から放たれた火球は筋肉に舌を叩きつけようとする一体の顔面に突き刺さる。
舌と肺を焼かれ苦悶の声をあげるそいつを、膝をつきながらも切り上げた筋肉の一撃が体を両断する。


320 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 11:25:26 ID:ECHFbos3
勇者も二体目をほふり、筋肉へ癒しの呪文を唱える。こっちは大丈夫だ。
女神の方へ目を向け、アリクイの化け物に同じく火球を叩きつけようと集中をはじめる。
「メ…ああっ?!」
突然右足に激痛が走った。見ると、ふくらはぎがぱっくり割れ、白いものが覗いている。足下に、緑色のゲルが…。
同時に右腕が動かなくなる。集中を乱したメラが右腕数センチの所で暴発したのだ。
前進を駆け巡る激痛に気が遠くなる。
左手に持ったナイフを逆手にもち、何度もゲルに突き立てる。
やがて、ゲルから泡が立ち上り、周りに滲んでいくのを最後に視界は暗転した。

女神の叫び声が聞こえた気がした。

HP. 2
MP.14
どく
Eせいなるナイフ
E旅人の服 E荷物
呪文
メラ

321 :宿屋inDQ8 ◆nnvolY11AA :2005/04/26(火) 20:32:53 ID:Xc/csRwv
早朝、俺はリーザス村の教会に行った
それにしても、この村は過疎地域だからといってこの狭さは何なんだ・・・
10分もあれば踏破できる村なんて始めて見ましたよ。えぇ
木で出来た両扉を開けると、小さい教会ながらも崇拝者専用椅子・女神像やらが
揃っている感じだった。
───そこに彼女は居た
うはw美人www
『あのー・・・』

「ここは、神にみちびかれし迷える子羊たちのおとずれる場所。
わが教会にどんなご用でしょう?」

『え、え〜っと・・・先日はどうも有り難うございます・・』
やべぇ・・女性と会話する事無いから緊張するよ・・・こんな俺様無職童貞22歳

「あら?え〜っと・・・」
「あ!思い出しました!トラペッタの・・・」

『はい、そうです。本当に有り難うございました。
貴方が助けてくれなかったら、どうなるか分かりませんでした。』
どうやら覚えてくれていたようだ。

322 :宿屋inDQ8 ◆nnvolY11AA :2005/04/26(火) 20:35:22 ID:Xc/csRwv
「あの時は、本当に驚きましたわ。
薬草を摘みに行ってたら黒いカタマリがあって・・・」

『それが俺・・・だったんですよね』
黒いカタマリか・・・
無理はないか全身に炎を浴びてそのまま放置だったらそうなる罠

「はい。でも、わざわざ私に言わなくても宜しかったのに・・・
貴方を見つけたのも、助けたのもどれも神の御導きです」

『神・・・ですか
でも、有り難うございました』
う〜ん、トラペッタの神父も言ってたような・・・
無宗派の俺には何とも言えませんな
聖戦の名の下に戦争仕掛けてくるところもあるしな・・・

でも、本当に俺は感謝している
こうして居られるのも彼女のおかげなのだ
俺はお礼を済ませ、像に手を合わせた。南無阿弥陀仏・・・これしか知らん
それから俺は、一先ず昨夜のおっさんのところへ向かった


※作品に訂正
>>265のHP16となっていましたが
本当は36の誤りです。すみませぬ


323 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 20:57:40 ID:z2cGNOQB
まとめサイトきヴぉんぬ

324 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 21:54:52 ID:e73v/huZ
携帯からも見れるまとめサイトだとすごく嬉しい

325 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/28(木) 10:59:41 ID:Dms95/8h



326 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 10:31:08 ID:MiQHKnLq
まとめサイト…単純なものであれば作ってもいいのですが。
いりますか?

