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もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ :05/03/15 05:33:29 ID:NA3D0HzS
どーするよ?

201 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:18:24 ID:EiAPlCEj
「おお!何方かは知りませんが丁度良い所へきてくれました!
この灯台にともっている邪悪な炎を消すつもりでここまで来たのですが、
魔物たちが強くてこれ以上進めなかったのです。
お願いです!私に代わって、邪悪な炎を消してきてくれませんか?」

転がるようにしてこちらの懐に飛び込んできた男は、一気にまくしたてながらソフィアの手を取って懇願している。
見た目は中々鈍重そうなガタイなのに侮れないおっさんだ。

「ええ。私たちもそのつもりで来ましたから。貴方は、ひょっとしてトルネコさんですか?町の皆さんが心配していましたよ」

「なんと!?それは心強い!いやあ、町の人には大見得を切った手前戻りにくいですがそうも言ってられませんな。
それでは、私は一足先に戻ってます!」

言うだけ言って、突き出た腹をぼよんぼよん揺らしながら場を立ち去ろうとする。
だが、これは――つまり、あの有名な商人トルネコが此処に向かった、というのは――町で聞き込みを行った俺にとっては想定内の出来事だったので。
それとなく彼の前に立ち塞がり、こう言った。

「トルネコさん。貴方は武器商人だって聞いたんすけど、何か良い武器は持ってませんか?」

「武器、ですか?ふぅむ、そうですなあ――天空の剣には及びませんが、中々の業物ならありますよ。
勿論、値は張りますが……」

天空の云々は何処かで聞いた気がしたのだが、思い出せないのでとりあえず今は置いておく。
現在、金はまとめてソフィアが管理している。確か、数千Gはあった筈だが――。
そこまで考えたとき、ミネアに耳打ちされたマーニャがずいっと俺の前に出た。

「良いわ。譲ってちょうだいな」

「ふむ、ふむ――そうですな。私には、このそろばんがありますし…それに、この灯台の魔物を何とかしなければどうしようもない。
私は、人を見る眼はあるつもりです。あなた方に託す意味も込めて、勉強しますよ」

202 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:23:39 ID:EiAPlCEj
その位なら、タダで譲ってくれても良いのになあと思ったものだが、
マーニャが機嫌よく金を払っているので何も言わない事にする。
こうして、俺たちは一振りの剣を手に入れた。トルネコが、最後に一つお辞儀をして、脱兎の如く塔から出て行った。
逃げて行った、が正しいかもしれないが。

「――はじゃのつるぎ、ですね。確かにこれは良い剣です」

くくっと刀身を水平に掲げ、改めてその業物を見定めるミネア。
そうして、ソフィアに手渡す。
ひゅっひゅっと二度、素振りをしたソフィアはその剣が気に入ったのかにっこりと笑って見せた。

「けど、良かったのか?今のは結構な出費だと思うんだけど…」

俺はトルネコを呼び止めた責任を感じていた。
確かあの金は、コナンベリーで船を買う為に貯めていたものだった筈である。

「良いんですよ。――何故なら、トルネコさんも導かれし者ですから」

ミネアの台詞が一寸、要領を得ず俺は小首を傾げる。

「導かれし者は、ソフィアさんと出会えば何かをするまでもなく集うものです。
ですから――結局の所同じ事なんですよ。幾らで買ったとしても。お金などは共有するのが私たちのルールでしょう?
今建造中のトルネコさんの船も」

軽く背筋に悪寒が走るのを感じる。
ミネアは、ぺろっと小さく舌を出して見せた。
そうか、あの時マーニャに耳打ちしていたのはそういう事だったのか。
最初から道を共にする事を解っていたから――恐ろしい。大商人と呼ばれる男をペテンにかけるとは。
いや、トルネコ自身も決して損をする訳でもないのだからペテンでも無いのか……。
トルネコ自身の意思で、ソフィアの元に集うというのならそれは彼の責任だから。
それにしても、何かをするまでもなく集うと言い切るミネアの自信には舌を巻いてしまう。

203 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:27:48 ID:EiAPlCEj
ソフィアが今迄使っていた鋼の剣が不要になった為俺に回される事になった。ゆるやかに力を込め剣を握り、軽く振ってみる。
道中で一度試しに持った時は構えることすらままならなかったが、
今はかろうじて装備できるようだった。すぐに腕が震えてきそうだが。

「ま、それもこれもあんたがあそこで引き止めたからだし、これで少し楽になるわね。
珍しくグッドジョブじゃない」

マーニャがぐりぐりと肘を当ててくる。俺は照れ笑いを浮かべていた。
俺が成そうと思っている事。喋れないソフィアの手助けをする。それが、有り金をはたいてまで俺を生き返らせてくれた彼女への、
せめてもの礼であり償いだから。
今迄の道中もそうだし、現在、そしてその先も――いつまでかは、解らないが。



ソフィアの先導が良いのか、探査は順調に行われた。
途中、天井に頭をぶつけて気絶した魔物の額に『にく』と書いてみたり、安置されていた種火を手に入れてみたり。
…いやあ、前者のようなアホな魔物がいる以上思ったより大した事なさそうだ。
種火も普通に置いてあったし。
最後の階段を上る途中、壁にゆらゆらと影が映っているのが見えた。
ソフィアがまず最初に昇り切り、手招きをする。
そこには、不気味な黒い炎を囲んで踊る虎がいた。
しかも二足歩行だ。
俺たちはその奇妙で、陽気な宴に僅かに眼を奪われた。
それまでが順調だった為に、油断もあったろう。


204 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:32:09 ID:EiAPlCEj
「けけけ。ケケケ。燃えろ、もえろ。邪悪な炎よ。その光で全ての船を、沈めてしまえ」

あの魔物を倒して、先ほど手に入れた種火を投げ込めばイエス!ミッションコンプリィィィ!!だ。
ソフィアが駆け出す。それに倣い、俺たちも散会しながら前に出る。
絶妙なタイミングだった。
二足歩行の虎が、躊躇なく黒炎の中に手を突っ込み、こちら目掛けてその炎を投げつけてきた。
二筋の火炎が縦に走り、散会していた俺たちを分断する。
いや、分断するて。思ったより冷静だな。いや、ついていけてないのか?
左右に視線を走らせると、それぞれ炎の壁の向こう側で、ソフィアとミネアが、マーニャとホフマンが、
炎が人を真似たような姿をした化け物と対峙している。
そして、俺の目の前には。
あの、二足歩行の虎がいた。

「けけけけ。此処までやってくるとはバカな人間だ。
丁度良い!この、炎の中に投げ込んで、焚き付けにしてやるわ!けけけけ」

間の抜けた笑いをあげる二足歩行の虎を前に俺は――思ったよりも落ち着いていた。
あの笑い方が余り恐怖を煽らないのもあるが。
どさりと背負っていた荷物を床に降ろし、腰に下げていた鋼の剣を構える。
ソフィアによって使い込まれた剣は、実によく馴染むのだ。
新品を使うより、お下がりにした方が良い、というのは何も金をケチった訳ではなく理に適ったものだった。
…ミネアはともかくマーニャはどうか知らないが。
剣を腰ダメに構え、一歩、踏み出したその瞬間――。

「グオオオオオオオオオオオォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」

――何が、起こったのか。
理解できずに頭が真っ白になる。視界の隅で、ミネアとマーニャが何か叫んでいた気がするけれど。
二足歩行の虎が、遅々とした動きで俺に近づいてくる。
それなのに、それなのに、頭では理解しているのに身体が動かない。
眼前にまで迫ったソレは、俺より頭一つ分大きく、その爪は見るからに剣呑な光を湛えている。
動かない、動けない俺を目掛けて、虎はなんの躊躇いも無く圧倒的で凶悪な膂力を振るった。

205 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:35:01 ID:EiAPlCEj


「く、退きなさい! 炎熱(ギラ)!」

パン!と、勢い良く開かれる鉄扇が合図のように、放たれた炎が扇型に広がる。
だが、橙色の炎はあっさりと人を模った黒い炎――ほのおの戦士に飲み込まれてしまった。

「くぅ〜!私の魔法が効かないなんて…」
「マーニャさん!ほのおの戦士を幾ら倒しても、あの炎がある限り何度でも出てくるかもしれない!
何とかあの虎を…!」
「そんな事言ったって――」

マーニャの目の前には、黒い壁が立ち塞がっている。
今の様子では、此処から虎めがけて魔法を放ったところで、結果は目に見えている。

「氷結呪文なんて、覚えてないわよ…!」

きりりと歯軋りの音が響いた。

206 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:37:33 ID:EiAPlCEj


「―――――!」

嵐のような剣戟が、炎を吹き散らす。
だが、炎はゆらゆらと揺らめいたかと思うと、すぐに再び人を模った。

「ダメです、ソフィアさん!焦ってはダメ!攻撃が荒く――」

ミネアの喚起は今一歩の所で届かず、ほのおの戦士の右拳がソフィアの腹にめり込んだ。
盛大に弾き飛ばされ、床を滑る。ミネアが慌てて駆け寄り、治療呪文(ホイミ)を施した。
剣を杖に立ち上がるソフィアを見て、ミネアはどちらの提案をしようかと迷う。
即ち、犠牲を強いて勝利を得るか否か。
彼女とて、できる事なら全員無事に全ての戦いを終わらせたかった。
だが、現実は時に厳しくて、それがままならない事はこれから幾度あるか解らない。
誰かが嫌な役を引き受けなければならないのなら、自分がやるべきだとミネアはそう思う。
――しかし。
やはり、それは最後の最後であるべきだ。決断を誤れば大惨事になる事であったとしても。