327 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 10:38:09 ID:8MGrAnyb
いるいる
携帯から見れればわりといい

328 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 11:33:38 ID:x1gbaA2Y
>>326
おながいします

329 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 13:15:09 ID:ziimdvR+
>>327
通勤ブラウザ使えば大抵のサイト見れるよ。

330 :326 :2005/04/29(金) 14:52:03 ID:K3zi0B9w
ちょっとやってみます。
とりあえずテキストだけ貼り付けてますが、うpはまだです。

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 17:10:18 ID:8MGrAnyb
>>329
わざわざありがd
だがおれは使ってる
ほかのヤシは知らんかもしれんからね、携帯から見れるほが楽かと思った

332 :326 :2005/04/29(金) 17:14:22 ID:K3zi0B9w
あと、書き手さんの了承をもらったほうがいいのかな?と思ってみたりするのですが。

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 20:23:08 ID:8MGrAnyb
問題無いんじゃないかな


334 :326 :2005/04/29(金) 23:24:03 ID:aivkaDOP
整っていませんが、一応うpしました。

http://www.geocities.jp/if_dq/

まとめサイトなんて作ったことないのですが、こんな感じでいいですか?

335 :326 :2005/04/29(金) 23:37:14 ID:aivkaDOP
書き手の方、掲載不可であれば教えていただければ幸いです。


336 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 23:58:30 ID:ienW5uB5
シンプルでいいな。


337 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/29(金) 23:59:03 ID:7QxrhD4L
>>335
乙。保管庫の筆者名の横にシリーズ名も付けといてもらえると、より分かり易いんだが、と提案してみる。

338 :326 :2005/04/30(土) 00:09:58 ID:e56Z1ilj
>>336
ありがとうございます。

>>337
シリーズ名を入れようとしたのですが、必ずしもシリーズ名がわかる作品ばかりではない気がしたので、今のところ入れていません。
判明分だけでも入れようかな…。

339 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:07:05 ID:3VImITAS
マーニャの道案内で俺とソフィアとクリフト+1名はコーミズ村西の洞窟にやってきている。
+1名とはぶっちゃけアリーナの事だ。まあ、一悶着あって今は俺の背中で眠っている。
キングレオからハバリアへ戻った俺たちは、二手に分かれて魔法のカギの入手と、お告げ所での情報収集をする事にした。
だが、それにアリーナが一人だけ反対したのである。


    〃〃∩  _, ,_
     ⊂⌒( `Д´) < すぐにサントハイムに行かないとヤダヤダ!
       `ヽ_つ ⊂ノ
              ジタバタ

      _, ,_
     (`Д´ ∩ < 寄り道するのヤダヤダ!
     ⊂   (
       ヽ∩ つ  ジタバタ
         〃〃

       ∩
     ⊂⌒(  _, ,_) < お父様…みんな…
       `ヽ_つ ⊂ノ
              ヒック...ヒック...

       ∩
     ⊂⌒(  _, ,_) zzz…
       `ヽ_つ ⊂ノ  


そうして、暴れ疲れて眠ってしまったと言う訳である。
あの時、サントハイムと聞いて顔色を変えた少女であったが、その後の落ち着きを見て大丈夫かとも思ったのだが。
いや…むしろ、大丈夫な訳が無いのか…。

340 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:07:40 ID:3VImITAS
「しかし…なんで俺が背負ってるんだろう…」

此処まで来る間に何度かした問いを繰り返す。
クリフトが僅かばかり苦笑しながらも律儀に応えてくれた。

「姫様をハバリアに置いておくと何をするか解りませんからね。私が姫様を背負うなど恐れ多い事ですし…」

「あんた、師匠の私やソフィアに背負わせる気?」

じろりとマーニャが睨んでくる。
ヒイ!と、軽く情けない悲鳴をあげる俺。
しかし、恐れ多い、ねえ。じゃあ俺は不敬罪じゃないのかな?

「いえいえ、そんな事にはなりませんよ。…それに、貴方には感謝しています。姫様を助けて頂いて」

ふーん。クリフトは本当にアリーナの事を心配してるんだなあ。
俺で言う所の――眞子様佳子様か?
あ。ちょっと解らない事もないかも。あの子達を背負うってなったら少し気が引けるかもなあ。

洞窟の最深部にあった宝箱の底を探ると、何やら小さなスイッチが見つかった。
カチリ、と押すと、地面にぽっかりと穴が開き降り階段が現れる。
こういう仕掛け好きだねえなどと軽口を叩きながら階下へと下りると、小さな研究室が俺たちの前に姿を現した。