「ソフィアさん。あの黒炎の壁とほのおの戦士は私が引き受けます。ソフィアさんは――」

207 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:40:41 ID:EiAPlCEj


どれだけの時間、気を失っていたのだろう。
此処はまだあの灯台のようで、少し離れたところにはあの虎がいて。ほんの僅かな意識の喪失だったのか。
ずきんずきんと痛む胸に無造作に手をやると、そこにはある筈の鉄のまえかけが無く、生暖かい感触と共にべったりと、真っ赤な鮮血が彩った。
痛い。
先ほどのは、あの虎の雄叫びだったのだろう。身の毛がよだつとはまさにこの事で、
俺は丸っきり身動きが取れなくなってしまった。
怖い。
今迄、自分がどれだけ庇護されていたかを思い知らされた。
この世界で俺はそれなりに頑張ってきたつもりだったけど、それでも俺の傍には常にソフィアが居た。
マーニャが、ミネアが、ホフマンがいた世界で、魔物との戦いを殆ど彼女らに任せっぱなしで来ていた。
そのつけが、回ってきているのだ。
俺はどうしてこうなのか。元の世界でも、俺は人並みに苦労していると思っていた。
こっちの世界に来てからも、荷物持ちに日々の修練と、それなりに大変な思いをし、努力もしてきたと考えた。
それなのに――何のことは無い。俺は常に庇護されていて、それが無くなった途端――痛みを嘆いて、恐怖に震える始末だ。
左手で身体を起こしながら、右手で床を探る。――あった。俺の、剣。
傷は痛いし、魔物は怖い。目の前には俺の身体を傷つける為に存在する、虎の爪。そして、退路も、無い。
それでも――それでも。いつかこうなる事は解っていたから。俺に足りないのは諸々の覚悟だという事をあの洞窟で知った時から。
俺は、敵を殺す。
そこには、魔物だとか人だとか、そういう区別は無い。
戦わなければならないんだ。戦わなければ生き残れない。それは、世界によっては命を奪う事や身体を傷つける事では無いかもしれないけれど。
何かを傷つける事には変わり無い。
痛いと思うことも、怖いと思うことも、止められないかもしれない。
だけど、それで情けなくうろたえる事だけは最後にしよう。無理かもしれない。それでも最後にしたいとそう想う。


208 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:43:34 ID:EiAPlCEj
身体を前に傾けて、一直線に虎目掛けて突貫する。
再び、ヤツの雄叫びが灯台内に響き渡る。だが――俺の足は止まらない。
右手から、強烈な火炎が吹き荒れたかと思うと黒炎を貫き、唸りを上げて虎へと襲い掛かった。
大炎熱(ベギラマ)――黒炎の向こうでマーニャがぱちり、とウィンクする。

「真空(バギ)!」

左手からはミネアの裂帛の気合が響き、巻き起こった真空の刃が黒炎を吹き散らし道を作る。
飛び出してくるのは碧の疾風だ。
まるで羽が生えているかのような跳躍で、人で言う所の鎖骨の辺りに破邪の剣を突き立てた。
痛みと苦悶の咆哮を上げながら、肩に乗るソフィアを弾き飛ばす虎。
――だが、その彼女に向けた意識が、致命。
俺が両手で突き出した鍛えられた鉄の刃は、吸い込まれるかのように虎の首を刺し貫いた。
ごぽり。
口から血泡を漏らしながら、ヤツが最後の爪を振るう。
俺の背中に三本の筋を残し、虎の巨体は床に沈んだ。

ソフィアが種火を黒炎の中心へと投げ入れる。
たったそれだけで、あれほど吹き荒れていた黒炎は散り散りになってしまった。
かろうじてほのおの戦士だけが実態を伴っていたが、ホフマンとミネアによってそれぞれ消滅の道を辿る。

「――やぁれやれ。なんとかなったわねぇ」

鉄扇でぱたぱたと扇ぎながらマーニャがぼやいた。
軽く生死の境をさ迷っていた俺はホフマンに肩を借りてかろうじて立っていた。ミネアが治療をしてくれる傍らで、ソフィアが鉄のまえかけを持って立っている。
虎の返り血に塗れた少女。その時の俺には彼女が美しく見えた。
手を、くるくると跳ねた髪の毛に埋めて頭を撫でると、少女は僅かに眼を細めた。

209 :大灯台  ◆gYINaOL2aE :2005/04/13(水) 02:46:03 ID:EiAPlCEj
「お前は……凄いよな」

俺の呟きに、ソフィアは要領を得ないといった顔をする。
ミネアなんかは、勇者に何を当たり前の事を言っているんだと言いたげにしていた。

「俺も……」

どうしようもなく照れてしまって、それ以上が言葉にならない。
鼻をこすってから、いつもの薄ら笑いを浮かべて誤魔化す事にする。
だがこの時、どういう訳か――俺自身も、そして誰もが気持ち悪いと感じるであろう薄ら笑いを見た筈なのに、ソフィアは力強く頷く事で肯定を現したのだった。

「今より強くなれますよ。きっと」

少女はホフマンの言葉に我が意を得たりといった風に笑うのだった。



HP:48
MP:12

Eてつのまえかけ Eはがねのつるぎ Eパンツ

210 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 02:49:21 ID:5K4PLBtK
>◆gYINaOL2aE、乙。
いやーなんか…言葉が浮かばないわ…
これ本当に、最後まで読んだらオレ泣くかもしんない…

211 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 10:57:08 ID:jUuDvGzt
いやー、すごいね。
たいへんだろうが、さいごまでがんばってくださいね。
つづき、きたいしてます。

212 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 19:10:43 ID:wFvKq9aP
心の底からありがとう。
続き、楽しみにしてるけど、無理はしないで。応援してる。
なんて真面目に感動しちゃって全くこの歳にもなって俺何やってんだろwwww

………きっと、忘れられない物語になる。

213 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 19:14:15 ID:vwzeOixo
一番最初に書いた人の続きを見たいんだが

214 : :2005/04/13(水) 19:44:07 ID:XSSVtv/B
俺も。

215 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 21:09:59 ID:1rhsVexR
まとめてみました。補完よろ。


勇者7 >>7-11,34,42-43

勇者◆WVtRJmfCVI >>55,65-68,108-114,140-146

勇者◆nnvolY11AA >>75-76,85-92,115

勇者79 >>79-82

勇者◆.zipDxMVwg >>93-94,116-118

勇者119 >>119-122

勇者◆4c5D9CKRFI >>127-128

勇者◆gYINaOL2aE >>133-137,147-151,152-156,159-164,169-175,180-190,198-209


どの勇者さんもガンガレ!

216 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 22:34:17 ID:Yrdh/ocX
>>215


しかし、まさかここがこんなに良スレになるとは思ってもみなかった

217 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/13(水) 23:02:07 ID:MYeKqe/h
>>215
乙。もちろん作者の皆様にも乙
>>216
良スレなんてそんなものさ。

そういやあ去年にもよその板でほんの少しスレタイが似た良スレを見たな。
みんな「目が覚める」とかにひきつけられるのか?w

218 : :2005/04/14(木) 02:54:40 ID:sEosDhqm
まぁ、俺としては家庭用ゲーム板の「もし自分の住んでる街がバイオの舞台になったら」の
パクってみただけなんだが…こういう妄想は誰でも一回はするよな…

219 :海〜ミントス  ◆gYINaOL2aE :2005/04/15(金) 00:48:04 ID:g3ssHpzA
広くて大きな母なる海。
美しい海原にゲロを撒き散らす俺。
なんかダメだ。折角決意も新たになったというのになんでこうダメなんだろう。
そもそも俺は船なんて殆ど乗った事が無いんだ。
精々が北海道〜東北間のフェリーくらいで、あの時も沿岸部をちょっと離れただけで酔ってしまった。
あまりの気分の悪さに船室に居る事もままならず、甲板に出てきたのだが、
案の定吐いてしまっていた。
まあ、吐くものさえ吐いてしまえばフェリーの時は多少楽になったので、今回もそれに期待したい。
船足は順調だった。スクリューのついていない帆船の為、風が重要になるらしい。
しかし…乗船してるのは俺たちのみというのはどうなのだろうか…せめて船員がいないと航行にも支障をきたすと思うのだが。

「あんたがやるのよあんたが。ま、全部とは言わないけど」

さいですか。はぁ。
そりゃ全部俺一人にやらせようものなら楽勝で転覆するわな。
暢気に日光浴をしているマーニャから視線を外し、ブリッジの方を見ると、ホフマンとトルネコが何か話している。
この二人、共に商人という事もあって、中々話が尽きないらしい。
特にホフマンにとってトルネコは敬意を払うべき相手のようだった。
まあ、俺やソフィアにしても彼がエンドール〜ブランカ間のトンネルを開通させていなければ、
今頃どうなっていたか解らないのだが。
奇妙な縁と言わざるを得ない。

「汚したら、自分で掃除してくださいね」

大量の洗濯物を抱えたミネアが俺の前を通り過ぎる。
大丈夫。ちゃんと海に全部吐いたから。甲板には漏らしておりません。
それにしても、潮風がウザイ。
情緒を感じるには今の俺のテンションは相応しくないらしい。
太陽は普通に照っているし、風も鬱陶しいくらいにびゅーびゅー吹いている。
まあこの分ならすぐに着くだろう。地図によればそう遠くない。
コナンベリーから南に舵を取り、ミントスの街へ。
処女航海という事もあり、近場の新たな大陸へ行ってみようという事になったのだ。

220 :海〜ミントス  ◆gYINaOL2aE :2005/04/15(金) 00:50:36 ID:g3ssHpzA
すとん、と。俺の眼前に急に現れるのは碧の少女だ。
いやお前は別にそれでも良いだろうがな俺の方はそういう現れ方をされるとびっくりする訳でこんな位置でのけぞったら船から落ちるだr

「――!」

何やら身振りで船の向かう先を指差している。
見張り台に登っていたソフィアのこのリアクション、此処はお約束の台詞を言えるチャンスか!

「陸がみえたどー!!」

違う、どじゃない。どじゃないんだ。肝心な所で噛む己に萎える。
そんなしょんぼりな出来事もあったけど、船は順調に接岸するのであった。
ちなみに船はそのまま放置である。良いのか…。いや、何も言うまい。



ホフマンが出て行った。

工エエェェ(´д`)ェェエエ工なんでやねん!
何やらこのミントスの町にいる爺の元で商人の修行をするらしい。
ちょっと待てと。お前パトリシアどうするんだと。

「可愛がってくださいね!」

俺がかよ!?アホかお前!?
俺はお前がこの一行の最後の良心だと思っていたのに――裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったな!父さんと同じに、裏切ったんだ!
某ロボットパイロット並に相手を一方的に責めてみるが、どうやらホフマンの決意は固いようだった。
一緒に風呂も入った仲のホフマンが去るというのはとても寂しいのだが、夢を叶えようとする友を止める訳にもいかないのか。
これからの旅路を思うと溜息しかでない。しぼむ〜〜。
飴をくれる年上なのに外見は幼いキャラがいれば和むのになと妄想しながら荷物を降ろす為、宿屋に行く。
一行の最後尾で廊下を歩いていると、途中の部屋のドアが僅かに開いていた。
特に意識を向けた訳では無いのだが何気なく、見る、というより視界に入ってしまった、が正しいだろう。

221 :海〜ミントス  ◆gYINaOL2aE :2005/04/15(金) 00:51:20 ID:g3ssHpzA
おまwwwちょ、まwww
俺は余りに動揺してしまってつい前を歩いていたマーニャの手を掴んでいた。
マーニャが何よ?と問うてくるのを、俺はぷるぷると震える指でドアの隙間を指差す。
そこには、とてつもない頭をした老人がいた。
うはwwwこれは久しぶりにクォリティ高いwww
あんな風に禿るってどんな遺伝子www
頭頂部が綺麗に禿げてる上に、髭と揉み上げと側頭部が繋がっている。
俺も最近、額が広くなってきているような気がするので頭に関して心無い事は言いたくない。
しかしあれは…側頭部の白髪が鬼の角のように、まるで意思を持っているかの如く重力に逆らっているのである。
ソフィアのとも違うのだ。彼女のはパーマっぽいのだが、あの老人は真っ直ぐだ。なんと骨のある髪の毛だろうか。
整髪しているのだとしても、老人の何と強き意思の顕現か。
俺とマーニャは二人でテラワロスwwwしていたのだが、その間に荷物を置いたソフィア達がやってきた。
笑いを押し殺している俺たちに怪訝な顔をした後、ミネアがこんな事を言い出した。
なんでも、この宿屋には重病人がいるらしいのだが、それがミネアは気になるらしい。
ソフィア、ミネア、トルネコの三人が目の前のドアに入っていくので、俺とマーニャはドアの入り口付近で待機する事にする。
それ以上近づくと笑いが堪えきれないかもしれないので。
ミネアが老人に話しかける。どうやら、老人の仲間がどんな病をも直ぐに治してしまうという薬を取りにいったらしい。
なんとも都合の良い物があるんだなとニヒリズムに浸りかけていた俺を、ある天啓が呼び戻した。
早速隣のマーニャに小声で話しかける。

222 :海〜ミントス  ◆gYINaOL2aE :2005/04/15(金) 00:52:35 ID:g3ssHpzA
(……もしや、あの頭は病気なんじゃ!?)

(ええ!?そんな…つまり、禿げは病気だって言うの?)

(そんな事はないよ。禿げは病気じゃない。童貞が病気じゃないように)

(それは病気なんじゃないの?)

(違うよ!?童貞だからって病人だとか社会不適応者とみなされるのは俺の世界だけで十分だ!)

((・∀・)ニヤニヤ。まあ良いけどね。後半は何のことか解らないけど)

(そうじゃなくて姐さん。禿げは病気じゃない。だけど、あの頭はちょっと凄すぎる。――そう、禿げこそ、健康な部位なんじゃないか?)

(――はっ、ま、まさか!)

(そう!きっとあの爺さんの仲間は、あの髪の毛をきちんと脱毛する為に神秘の秘薬を求めて旅立ったんだよ!!!)

223 :海〜ミントス  ◆gYINaOL2aE :2005/04/15(金) 00:54:00 ID:g3ssHpzA
俺の素晴らしい推理にマーニャは、な、なんだってーと驚いてくれた後ぷくくくと笑いを噛み殺していた。
そんなアホ話をしている間にもミネア達と老人――ブライの話は続いていたらしく、
どうやら本当の所は、ベッドで寝ている男が病で動けなくなった為にアリーナと言う娘が一人で薬を取りにいったらしい。
だが、その娘が中々戻って来ず、やきもきしていたようだ。
どうにか娘を探し出して手助けをしてもらえないかと懇願された所で、
俺はソフィアに近づき、2,3言葉を交わした後彼女の意志を伝えた。
ブライは喜んで、自分もお供すると言い出し、宿屋の者にベッドで寝ている男の事を頼みにいった。
…それなら最初からそのアリーナとかいう娘についていけば良かったのに。

都合よく、ホフマンが宿屋の番頭に立ち修行を始めたようだったので、
俺たちからも病の男――クリフトの事を宜しく頼み、翌日、俺たち6人は一路万能薬を求めて旅立つことになった。
とりあえず、笑いが堪えられない為にブライをまともに見る事ができない。新手の拷問かこれは。
ツボにはまるという事の恐ろしさを実感しつつ、道中今までとは別の意味で厳しい旅になるかもしれないなと思った。



HP:48/48
MP:12/12

E鉄のまえかけ Eはがねのつるぎ Eパンツ

224 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/15(金) 01:05:39 ID:GjHUF3NS
試演


225 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/15(金) 07:46:15 ID:qcVyr5jp
二人のアホ話にテラワロスww

226 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/16(土) 17:44:44 ID:ACW9K0bk
パンツが変わらない男、素晴らしい頭の悪さだw
マーニャがすげぇ身近な人種に思えてくるこの不思議。これからも頑張って下さい。
そしてトルネコ出番ねぇーw

227 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/17(日) 11:02:43 ID:x50lI8kS
そういやトルネコいたんだっけ
忘れてたw
まあ人質候補1だもんな

228 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/17(日) 18:24:22 ID:hcvZZE/t
age

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/17(日) 18:27:47 ID:qa+1hdz6
びっくりするよな!?人がみんな同じこと言って同じルート歩いて…

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/17(日) 18:39:09 ID:YJ35HqdW
とりあえず教会いってセーブする

231 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:18:22 ID:TovaKWsu
従者の病を治す為、薬草を求めて出立したサントハイム王国王女、アリーナ。
これだけを聞くと中々感動的なストーリーだが、大体において伝わる話とその実態には齟齬がある事が多い。
今回のケースでは齟齬とまではいかないかもしれないが、
いずれにしても――彼女は、この旅を心から楽しんでいた。
彼女にとってみれば、随分と長い間待ち焦がれ、何度も無理やりにその手に掴み取ろうとして叶わなかった願い。
念願の一人旅、である。
ミントスの町から東へ進み、ソレッタの村へ。
道中で現れる魔物をたった一人で撃破し、見事に辿り着いて見せた。
彼女は美しいと言うよりはまだ愛らしい外見であったが、それよりなにより、生気に溢れたその姿が見る者を魅了して止まない。
サントハイム王家には代々、魔力の強い者、それだけに留まらず特殊な力を発揮する者が産まれて来たが、
残念ながらアリーナ姫に魔術の素養は皆無であった。
だが――はたまた、それ故にか。
ただひたすらに強かった。それに加えて未だ成長途中だというのがおかしいのだ。
人は、実のところそれほど無力な存在では無い。
子供や老人でなければ、例えミネアの言う導かれし者では無かったとしても、そこそこに戦えるものは少なからず居る。
しかし、人と魔物を比べた時に、どうしても超えられない壁があるのもまた、事実であった。
そしてアリーナ姫は――導かれし者達の中でも抜群の、それは時に勇者すら超えかねない――才と器を備えた少女なのだ。
現段階の実力で言うならば、噂に名高いバトランドの王宮戦士辺りならば互角かそれ以上の者もいるかもしれないが、
こと、身体的・肉体的な素質に関して言うならばアリーナに勝るものはいないと言っても過言では無い。

232 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:19:21 ID:TovaKWsu
さて、そんなお姫様であったが、ソレッタの村で手に入る筈だったパデキアが既に絶滅して久しい、と言うのには少し困った。
幸いなことにこういう場合に備え、冷気の満ちる洞窟の奥深くに種を残してあるらしいのだが、
そこは現在魔物の巣になっており、村の人間では取りに行く事ができないらしい。
――なんとお誂え向きのシチュエーションだろう。
勇んだ彼女は早速、洞窟へ向かおうとしたのだが、珍しくも一つの思案をする。
果たして、己一人で目的を達成する事ができるだろうか、と。
これが『魔物の棲家になっている洞窟を探検する』だとか『洞窟に篭もって修行をする』だとかなら、
一人で行って戻ってくるという行為自体に意味も出てくるのだが、
今回はあくまでパデキアの種を入手するのが最優先、手段と目的が入れ替わることがあってはならない。
これはブライがいつも口を酸っぱくして語る教えの一つであった。老人がこの場にいたなら感激したかもしれない。
アリーナはブライに甘えている所があるのか、老人が居る場合だと事の外彼の教えを無視して無茶をしたがる傾向があったので。
さて、となるとやはり一人では難しいかもしれない。
事は一刻を争うので悠長に何度も赴く訳にはいかないし、そうなると治癒の術が使えるものは必須である。
魔物を蹴散らして進むのが探査する際に効率的である以上、戦士の頭数もあるに越した事は無い。
洞窟に入る必要があると事前に解っていればミントスで募る手もあったのだろうが――そうすると、今度は道中の速度が下がっただろうし、
いずれにしても過ぎてしまった事をごちゃごちゃと言っても仕方が無いと気持ちを切り替える。
そして、アリーナはたまたまソレッタに逗留していた世界を救う旅をしているらしい戦士一行の手を借りる事にした。
だが――。




233 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:19:56 ID:TovaKWsu

「――逃げ足、速いわねぇ」

ふぅ、と軽くぼやく。
そもそも、鍵のかかった扉をアリーナが蹴破った時点でどうもビクビクしているようだった。
最初は若い娘の頼みだからかへらへらと二つ返事で同行を受けてくれた彼らであったが、
アリーナの予想外の実力と、洞窟内の魔物の強さとに完全に恐れ戦いてしまい――逃げ出してしまったのである。