「父さんったら…この分じゃ、色々隠し事してたのかも?
ま、あの父さんに限ってそんな事もないっか」

341 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:08:13 ID:3VImITAS
マーニャが父の面影を窺い知り、懐かしそうに部屋を見回す中、ソフィアが奥にあった箱から魔法のカギを取り出す。
俺は、壁際にあった本棚に何気なく視線を走らせた。
様々な本が並んでいる。
……座標融解現象……。
……魂の相似について……。
主に、学術書のようで俺にはちんぷんかんぷんだ。
マーニャの許可を得て、それでも多少解りやすそうな本を数冊持っていく事にした。
その中の一冊をぱらぱらと斜め読みする。どうやらこれは手記のようだ。

……進化の秘法……。

…これか?俺が更にページを繰ろうとした瞬間。

「――うぅん」

何やら悩ましい声と共に俺の背中でアリーナが寝返りを打った。
ぐ、ぐぱっ、む、胸が。
まだまだ幼い感じだし決して大きくはないけれど中々どうしてぶっほお。
毒男の俺はこういう状況に慣れていない為身体がびっきびきに固まってしまう。
ふと、視線を感じそちらを見ると、そこにはソフィアが立っていた。

――俺は、彼女のこんな冷たい視線を今迄見たことが無い。

いや、ちょっと大袈裟だけど。それにしても、なんだ。ジト目って言うのか。
あぁん、だけどちょっとツンとしてるソフィアも可愛いな。
業の深い感想を抱く俺をじとーっと見た後、少女はたかたかと走っていってしまった。
俺はなんか悪い事をしたんだろうか…。
アリーナ姫様は俺の背中が気に入ったのか、すやすやと暢気に寝ておられた。人の気も知らないでいい気なもんだ。

342 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:11:39 ID:3VImITAS



洞窟から脱出した俺たちは、マーニャとミネアの生まれ故郷でもあるコーミズの村に寄る。トルネコが待っている手筈になっていたからだ。
彼は、宿屋にいた旅の商人と腰を据えて交渉をしていた。

「いやあ、トルネコさんには敵いませんなあ」

「いえいえ、ありがとうございます」

「そういえば、以前砂漠のバザーをやっていた場所に新しい町が出来たという噂を聞きましたな」

「本当ですか?いや、それは一度行ってみたいものですね」

何やら朗らかに談笑しながら茶など啜っている。
俺は早速首尾を聞いた。

「ええ、かなり良い品が揃っていましたよ。少々無理をしてでも購入しておけば、後々楽になる筈です」

そう言って、買った品物を俺たちの前に並べる。
バトルアックス、はがねのよろい、てっかめん……武器も防具もあり、実に久しぶりの大きな買い物になったようだ。

「ライアンさんには厳しい役目を担ってもらうでしょうから、バトルアックスと鋼の鎧と鉄仮面を。
後は、ソフィアさんにも鋼の鎧を用意しました。
マーニャさんとアリーナさん、ブライさんには、このみかわしの服ですね。これは良いですよ。何と言っても軽いです」

343 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:12:35 ID:3VImITAS
トルネコはにこにこしながら物を並べつつ、解説してくれる。
この男、本当に武具が好きなようだ。
ソフィアが鋼の鎧を四苦八苦しながら装備しようとしている。
どうも、鎧でがっちがちに身体を固めるのを彼女は嫌がるのだ。
基本的に鎧は全身を覆う分のパーツ一式が用意されるものなのだが、ソフィアは重さで動きが鈍るのを嫌い、
その中から部分、部分を抜き出す。
今回、ショルダーガードと胸当て、腰回り、具足と言った辺りを着ける事にしたようだ。
…二の腕とか、太ももとか、布地すら無いんだけど良いのかなあ…。

「そうそう、貴方の分なんですが、鋼の鎧か、みかわしの服かを用意できますがどうしますか?
鋼の鎧は見た目通り頑丈ですが、重いです。みかわしの服は軽いですが、鉄のまえかけより純粋な耐久力は劣りますからね」

俺は、今迄幾度と無く命を救ってくれた鉄のまえかけを見た。
大掃除のときに中々物を捨てられないタイプである。
それにこれは、元々ソフィアやマーニャ、ミネアが買ってくれたもので、何となく気が引ける。