「ま、良っか。こうなった以上は私が一人でパデキア手に入れてみせるわ…!」

逆境に燃えるタイプなのか、苦境に立たされた後でも彼女の炎は消える所かより燃え盛るばかりであった。


「あ〜!苛々する〜!なんなのこの床は〜!」

ダン!
余りに燃え盛ってしまった炎は捌け口を求め、今回は床に霧散する。
アリーナは洞窟の仕掛けに非常に苦労していた。
どうしても床が滑ってしまって目の前にある階段に辿り着けないのだ。
こういう場合はいつもクリフトやブライが彼女を宥めると共に、仕掛けを解いてきたものなのだが――。
つきん、と痛んだ拳を唇に当てる。
魔物との連戦の際に負った怪我だ。もう少しで、薬草も尽きてしまう――。
その焦燥が、隙を生んでしまう。
突如横合いから巻き起こった大気の変動にアリーナは対処し切れず身体中を切り刻まれた。

「うあ!?痛った〜って――ブライ!?」

いいや、それはコンジャラーである。
コンジャラーと間違えたなどとあの老人が聞いたら最早嘆き悲しむ所の騒ぎでは無いかもしれない。
この間違い自体は良くあるネタなのだが、少し今回は間が悪かった。
アリーナの一瞬の躊躇が、彼女の命を縮める――。

234 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:27:28 ID:TovaKWsu
「せぁ!!」

鋭い剣撃がコンジャラーの首を跳ね飛ばす。
頭と泣き別れになった胴体は、ぐらぐらと揺らいだ後仰向けに倒れた。
アリーナは一瞬何が起こったのか理解できなかったが、目の前に立つ人影に対し反射的に構えを取っていた。

――その、禍々しきは鎧兜。

首から足の先までを覆う全身鎧(フル・プレート)に、顔はフルフェイスの兜を被っている為表情が見えない。
だが、さまよう鎧とも違う――確かに、肉体の気配がするのだ。
それは先ほどの気合の声であったり、息遣いであったり視線であったり。そういった有機的なものをアリーナは本能で感じ取った。
鎧は血のついた剣を横に払う。それが合図であったかのように、アリーナは飛び掛った。
顔を目掛けた飛び蹴り――そして、本命は首元への刺突。
彼女の手には無数の魔物を屠り続けてきた鉄製の鉤爪が光っている。
蹴りがかわされ、続く爪撃。手応えは――無い。いや、浅い。
鉄板の上を滑った感覚。避けられた――そう認識する前に、鎧はアリーナの足を掴み、軽々と放り投げていた。

「――くっ!」

空中で軽業師のような身軽さを発揮し体勢を立て直し着地する。
今一度――そう、アリーナが構え直したときには、鎧は剣を鞘に収めてしまっていた。

「待て。俺は、君と戦う気は無い」

鎧から男の声が漏れる。
アリーナは不服だった。今の攻防は、悔しいがあちらが一本取ったと言わざるを得ない。
身体がまだ動く、いや例え動かずとも、負けっ放しなど冗談では無い――。

235 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:29:11 ID:TovaKWsu
「この洞窟にパデキアがあると聞いた。君は、知らないかな」

だが。目の前の男は、強い。
強者は強者を知るように、アリーナは心と身体、その両方で眼前の鎧――それは、まるで騎士のように見える――を認めていた。
この男と戦って勝てるだろうか。薬を手に入れクリフトに届ける事ができるだろうか。
――できない事は無い。だが難しい、と判ずる。

「解らないわ。私も、探しに来たんだけどね」

「そうか……」

手を口元にあて、思案する騎士。
その人間的な仕草を見て、アリーナはやはりこの男は魔物の類では無いなと感じた。
鎧兜は相変わらず嫌な気配を漂わせていたけれど。

「ね。物は相談なんだけど。私と一緒にパデキアを探さない?」

「君と?」

「そう。貴方、中々強いようだし。お互い、足手まといになる事は無いと思うわ」

「…さっきのは、俺を試したという事か?」

声に不愉快さが混ざる。
ソレに対し、アリーナはあっけらかんと答えた。

「それもなくは無いけど、とりあえず私は相手が強そうなら戦ってみたいのよ。それだけ――ううん、実はもう一つあるけど、それは秘密」

その鎧兜の余りの邪悪さに、つい手が出た。
だが、流石にこれは余計だと思ったし、それにどうしてだかこの男の声音は――暖かいのだ。
闇と光の両方を内包したアンバランスさ、いやそれは実はアンバランスなどでは無いかもしれないが――不可思議なモノを感じる。
そうして、興味を持ったというのが正解に近いかもしれない。

236 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:30:16 ID:TovaKWsu
「……そう、だな。それも良いかもしれない」

逡巡の後、騎士の応えが返る。
こうして、姫君と騎士は共同戦線を張る事になったが、それはよくある英雄譚とはかけ離れたものだった。
洞窟の中を縦横無尽に駆け回り、身体で魔物を屠って行く姫君に、追随し彼女のフォローをいれながら、的確に障害を取り除く騎士。
それは傍目から見れば良いコンビに見えたかもしれないが、以前、滑る床には苦労していた。

「――待て。そこはさっき踏んだぞ」

「え?そうだっけ?じゃ、次はこっちね」

「だから待てと。そこは、見るからにダメそう――」

「え?あわわ…」

「えぇい、仕方の無い…」

意外と面倒見が良いのか苦労性なのか。
騎士もまた律儀に同じ床を滑る、が少し先ほどとは違うルートに焦りを見せた。
段々と近づいてくるのは、ぽっかりと口を空けた落とし穴だ。

「――!?」

騎士は落ちる瞬間、咄嗟に腕を伸ばしアリーナを抱え込む。
金属と床が烈しくぶつかり合う音。そして、無音。
アリーナは、恐る恐ると言った風に鎧の上で身体を起こした。

「……生きてる?私なら、着地できたのに……」

「……生きてはいるが、それを聞いて酷く落ち込みそうだ……」

237 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:34:20 ID:TovaKWsu
ごほっと咳き込みながらも、ずるりと身体を引き摺り壁に寄りかかる。
アリーナも、その隣にちょこんとしゃがみ込んだ。

「少し、休憩させてくれ」

ふぅ、と軽く息を吐く。
そうして、暫しの沈黙が流れる。
居心地が悪い訳では無かったけれど、何かしら喋っても良いかしら、とアリーナは思った。

「ね。…デスピサロって、知ってる?」

――デスピサロ。
その名前を聞いた瞬間に、騎士の様子が豹変した。
手は握りこまれ、ぶるぶると身体が震えているのが解る。
憎悪。焦燥。無力感。それらがない交ぜになったような――。

「知ってるの!?なら、教えて!私は――私は、ヤツに会わないと……!」

「――何故、デスピサロに会わないとならないんだ?」

今度はアリーナが黙る番だった。
時間のみが過ぎて行く。それは大した長さでは無かった筈なのに、二人にとっては永劫にすら近く感じられた。

「…良いわ。全部教えてあげる。私の名前は――サントハイム王女、アリーナ――」


城を抜け出したこと、エンドールの武術大会で優勝したこと、蛻の殻のようになっていた城に凱旋したこと――。
王を含めた城内の皆を探す旅に出たこと、旅の途中で魔物が活発に動き出しているとの噂を耳にしたこと、遠くバトランドではピサロの手先と名乗るモノが子供狩りをしていたらしいこと――。
それが、エンドールの武術大会に出場し、参加者を殺しまわっていた不気味な男、デスピサロと符合したこと。



238 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:37:44 ID:TovaKWsu
「――そう、か」

少女が語り終えるまで、騎士は沈黙を守っていた。
再び流れる沈黙。アリーナは、身じろぎもせず、じっと待った。

「……今は、まだ、教えられない」

「どうして!?」

待った挙句の拒絶の言葉に、アリーナはいきり立った。
掴みかかるかのような勢いで、騎士に詰め寄る。だが、彼は憎らしいほどに冷静だった。

「――デスピサロは、俺よりも遥かに強いからだ。君をむざむざ死なせたくない」

アリーナの瞳に炎が宿る。ぎり、と歯が軋む音が響いた。
余りの悔しさに、涙が出そうになる。だが、この場で、この状況でかんしゃくを起こす程子供にもなれなかった。
騎士は、静かに手をかざし、アリーナに上位治癒(ベホイミ)を施した。

「俺は未だ身体が動かない。――お前も、急いでいるんだろう?」

アリーナの脳裏に今もまだ、病床で苦しんでいるであろうクリフトの顔が思い浮かぶ。

「――いいわ。だけど、私が戻るまで此処で待ってなさいよ!?」

飛び跳ねるように駆けて行く少女を見送り、騎士は小さく嘆息した。
真っ直ぐな少女だ。お供が常に傍にいてくれた、というのも大きいのだろうか。
――あの少女からは怨嗟、憎悪などが全く視えなかった。今の己には、存在さえすればはっきり視える筈なのに。
それらが無い筈は無いのに――それ以上の、何かで覆われているかのよう。
似たような境遇にありながら、違うものだなと感じる。
だがそれは決して嘆く事では無い筈である。――それとも、そう思うことで自分を肯定したいのだろうか。どうしようもなく愚かな己を。

239 :幕間 princess & knight ◆gYINaOL2aE :2005/04/18(月) 02:38:32 ID:TovaKWsu



結局、パデキアの種は見つからなかった。
アリーナがそれらしき場所に到達した時には、既に箱の中身は空っぽだったらしい。
騎士はがっくりと肩を落とす少女に、せめて町まで送っていこうと伝える。
瞬間転移(ルーラ)で、一気にミントスへと戻った二人は、町の入り口で暫し見詰め合った。
そう長い時を共にした訳ではない。
だが、何かお互いに感ずるものがあったのか。

「――助かったわ。ごめんね、パデキアを手に入れられなくて」

「気にするな。こっちはそれほど深刻な状況じゃない」

「そう――良かった、のかな?」

えへへ、と笑うアリーナであったが、騎士にはそれが明らかに無理をしていると解ったから。
だから最後の問いにはこう答えたのかもしれない。

「ねぇ。また、会える?」

「――ああ。会えるかもしれないな」

アリーナは嬉しそうに破顔した。
それは、少なからず少女の影を吹き飛ばす事に成功したようでもあった。

「うぅん、絶対に会うわ!数少ない手掛かりだもの!次に会う時には、貴方を圧倒してみせる!!そうしたら、ちゃんと喋ってもらうからね!!」

そうして、姫君と騎士はそれぞれ宿屋へ、隠れ里への帰路につく。
この二人が再度出会うその時は何時になるだろうか。

                                                    (幕間・終)

240 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/18(月) 03:03:16 ID:cprAeBjf
続きが気になる。毎日が楽しみです(つ∀`*)


ってか
幕間って何ですか?

241 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/18(月) 10:20:49 ID:Rd4rAwiP
いやーすばらしい

>>240
まくあい。まくまじゃないぞ。
意味はそのまま劇などの休憩時間
この場合は主人公目線じゃないときって感じかな?


242 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/18(月) 14:17:15 ID:cprAeBjf
>>241
dクス(゚∀゚)!

243 : ◆nnvolY11AA :2005/04/19(火) 20:57:59 ID:5VHjimg9
神降臨してますな。
自分もなんか上で纏めてもらって嬉しいです
・・・でこのトリップに来たのも理由有りなんだけど
上の続きを書いて良いですかね?

244 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/19(火) 21:02:27 ID:TwzcdfNc
鎧の男、なんとなく誰だか予想できつつも口には出さないのがマナー!
間違ってたら恥ずかしいしw

それにしても、うん。いかにもアリーナだ。感動。
キャラが生き生きしてて楽しいです。続き楽しみにしてます。

245 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/19(火) 21:38:34 ID:XUqHm0dV
>>243
おk

書き師さんみんながんがれ!

246 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/19(火) 21:40:51 ID:yFXcknoa
>>243
こちらですね。

勇者◆nnvolY11AA >>75-76,85-92,115

楽しみにしてます。

247 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/19(火) 23:19:36 ID:W/8GlVqk
>>244
>間違ってたら恥ずかしいしw
お茶目でワラタ


248 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 18:53:58 ID:y7M81vVg



249 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 20:39:48 ID:nWjj/hmV
>>244
俺は誰だか分からない。
ドラクエ4のキャラ?
だったらやったことないからわかんないや。

250 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 20:47:03 ID:uS7qrlJy
>>250
伏線は張ってあった、と思う
いや、俺もあってるかどうか分からんけど

251 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 21:00:15 ID:vIG2MhsT
ここは黙って待つのが吉

252 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/20(水) 23:28:23 ID:DUKWxLE7
スレタイの日本語がおかしい件について

253 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:20:50 ID:8aXVJPB1
夜の帳が降りた海は怖い。
まるで、闇が蠢いているかのように俺には思えた。
いや、これは比喩ではないな――本来、夜の闇は動いたりしない。だが、確かに船の縁から見える黒はゆらゆらと蠢いているのだ。
海は海である筈で、夜の闇とは別なのだけど、では海もまた闇を所持しているのだろうか。
俺は所在無げに船員結びの練習をしていた。
目の前には、舵を操作しているトルネコがいる。
このトルネコという男に、俺は同じ匂いを感じ取っていた。
即ち――足手まといの匂いを。
と、マーニャに言ったら思いっきりバカにされた。
船の所持者で商売に長けてて道具の鑑定能力があって宝を見つける感覚に優れている相手と勝負する気かと。
俺はごもっともぉ!と叫び、信長に仕えるサルのように平伏した。
どうやらこの船でのヒエラルキーは

頂点:マーニャ、アリーナ
第一層:ソフィア、ブライ
第二層:ミネア、クリフト、トルネコ
最下層:俺

と、なっているらしい。さて、練炭はどこにあったかな…。
新参たちにも余裕で抜かされていく己に絶望しながらも、考えてみるとそれ自体はいつもの事だったので、
あっさりと立ち直る。
妙な所でタフネスを発揮した後、できた結び目をトルネコに見せた。

「お、良いですね」

トルネコは、一度しっかりと結べているかを確認した後、簡単に解けるかの試行をする。
はらりと無くなる結び目に、合格です、と笑みを浮かべた。
俺は引きこもり体質な為、人見知りが激しいのだがトルネコとはここ何日かでようやく普通に接せられるようになってきた。
このトルネコという男、ホフマン並かそれ以上に――できた男、というか。人の良い男というか。
いわゆる、商売に向いていそうな性格にはとても思えなかった。

254 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:21:47 ID:8aXVJPB1
「ねぇトルネコさん。ミントスを出てから、マーニャとミネアの様子、ちょっと変すよね」

いくら人が良い男が相手だとはいえ、彼は三十路を越える恰幅のいいオヤジである。
しかも、なんと妻に子供までいるらしい。
――つまり、非童貞ってことだよ!!もうだめだ。この人には絶対に敵わない('A`)
一度でも、同じ足手まといじゃないかなどと思った俺が間違っていましたぁ!!!
物凄い劣等感と、目上の相手にはそれなりの言葉遣いをという常識が相まって、敬語とは言えない体育会系用語で話しかける。

「んー……。そうですねぇ。ええ、私もそう思います」

同意を得られた俺は、やっぱりそうなのかと少し考え込んだ。
現在、俺たちはミントスの町から船で西に進路を取り、キングレオと言う名の城を目指している。
パデキアの洞窟でブライの言っていた娘と遭遇した後、彼女を尻目に首尾よく種を手に入れた俺たちは、ソレッタに戻り村長(実は国王らしいが俺は認めていない)にパデキアの種を渡した。
村長がパデキアを植えると、まるでジャックの豆の木のような非常識さでパデキアは成長した。
まあ、あれは物語だから許される訳だが…。
成長したパデキアの根っこが薬になるという事で、分けてもらった俺たちは急いでミントスに戻る。
洞窟で遭遇した娘、アリーナ(姫らしいが俺はこんなおしとやかでないお姫様は認めない)が何故か先に戻ってきていたりもしたが、
とりあえずはパデキアの根っこをクリフトに飲ませる。
煎じもしないで無理矢理飲ませようとしたアリーナとマーニャには、絶対に看病してもらいたくないなと思った。
いやいや、そんな心配はいりませんなwww自意識過剰wwっうぇwwwそんなシチュエーションはありえないwww

「お恥ずかしい…姫様を守るべき私がこのような有様だったとは…」

パデキアの効果は絶大で、クリフトの容態はみるみる良くなった。
ふと思ったんだが、クリフトを殺して生き返らせるってのはダメだったんだろうか?
…いや、もし俺が病気になって面倒だから殺して生き返らせよう!って言われたら泣いちゃうけどさ。
――しかし俺たちは、時に人道を無視してでも成さねばなならぬ事があるのではないだろうか!
今では無い事だけは確かだがー。

255 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:22:32 ID:8aXVJPB1

「いいのよ、クリフト。こうして無事治った訳だし…。さ!デスピサロを探す旅を続けましょう!」

――デスピサロ。
その名を聞いた途端、ソフィアが反応した。
それは声無き声で、宿屋の一室に居た全員を凍りつかせる。
デスピサロ。デスピサロ。――――デスピサロ。
なんと不吉な名前であろう。
何が不吉かなど解る必要は無い。この、ソフィアという優しく明るい少女に此処までの変化を促すという、ただそれだけで十分だ。
畏怖と、そうして僅かばかりの嫉妬を覚える。

「…どうかしたの?」

全員が息を呑む中、かろうじて沈黙を破ったのはアリーナだった。
俺も飛んでいた意識を取り戻し、差し障りの無いように説明する事にした。
ソフィアの居た村が魔物に襲われ、その魔物を率いていた者の名前がデスピサロと言うようだ、と。
喉が、異常に渇いていて喋り難い。

「じゃあ、ソフィアもデスピサロを!?」

「…以前、勇者の住む村がデスピサロに滅ぼされたそうです。もしや、ソフィア殿が…」

そう、ソフィアはずっとデスピサロを追ってきていたのだ。
彼女は喋れないから、ことさらにその意思を主張するような事は無かったけれど。
魔物たちが敬称をつけて呼んでいた存在。
そして、アリーナ達もまたデスピサロを追っているらしい。

「…そうだったの…。うん!よし、じゃあ一緒に探しましょう!旅は多い方が楽しいしね!
3人だろうが9人だろうが変わんないし!」

256 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:30:57 ID:8aXVJPB1
ブライが、姫、パトリシアは馬の名前ですから8人と1匹ですぞとツッコミをいれる。
いや、ツッコミいれる所はそこなのか?…俺はちらりとミネアに視線を走らせた。眼で、良いのか?と訊ねる。
占い師の娘は小さく頷いた。
――つまり、そういう事。
これは偶然なのだろうか?それとも――運命とでも言うのか?
ミネアならば、それで納得するかもしれない。マーニャは懐疑的だろう。トルネコはどうだろう?
何に対する疑惑かすら解らない疑念に囚われていた俺を、突然の来訪者が呼び戻した。

「お待ちください!悪いことだとは思ったのですが立ち聞きをしてしまいました。
ソフィア様が世界を救ってくれる勇者様だったとは…。
以前、この宿に泊まったライアンという者が勇者様を探していたのです。
確か、ライアン殿は遥か西の国、キングレオに行くと申しておりました……」

こうして俺たちは再び船上の人となり、新たなる戦場を目指している訳である。
……。今のはね!船上と戦場を(略
それにしても、キングレオに行くと決まった時からマーニャとミネアの様子がおかしい。
なんだかんだ言ってあの姉妹と付き合いが長いのは俺とソフィアだし、聞くべき事は聞いた方が良いのかもしれない。
俺はマーニャとミネアを探す前に、予めブライに今日の魔法の授業は休みたい旨を伝えることにした。
ミントスの町でブライが一行に加わってから、俺はずっと講義を受けている。
マーニャの抽象的な教え方とは少し違ったより理論的な話らしいのは解るのだがやっぱり難しい。
俺がブライの部屋を訊ねると、中から話し声が聴こえてきた。