「んー。これも、もうボロボロね。買い換えときなさい」

みかわしの服を装備し、機嫌よさそうにくるくると踊っていたマーニャがひょいっと顔を覗かせてきた。
そのまま、勝手にトルネコと打ち合わせを始め、その後俺にみかわしの服を放ってきた。
勝手な女だ。…まさか、俺が遠慮するのを見越したなんて事はあるまい。

「ライアンさんがバトルアックスを使うとなると、破邪の剣が一本空きますから、貴方が使ったらどうですか?」

それを聞いたソフィアの肩がぴくっと動いた。な、なんだろう?
俺はそうっすねとトルネコに相槌を打つ。トルネコの方も、ソフィアの様子に気付いたのか、軽く頭を捻っている。
ソフィアがつつつ、と妙な足取りでこちらに近づいてきた。しかして、絶対にこちらを見ようとはしない。なんなんだ。
少女は無造作に自分の剣を鞘ごと外すと、俺に押し付けてきた。
勢いに押されて受け取ってしまう。

344 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:13:50 ID:3VImITAS
「ライアンさんがバトルアックスを使い、ソフィアがライアンさんの破邪の剣を使うので、ソフィアの破邪の剣を俺に…と、言う事っぽいすけど…」

「うーん、そうなんでしょうね…とりあえず鋼の剣の方は他に使える方もいませんので、下取りに出しておきますが…」

ソフィアはそんなにライアンのお下がりを使いたかったのだろうか?
俺はなんだか釈然としない気分だった。
マーニャが、アホね、と呆れたように嘆息していた。



ハバリアで合流した俺たちはお互いの得た情報を交換する。
俺とソフィアを驚かせたのは、あのお告げ所の女が消えてしまったという話だった。
なんでも、俺たち…じゃねえや。導かれし者達の倒すべき相手を告げようとした途端だったらしい。
地獄の帝王、エスなんとか。
ミネアの言うには、その地獄の帝王に消されたんじゃないかという話しだが、だとするなら恐ろしい話である。
俺、消されないだろうな?怖ぇなぁおい。
地獄の帝王って、ネーミング最悪wwwうはwwwワロスwww
なんてバカにしてみたら逆鱗に触れちゃったりしてな。なはは、そんな訳はないない。ぶっちゃけありえn










345 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:15:53 ID:3VImITAS
なんてなー!
ふう…長さんのいない今、このネタをやっても寂しくなるだけか…。
毎度お馴染みの一人相撲も程ほどに、俺たちは船に乗り込みサントハイムを目指す。
船上で、ブライとクリフトからサントハイムの状況について話を聞いた。
城内の人間全員が消えてしまった、か。
まるで、マリーセレスト号事件だな…まるっきりホラーだ。
しかし誰もいなくなってしまったからと言って城をほったらかしにして旅に出るアリーナ達も大概だよなあ。
と、言ってもじゃあ他にどうしたら良かっただろうかと考えると、この世界の国とか、政治とか、そういうのいい加減なんでさっぱり解らんが。

「城に赴くメンバーですが…どうしますか?勇者殿」

ライアンがソフィアに意見を求める。
此処は俺の出番!と、ソフィアと意思疎通を図るが、まだ怒ってるのかつーんとしたままだ。
ブライが訝しげな表情でこちらを見てくる。はわわ、マズイ。
俺は適当に俺の意見を言ってしまう事にした。

「えーと、バルザックと相対するのに、色々な事情からマーニャとミネアは外せないだろうし…。
アリーナも、黙ってられないだろう?」

勿論だとばかりにぶんぶんと頭を振るアリーナ。

「それに、ソフィアを加えて半分なんで…。バルザックが何処にいるか次第だけど、
出来るなら全員で、場合によっては女達を押し上げる形になるんじゃないかな。
――って、ソフィアちゃんが言ってました!」

ライアンがふむ、と頷く。
ブライやクリフトも、アリーナと離れるのは心配ではあるのだろうが、城の方も気になるしと言った按配のようだ。
ちなみにトルネコは舵取りをしている。
いや、マジで偶然だから!意図的な何かなんてありえないから!!