「だから……の……圧縮……」

「氷結系は……あくまで……振動を……参考にはなるかもしれぬが……」

「いいから教えなさいよ!」

所々聞き取れなかったためと、扉をノックするため近づいたのだが突然の大声に俺は口から心臓を吐き出す。
いや、吐き出しそうになる位ビックリした。
その為、続いて開け放たれた扉を俺は避ける事ができない。

257 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:31:58 ID:8aXVJPB1
「ぎゃっ」

低い鼻が更に低くなる不幸を実感する。
マーニャは、鼻を抑えてうずくまる俺を見て一瞬、すまなそうな顔をしたがすぐに、

「――何やってるのよ、邪魔よ。……ああ、あんた、なんかすっかりあのお爺ちゃんに師事しているようね。
ふん……ま、私だって別に好きであんたなんかに色々教えてた訳じゃないしこれで清々するわ。もう二度と私にものを訊ねるんじゃないわよ!!」

一方的に怒鳴り散らしたあと、ずかずかとその場を立ち去るマーニャに、
俺は呆気に取られてしまってぽかーんと見送ってしまった。

「大丈夫かの?」

部屋からひょっこりと顔を覗かせたブライに、俺は何があったのかを訊ねた。

「ふむ。いやなに、炎を更なる密度で圧縮する法を問われたのでな。…あの小娘がワシにものを訊ねるなど明日は雪かもしれぬのぅ。
まあ知っての通りワシは氷結の呪がメインでな。その前置きをした途端、あれじゃよ」

258 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:32:28 ID:8aXVJPB1
むー。マーニャらしくない…事も無い気がしてアレだな。気分屋だからなあ。もしかしたらあの日とかか?
とりあえずは、ブライにマーニャとミネアの様子を見る旨を伝えると、すんなりと講義の欠席を許可してくれた。
普段はやれ炎は雑だとか年寄りの冷や水だとかで言い争っているブライとマーニャだが、
やはりというか、それ故にというか、どちらかの様子がおかしいと困るものなのだろうか。
ブライは病み上がりの為に念の為にまだ安静にしているクリフトの様子を見に行った。
船の中を歩く途中、先ほどの一件からマーニャに出会っても話もしてくれないかもしれないなと考え、途中でソフィアを引っ掛ける事にする。
勇者様が一緒なら、無下にはできまいという打算である。
ソフィアの部屋を訪ねると、彼女はアリーナと一緒に何やら遊んでいるようだった。
何やら示し合わせたように笑い合う。
俺はそれを見て、小学生の頃俺が教室に入るとクラスメイトがこちらを見てクスクスと嫌な笑いを漏らしていたシーンを思い出した。
背中に嫌な汗が浮かぶ。だがその汗も、ソフィアが目の前に来て『どうしたの?』と小首を傾げると、すっと引いてしまった。
アリーナもその隣でにこにことしている。ソフィアもアリーナも、とても良い子だ。
彼女たちの笑顔に悪意は感じられない。俺は嫌な思い出を頭を振って隅に追いやる。
事情を説明すると、ソフィアだけでなくアリーナもついてくると言い出した。
まだ行程を共にして日が浅い、というのを逆手に取り、よりお互いを知る方が良いと言うのだ。
その尤もらしい台詞に、俺はつい首肯してしまう。

マーニャの部屋を訪ねてみたが無人だったので、ミネアの部屋を訪ねてみる。
はたして、そこにはジプシーの姉妹が揃っていた。

「……はん。若い子二人も侍らせていい気なものね」

259 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:38:42 ID:8aXVJPB1
マーニャの開口一番がそれだ。俺だけじゃなく、ソフィアやアリーナに対しても失礼なその台詞に、俺は失望感を覚える。
面倒だ。今のマーニャは周り全てが敵に見えているのだろう。
俺はこの手の煩わしい事が大嫌いだった。
例えば、悲しげに説得する。例えば、怒鳴りつけて相手を諭す。
そのどれもがまるで滑稽だ。
そもそも、様子を見るなんていうのが間違っていたんだ。俺は、そういうキャラじゃない。
家族が相手だろうが、友達が相手だろうが、他人の悲しみを共有するのは俺には辛過ぎる。
自分のそれだけで手一杯なのに、どうして他人のそれまで背負う事ができるんだ?
苛々する。
まるで世界の不幸全てを背負ったような顔をするヤツを見ていると。
俺だって――俺だって、こんな訳の解らない世界にいきなり放り出されて――。

――いや、違う。

俺は、俺の事情を誰にも話していない。話した所で理解してもらえるとも思えないし、逆に警戒されてしまうかもしれないから。
だから、他人に俺は理解できない。それは仕方の無い事だ。俺の責任である。
俺が理解されない事なんて、今はどうでも良い事だ。こっちの気持ちも知らないで――それは、子供の理屈だ。
だけどどうしても辛い事があると――そう、思ってしまう事は誰にでもある事なのかもしれない。

「マーニャ……。話してもらえないと、俺たちには何も解らない。
あんたたちにとっては、余程の事なんだと思う。だけど、アリーナを、ソフィアを見てくれ。
俺に対してならまだ良い。だけどこの子達には、あたらないでくれよ」

「…………」

長い沈黙。
そうして暫く経った後、ミネアがマーニャの肩に手を置いた。

「姉さん。話すわね、キングレオでの事」

マーニャは肯定も否定もせずに、くるりとこちらに背を向けた。
それをミネアは無言の肯定と取ったのか、彼女は一歩前にでて、ゆっくりと語りだした。

260 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:41:19 ID:8aXVJPB1
「私たちの父、エドガンは錬金術師でした。父は、研究の途中偶然にもある発見をしました。
進化の秘法、と呼ばれるそれの具体的な内容は私も、姉も解りません。……父はそれをよくないモノと判断し闇に葬ろうとしました。

ですが……弟子であったバルザックに父は殺され、進化の秘法はバルザックに持ち去られてしまいました。
……私たち姉妹は父さんのもう一人の弟子だったオーリンと一緒に、父さんの仇を討つ為にバルザックを追い詰めたのですが……。
……あいつは、進化の秘法でキングレオの王子に取り入っていました。王子はまるで魔物のような力を手に入れ、
クーデターを起こし父王を幽閉しました。
……バルザックを追い詰めるのでへとへとになっていた私たちはキングレオの王子――今は、王ですね――に敗れ、
牢屋に放り込まれました。同じく幽閉されていた父王の協力もあって、何とか脱出できたのですが……その時に、オーリンが……」

一度言葉を切り、視線を斜め下へと落とす。
敗戦の記憶、仇を目の前に、逃げ出すことしかできなかった思い出。
そうして、大事な仲間を置き去りにした悔恨――。

「私たちはハバリアの港が封鎖される直前に船に乗り込み、エンドールへとやってきました。
そして…勇者様に出会う事ができたのです」

落としていた視線をソフィアに向ける。
その瞳には、年下の少女に対して一種の崇拝のようなものすら見て取れる。

「今度は、負けません。ソフィアさんに加えて、導かれし光の持ち主が6人も集っているのですから」

軽くトリップするミネア。当然、そこには俺は入っていないのだが仕方が無いか。
ミネアは決して悪い人間ではないし、普段は俺に対してもとても暖かく接してくれるのだが――。
こと、この予言めいた導かれし者たちの事になると、少し他に何も見えなくなるようだ。
それにしても…この姉妹も、仇討ちが主目的だったのか。
ソフィアもまた、仇討ちをする理由は十分だし、サントハイム組はどうなのだろう?…サントハイムの良い噂は、正直な所一度として聞いた事が無いのだが…。
トルネコはそういったものとは無縁なのか。後は俺もだがまあ、俺の事は置いといていいだろう。

261 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:42:34 ID:8aXVJPB1
俺はちらりとソフィアへと視線を転じた。
何処か、張り詰めたような雰囲気。ソフィアはいつも真面目で、期待されればそれに応えようとする。
俺にはそれが少しばかり危うく見えるのだ。
言うべきか、言わざるべきか。だが、この機会を逃してはこれから先いつ話せるか解らないから。

「なあ…あのさ――」

「ミネア。ちょっと勇者ちゃんに依存し過ぎ。これは、結局私たちの問題なんだからね」

突然、マーニャが割り込んできた。俺の台詞が…!

「とはいえ、多分手伝ってもらう事にはなる、かも、しれないけど、ね。ま、その時は頼むわ」

「OK、任せといて!悪党をのさばらせておく訳にはいかないし、そこそこ強そうだしね。腕が鳴るわ…!」

アリーナの場合、多分戦えれば何でも良いんだろう。俺はいつ彼女がオラ、わくわくして来たぞ!と言い出すかと気が気でない。
そしてマーニャは――やはり、彼女は彼女だった。
女性陣の中で一番年上で、一番大人でもある。いつもはだらしなく、ミネアに怒られてばかりだが、決して気遣いが無い訳では無いのだ。

「ソフィアさん、ごめんなさい。…本当に正直な話をするなら、私たちは私たちの仇討ちにソフィアさんを利用しようとしているのかもしれません。
いえ、事実そういった側面があるのは間違いない事ですから…」

ミネアの謝罪の言葉に、ソフィアはふるふると頭を振った。
そうして、足りない言葉の代わりにミネアの手を取り、しっかりと握り締める。
俺は、彼女の心境を代弁する事にした。

262 :海〜キングレオ ◆gYINaOL2aE :2005/04/21(木) 01:49:13 ID:8aXVJPB1
「エンドールであんたたちに会えなかったら俺とソフィアでどうなってたか解んないしな。
それに、ソフィアにしてみれば持ちつ持たれつってとこもあるかもしれないし…。
ま、俺は勇者だなんだって言ってまだ小娘のこいつによっかかるのはどうかねえと思ってたけど――けど、ま、あんたたちはそれだけじゃない」

ミネアが、目頭を指でそっと拭う。
俺はその仕草にみっともなくうろたえた。いかん、何かおかしな事を言ってしまったのだろうか。

「ミネアを泣かしたわね…全く、私の下僕の癖に最近調子づいてない?
あんた、今度から私の事もちゃんと師匠(マスター)って呼びなさいよ。あのお爺ちゃんにだけ先生だなんてつけるのはずるいわ」

いつから俺はお前の下僕になったんだとマーニャと口論が始まる。
最初から結果の見えてる戦いだ。マーニャはヒヒヒと笑いながら俺を煽るし、俺は俺で少しばかりムキになっているフリをする。
そんな餌で俺が釣られクマー!と言うヤツだ。
それを見てソフィアとミネアが笑い、アリーナもまたその『お約束』を理解する。
そう、こういう関係。俺は、少なからず居心地の良さを感じているのかもしれない。


HP:58/58
MP:24/24

Eはがねのつるぎ E鉄のまえかけ Eパンツ

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/21(木) 03:42:14 ID:aPfZleI1
携帯から毎日拝見させていただいてまつ。もう、神ですな(;´д⊂ こんなに毎日みるのが楽しみなスレははじめてよ。

264 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/21(木) 07:18:16 ID:N3lS3HmZ
だいぶレベルが上がったねー

265 :宿屋inDQ8 ◆nnvolY11AA :2005/04/21(木) 20:18:58 ID:YY2M+cvq
トラペッタを出た俺は、日が暮れる前を目標にリーザス村を目指していた
道中、半分羊のようなキモイ人間が殴り掛かってきたが慣れない手つきながらも
ひのきの棒で殴りつけ、何とか進む事が出来た。
が、そんなへたくそな戦闘のせいで日没まで1時間足らず、というところまで来てしまった
ようやくリーザス村に辿り着いた時には、既に辺りは暗くなっていて20:00くらいになっていた(そっちの世界でだが)

門の前に差し掛かった時何やら馬車が止めてあった
身分の高い奴でも居るんだろうか・・・俺は金持ちとゴキブリが大嫌いなんだ。全く・・・
中には従者のような奴が居るようで、中からトンカチで金属を叩く音がした。何をやってるんだろうと俺は、中を覗いてみた

!!!

あわわわわわ・・・・ナメック星人が鍋を叩いてるよ・・・意味不明・・・
「これだけでも持って来て正解じゃったかもしれんな・・・
あのようなことが起きても、チカラが残ってるとは先代も良い物を手に入れたのう」
と、独り言を言ってるところからすると年老いてるようだ
・・・って何、冷静にコイツの観察をしてたんだ!

関わらない方が良さそうだな・・・
そう思って村に入ろうとした瞬間───
「ん?何の用じゃ?」

も  し  か  し  て  俺  で  す  か  ?  そ  う  で  す  か


HP16
MP 3

習得呪文
ホイミ

Eひのきのぼう E皮の盾 E私服

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/21(木) 23:45:38 ID:Fx0zKn5C
>>265
イイヨイイヨーすごくイイヨー

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/23(土) 06:03:26 ID:shVBQeOw
いろんなドラクエの世界が見れイイネ(*´Д`)
できることなら、Vの宿屋で目覚めたい。
そして遊び人になってルイーダに昼間から入り浸り、でも結局することないから
掃除なんかしちゃってね。勇者様からご指名かかるまで、毎日をマターリ過ごすのさ。



  
        ああニートがうらやましい・・・orz


268 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/23(土) 14:56:28 ID:yiM0PNw5
馬鹿だな
ニートなんて煮ても焼いても食えない金のかかる家畜みたいなもんだ


269 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/23(土) 21:23:24 ID:wHmVP2LX
>>◆gYINaOL2aE
みんなが生きてる。それだけで俺はこんなにも嬉しい気持ちだ。

>>◆nnvolY11AA
まだなんとも言えないけど、それぞれのドラクエ、楽しみにしてる。頑張れ。

270 :宿屋inDQ8 ◆nnvolY11AA :2005/04/24(日) 09:44:25 ID:xEqL1zoU
振り向いて下をみると、緑色の魔物が目の前に居た。何時の間に・・・
「見慣れない格好の者じゃな。察するにお前はこの辺の者ではないな?」
喋る魔物も居るもんだな・・・弱そうだから少し話を聞いてやるか
てか、周りから変に見られてたんだな、俺って・・・
まぁ、俺の本来の世界の格好だから奇妙な格好にも見えるのはおかしくないだろう
更に魔物の言葉は続き
「旅の者なら、一つ聞きたい。この辺に道化師のような格好した奴を見なかったか?」
道化師?あぁ、ピエロみたいな奴ね。
「いや、見た事が無い。それよりお前は何なんだ?
村の前で常駐して、お前みたいな魔物が村の近辺に居たら傭兵かなんかに襲われるのがオチだぞ?」

どうやらこの魔物はトロデ──トロデーン城という城の城主らしい
元々は人間だったが、道化師──ドルマゲスという魔法使いによって、この様な姿になったらしい
城もそいつのかけた呪いにより人々がイバラとなり、魔物の蔓延る城に化したのだそうだ
さっきまで気づかなかったが、馬車に繋いである馬もじつはこのおっさんの愛娘で
トロデーン城と同じような大きな城の王子と結婚する筈だったらしい
それで生き残った兵士エイトと道中で出会った山賊と旅をしているらしい

あまりにも言ってる事が生々しいので、俺も嘘とは思えなくなってしまった
そして、とても彼らが哀れになってきた
俺にはバトルレックスを倒すという目標があった
しかし、それは単なる憎しみに駆られた復讐ではないのか?
倒しても何になる?───小さな満足感に浸るだけだろう。
生物を殺す、この行動を楽しみにしていた自分を想像したら自分が怖くなってきた
宿の寝床に就いた俺は、イバラ化した人間を想像して中々眠る事が出来なかった

周りに迷惑をかけるかもしれないが・・・・
どうやら新たな目標が出来たようだ───



271 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 13:30:32 ID:V5YC8S0E
携帯から参加…。病院に入院してんで暇で…。下手でも書いていいですかね?

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 14:08:00 ID:xBnPMGBE
>>271
病院からDQ世界へ……
いいじゃない!レッツゴーレッツダイヴ!!

273 :いちおDQ3 :2005/04/24(日) 15:36:44 ID:V5YC8S0E
目の裏側の網膜に蒼い光が散ったような気がした。
それは赤になり緑になり様々な光の共演をみせる。美しい。
と、唐突に周囲が色彩を帯びる。光が白い−
目の前には木で出来た天井があった。ここは−どこだ?
体をおこす。病院で寝てたままの、パジャマ姿。腕には、点滴が入れやすいようにと埋め込まれたままのチューブがあった。
と、窓の外に目をやると城が目に入った。なんだ?インド系?拉致?
テンションが上がって思わず舞をおどってみる。足を挫く。痛い。
まだ入院してなきゃいけない体だ。体力は回復してないらしい。それはそうかと納得してみる。夢にしてはリアルだ。
先ずは現状把握か、とりあえず部屋を出る。
下に降りるとオヤジさんがいた。目があった。筋肉隆々な相手にはへりくつだるのがアイデンティティ。へこへこキョドりながら頭をさげてみる。
「おはようございます、今日は良い天気ですよ。勇者アレルの旅立ちに相応しいね。」
…はぁ?!勇者って…。あなた大丈夫?…とは口がさけても言えないチキンな俺。
城の方から歩いてくる一団が…いる。

274 :いちおDQ3 :2005/04/24(日) 15:37:44 ID:V5YC8S0E
…書いてみると神の凄さがわかりますね。
すごいなぁ。腐った文ですまんです。

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 17:05:00 ID:ncYjjApN
>>274
いい感じだよー。
ガンガレ!!(入院生活も)

276 :273の続き :2005/04/24(日) 21:50:34 ID:V5YC8S0E
先頭に立つのは黒髪の男。それを2、3人の兵士が護衛しているようだ。
彼がいわゆる勇者なのだろう。その存在感たるや!これがカリスマという奴なのだろうか。
道なりに進んでくる彼をじっと見ていたら、目があった。慌ててそらし、ちらっと見るという乙女心を出してみる。
「君は…?」
…おいおい、話しかけられましたよ!どうしよう。よりによって何故俺が…。
「見慣れない服装だね。どうしたの?」
透明な、声。
そうか、見慣れない服装で立ってジッと見てくる奴がいたら、目にもとまるよね。
カリスマが近づいてくるのに焦りまくり脱兎の勢いで逃げる俺。
とりあえず武器屋の裏まで逃げるのに成功した。

どうしたもんかね…。一人ごちる。とりあえず、俺は第三世界に放り出されたらしい。
帰りたい。授業始まったばっかりだし、彼女にも会いたい。親父とも仲直りしたばかりなのだ。
では、どうすればいい?彼の事が頭をよぎる。それでも、彼なら−−あんなカリスマを持つ彼なら−−何とかしてくれるんじゃないか。
甘い考えだ。結局は他力本願なのだ。
だが。この現状、この世界で無職となった俺が一人でなんとか出来るのか?
とりあえずは、彼についていこう。他は後で考える!
考えをまとめた俺は立ち上がった。兵士がルイーダが云々、酒場が云々言っていたのを聞いていたのだ。


277 :273の続き :2005/04/24(日) 21:52:04 ID:V5YC8S0E
酒場は町の西にあった。入り口を押そうとした時ふと考えた。
…なんて言ってついていこう。


石化した。


…取り柄は…平凡な運動神経しかない俺には無い。偏差値はそこそこあったが大学に入ってめっきりバカになった。
内職をする手先の器用さもない。…荷物持ちする体力もない。
どーしよー。

冷や汗たらたらになっているといきなり向こうから戸が引かれた。
「あれ、さっきの君…」
うわ、ご対面だ。
「あん?なんだこいつ?」
…筋肉ムキムキ、斧をかついだ男が後ろから覗く。
いつもの癖で逃げ腰になっていると、
「どうなさったのですか?」
二人の女が覗いた。一人は幼い感じの、優しそうな人。もう一人は釣り目のちょっとキツそうな人。