346 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:16:52 ID:3VImITAS
「では、男たちで縁の下の力持ちをするとしましょう」

男臭い笑みを浮かべながらライアンが言う。
この男、かなり頼もしい。マーニャなどは、この手の熱血漢は苦手などとぼやいていたが、
仲間を守る壁となるに最も相応しい、まさに戦士だ。

「現状の指針も決まった事ですし、一度解散しますかな」

三々五々に会議室として使っている船室を出て行く一行。
此処からはそれぞれの業務へと移って行く。とある者は炊事や家事であったり、ある者は見張りであったり。
俺はアリーナの様子が気になり、彼女の部屋を訪ねてみる事にした。
部屋の前には、クリフトとブライが所在無げに立っていた。なにやら、少女は着替えているらしい。
そういえば、アリーナ用のみかわしの服は…。

「はーい、いいわよん♪」

マーニャの声だ。どうも嫌な予感がする。
扉を開けた俺たちの前に現れたアリーナは――。

レオタードを着ていた。

しかも、ピンクの。

さらに、網タイツまで履いている

なんだ!?何が起きた!エマージェンシーエマージェンシー現況を報告せよ!
クリフトが顔を真っ赤にしてぶっ倒れた。ヤツには刺激が強すぎたか…。
戦友(とも)よ、安らかに。いずれ靖国で会おう。

「姫様!なんという格好をしておられるのですか!!はしたないにも程がありますぞ!!!」

347 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:18:18 ID:3VImITAS
「えー?でも、これ、かなり動きやすいししかも丈夫なのよ。トルネコも褒めてたし。
しまいにゃ着ますよ!?とか言ってたけど」

トルネコのレオタード姿とか、なにがどうしてそういう話になったのかは解らんが、
とりあえず俺は軽い前傾姿勢でテレマークを維持している。
やったよ船木ぃ、はちょっと古いか?けど、なんかそういうどうでも良い事を考えてないとなんか色々おかしくなっちゃいそうで。
こちらを見てマーニャがまた(・∀・)ニヨニヨしている。いつか死なす。
マーニャを睨んでいたのだが、ふわりと、重力から解放される感覚が俺を襲った。

「姫様!!!」

「ブラーイ!お説教はまた今度ね!!」

アリーナが俺の首根っこを掴み、強引に部屋からの脱出を試みたようだ。
なんで俺を連れて行くんだ!?死ぬ、首が絞まる、誰か、助けt……。



肌寒さで眼が覚めた。
どうやら、ここは船の見張り台らしい。ぶるっと身体を震わせる。
目の前には、アリーナが膝を抱えて座りじっとこちらを見ていた。
何が楽しいんだろう。ああ、俺の顔の造作か?まあ、ギャグかもしれん。…鬱…。
こういうのも自傷癖というのだろうか。
少女が、小さく身体を震わせた。なんだ、結局寒いんだな。
こんな所にいなければ良いのにと思いながらも、着ていた外套を少女へとかけた。
あー。似合わない事をしている。
気恥ずかしくて、俺は少女から視線を外し、夜の海の見張りを開始した。
沈黙が流れる。いつもよく喋り、よく動くアリーナが近くにいるとは思えない、静寂さ。
彼女の部屋を訪ねたのも、それが原因と言えた。
マーニャとミネアに関しても気になりはしたのだが、彼女たちはキングレオに向かう船上で結構吹っ切れた部分もあったと思う。

348 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:21:30 ID:3VImITAS
「で、そのレオタードと網タイツはどうしたんよ?」

「――え?あ、うん。マーニャがね。エンドールで見つけてきたんだって」

って事は、わざわざ瞬間転移(ルーラ)を使ったのか。何考えてんだろう…それとも、魔法のカギで開けられる何かに心当たりでもあったのか。
…ん?そういや、サントハイムにも転移で行けるんじゃないのか?
――ああ、けど、まあ。船で移動する為にかかる時間が、別の所に作用するという事もあるのかもしれない。

「ね」

「ん?」

「どうして、貴方を連れて此処に来たと思う?」

さて?なんだろう。
少なくとも、アリーナに関して愛だの恋だのが原因で起きた事では無いと言うのだけは断言できる。
相手が俺というのがどう逆立ちしてもありえないのもあるのだが、それ以上に、この娘はそういうのに、超絶的に疎いと思う。

「さあ…わかんね」

「ソフィアがね。貴方といると、安心するんだって。だから、試してみたの」

ソフィアが…?

「私にも、なんとなく解っちゃった。貴方、臆病でしょう?誰かを傷つけるのが怖い人。誰かを傷つける事で自分も傷ついてしまうのが怖い人。その痛みが怖い人。
だから、優しい人」

「けなしてるだろう」

「うぅん。そんな事ない。試してみて、やっぱり成功だったわ。なんだか、落ち着いたもの。
サントハイムの事を考えると、どうしても気が滅入っちゃってしょうがなかったけど。
――貴方って、変な人よね。なんだか私、見守られている気がする。もしかして、神様とかじゃない?」

349 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:25:35 ID:3VImITAS
「けなしてるだろう」

「うぅん。そんな事ない。試してみて、やっぱり成功だったわ。なんだか、落ち着いたもの。
サントハイムの事を考えると、どうしても気が滅入っちゃってしょうがなかったけど。
――貴方って、変な人よね。なんだか私、見守られている気がする。もしかして、神様とかじゃない?」

アホな事を言う少女に視線を戻す。
えへへ、と笑顔を浮かべている少女に、なんと言ったものかと迷う。

「俺は神様なんかじゃないし、それに神の意思を語るヤツってのは碌なのがいないもんだ。間違っても神様だとか、それに準ずる者だなんて言いたくないね。
よく解らんけど、俺はそんな褒められるようなヤツじゃない、引き篭もりのダメ人間だ」

「んー、そういう自虐的なのは確かにマイナスかなあ」

今度はにしし、と笑うアリーナ。
困った。ソフィアにしてもそうだが、俺はこういう時どうしたら良いか解らない。
自虐が良い事だとは俺だって思っていない。だけど、他人に肯定されるのに慣れていないのだ。そしてその後の否定が恐ろしい。
だから先回りして、己を貶める。そうする事で予防線を張るんだ。
俺は最初からこういうヤツだ。お前が最初に勘違いをしていたんだ、と。
この年下の少女に、なんだか見透かされている気がして、少し落ち着かない。
救い難い、臆病者。だが、それを優しいと肯定されたら、俺はどうしたら良いのか。
なんだか意味も無く身体を動かしたり、頭を掻いたりする。
その挙動不審な様子をアリーナは楽しそうに見ていた。

「わざわざ部屋まで様子見に来てくれて、ありがと」

少女のお礼。
それは、確かにある一つの事象を示している。
俺という人間がどういう人間であろうと、少女を心配し様子を見に行ったという事は、少女にとって肯定するべき事なのだ、と。
この場を見ているのが月と星だけである事を、俺は感謝した。
きっと気恥ずかしさ故に、格好の悪い表情を浮かべていたであろうから。

350 :サントハイムの決戦(前)  ◆gYINaOL2aE :2005/04/30(土) 01:26:54 ID:3VImITAS



サランの町は、サントハイムの城下町という位置づけになっている。
実質的には少しばかり離れているのだが、今回はそれが僥倖だったようで魔物たちの気配は無い。
町に入った俺たちは、とても歓迎された。
流石に姫君の帰還は大きいらしかったが、それでも眼前のサントハイム城に魔物が住み着いたという現実を前に、
未だ悲観的な者も少なくなかった。
アリーナ達サントハイム組は悔しそうだったが、幼い少女にアリーナ様のようになりたい、アリーナ様頑張って、と言われると、にっこりと笑みを返していた。

「サントハイムの王族には、代々未来を予見する力があったと言われています。それ故に、狙われたのかもしれませんね…」

町の歴史家がそんな事を言っていた。
アリーナの表情は沈んだが、

「じゃあ、占いで未来が解るミネアは実は王族!?
だとしたら、私たちはアリーナのお姉さまねっ。あはははっ」

「もう、姉さん!」

この姉妹の精神状態は、仇を目前にしても良好であるらしかった。
それにつられるように、アリーナも微笑んだ。

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