278 :273の続き :2005/04/24(日) 21:53:43 ID:V5YC8S0E
「訳ありみたいだね、話してごらんよ」
勇者が話しかけてくる。




とりあえず、現状を話した。その上で頼む。連れていってくれと。
まず反応したのは、筋肉。
「冗談じゃねぇ、俺らは魔王バラモスを倒そうって旅なんだ、遊びじゃねぇ。見た目強そうでもねぇし、呪文を使えるわけでもねぇんだろ?」
狐も
「魔法協会にもいなかったわね。呪文使いってわけないわ」
もう一人の優しそうな女は
「私たちの旅は危険なのです。ここ、アリアハンは福祉もしっかりしてますし、教会に行けば保護もうけられますよ」

…四面楚歌か。まぁ分かってはいたのだが、どうしよ。

279 :273の続き :2005/04/24(日) 21:54:22 ID:V5YC8S0E
モジモジしていると勇者が目を見つめているのに気がついた。
「不思議な目だね。僕らとは違う目をしてる。」

…勇者ホモ説急上昇!?わかったよ、何発だ、耐えてやるから連れてってくれ!…初めてだからやさしくね。

なんてバカな事を考えているうちに勇者は三人を振り返って言った。
「僕らはこれから今まで誰も成し得なかった、魔王を倒しにいく。彼は異世界から来たのだと言う。これはルビスの導きかもしれない。ルビスの使途に無下な態度はとれないよね?」
…なんか話が大きくなってる気がする。…三人の俺を見る目が変わったような…。イヤな予感。慣れない視線。見知らぬ天井とくれば雨、逃げ出した後…逃げんのかい!
自分に突っ込んで妄想している間に話は進んだようだ。


「えぇと、君。僕らに力を貸してくれるんだよね?よろしく、僕、アレル。」
…なんか良く分からないが、連れていってくれるらしい、良かった良かった。


ここから俺の冒険は始まる−そして伝説へ−

HP.12
MP. 3
Eパジャマ

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 22:15:34 ID:V5YC8S0E
どーですかね。なんか神の凄さが良くわかりますた…

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 22:21:35 ID:GJrGkOzC
ホントですね

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 22:33:30 ID:xBnPMGBE
志村、点滴点滴ー!!

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 23:19:25 ID:Ph2OCKZe
>>281
まあそういうなよ
文才ゼロの俺からしたら十分神の領域だ

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/24(日) 23:40:25 ID:GJrGkOzC
>>283
>文才ゼロの俺からしたら十分神の領域だ

まったくですね

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/25(月) 21:05:43 ID:qoLDxvPy
オレ コレ カナリスキ

いやまじで
続き期待してるよ

286 :DQ3 :2005/04/25(月) 23:58:34 ID:9Si9IUq8
「お前ってホントに取り柄ねーなー」
筋肉だ。名前はデニス。筋肉っぽい名前だ。

その筋肉を生かして代わりに薪わってくれよ。俺は頭まで筋肉詰まってねーんだよ、この○○○ヤロー。
…もちろん心の中で留める。




ルビスとかいうこの世界の神の使い疑惑は旅立ち三分で消えた。
青いゲル状の悪意ある物質との戦闘でいきなり瀕死のダメージを受けたのだ。
最弱らしいモンスターとの戦闘で死にかけ、泡をふく姿を見て、神の使いと思う奴はいないだろう。
気がつくと、青い髪の優しそうな女性に介護されていた。そこで呪文というものの神秘をみた。
一声発するだけで折れた肋骨も痛み無く繋がる。このごに及んでついていた点滴のチューブも引き抜いたが、あっと言う間に傷が塞がるのには脱帽だ。
癒しを与えてくれた女に俺は女神をみた。名前はスノウ。

287 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:02:24 ID:9Si9IUq8
とまぁ、奇跡を体験した俺はこれがこの世界を生きるのに必要な力と考え、女性陣に師事をもとめた。正直痛いのはイヤなので後方支援をば、という打算もあった。


で、今。俺は薪を割っている。
パジャマは余りの装甲のゲッター1さに勇者がお古の服をくれた。


ところで狐と筋肉はやはり性格が悪い。
俺をどうするか会議で、呪文を教えながら旅をしてやる代わりに、旅の雑務を全て押しつけられたのだ。頼みの勇者もニコニコ見ていたので女神にすがりついたが。
女神は料理はしてくれるが、荷物持ちと燃料、水の調達は俺の割り当てとなった。
女神に力仕事はさせるのは男としてのプライドが許さないので、やむをえないが…。


で、冒頭につながるわけだ。筋肉は奴のアイデンティティを行使せず俺をからかうだけだ。ムカつくよ、このバカ。イね。
…頭の中だけ龍になれる俺だった。


288 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:03:28 ID:ECHFbos3
で、雑務が終わると勇者と筋肉はチャンバラをはじめる。かなりの迫力で見ててあきないが、下手すると筋肉は狙いを俺に定めるので危険だ。一度木刀を受けた右腕が変な方にまがった事がある。まぁ、素人には以下略。

だから、俺は狐に呪文講座を習うことにしている。ムカつくが、こいつは論理的だ。語学における文法の様に、未知なるものを学ぶにはシステマティックに構成された論理を学ぶのが一番だと思う。

狐に言われたことを要約すると。
世界には魔力があふれている。これを自らの魔力を媒介に指向性なりなんなりを持たせ、言葉の力を借りて具現化する。これが呪文らしい。

魔力は正直まだ知覚できん。つか、カルトみたいでイマイチ…。だが、現に奴が火の玉や氷を出しているのをみると納得だ。百聞はなんとやら。

289 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:07:29 ID:ECHFbos3
次はひたすら集中の練習。呪文はこれが大事らしい。
女神の説法も同時に受ける。神聖呪文は神への祈りによって目覚めるとか。とりあえず俺は頭は柔らかいのでこんなもんかと受け入れた。

今日はいよいよ契約である。呪文にしろ神聖呪文にしろ、扱うには契約がいる。その代わり、これは身体の成長を蝕む。魔力というのを体に合わせ持つのは体に悪いらしい。

ちょっと迷ったけど、契約をする。狐と女神がやってくれた。
胸に痣ができた。星形なら誰かみたいでやがては時をとめる呪文を覚えたりして、とむふむふしてると、狐に火を投げられた。


…へっ?俺の右手が燃えている…。






思考回路が止まる。





確かにあんたは俺を嫌いかもしんないがなにをすんだと詰め寄ろうとしてはたと気づく。


290 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:08:30 ID:ECHFbos3

…熱くない…?!

「どう?気づいたかしら?それが、魔力よ」
…右手から透明な気流の様なものが出て皮膚と火の間に空間がある。

「ここ二週間の訓練であんたの中に魔力が生まれたのが分かってたの。だけど、自分の魔力を媒介に空間の魔力を集めるにはある種のカンがいるのよ。手っとり早いのはあたしがそこまでやってやること。さぁ、唱えなさい。火炎球の呪文を!」

おお!なんというか、腕が延びたような、見えない腕で空を掴むような感じがする。恐れ恐れ、昨日の授業で言われたスペルを叫ぶ!


291 :DQ3 :2005/04/26(火) 00:09:29 ID:ECHFbos3
「メラ!」

右手から何かが迸る感覚。恍惚とする、それでいて高揚感で包まれる。






その結果、右手から放たれた火球は勢い良く筋肉にぶちあたった。





ちょっと、さすがにフライパンであんたの筋肉で殴られたら死ねるというかちょっとまっt





とりあえず女神の神聖呪文で助かる俺。これは殺人ではなかろうかと思いながら気を失った。



HP.10
MP. 8
E旅人の服 E荷物
呪文
メラ

292 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2005/04/26(火) 00:15:17 ID:h6ukMeMD
ワロス

俺のこの手が真っ赤に燃える

293 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:24:18 ID:7aq4z8YB
大陸間移動を果たした俺たちソフィア率いるアリーナとマーニャの下僕たちは、船を港にはいれず接岸し、陸から港町ハバリアへ足を踏み入れた。
逸る気持ちを抑え、宿で一度休息を取る一行。
急いでキングレオに行かないとならないのも確かなのだが、いかんせん長い船旅は皆初めてで、疲労の度合いが半端でなかったのである。
俺も部屋に入るや否や寝る準備もそこそこにすぐにベッドに潜り込んでしまった。

そして、夜。

急に眼が覚めてしまった。
もう一度寝直そうと何度か寝返りを打つのだが、どうもいけない。
少し外の空気にでも当たってこようか――そう考えて外に出ようと、音を立てぬようそっと部屋の扉をあけ廊下にでる。
――目の前に薄ぼんやりとした人影がある。
すわ!?幽霊か!?
俺は内心ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブルしながら、それでも旅の間で少しずつついてきてしまった度胸のせいで、それが果たして何なのか確かめようと眼をこらす。
碧色の髪。
なんだ、ソフィアじゃないか。薄暗くてよく解らなかった。
こんな時間に、どうしたんだろう?
ソフィアは迷い無く歩き、やがて宿屋を出て行ってしまった。
俺は彼女が気になったのもあるし、どうせ外に出ようと思っていたのもあったので、なんとはなしに彼女について行く事にした。
適当なところで声をかけてもいいし、後ろから驚かせるのも良いかもしれない。まさかいきなり斬り殺されたりはしないだろう。アリーナなら危ないが。
彼女を追いかけ宿屋を出ると、既に町からも出て行こうとしている。
慌てて後を追う。だが、歩調がかなり速い為か中々追いつけない。
町の近くとはいえ、一歩外に出てしまえばそこではいつ魔物に襲われてもおかしくない。
そしてこの辺りの魔物はエンドールやコナンベリー、ミントスの魔物と比べてもかなり強いのだ。
俺たちもまた少しずつ強く(或いは慣れてきているだけか?)なってきているのだが、まるでそれに比例するかのように魔物もまた強くなっている。
不安に襲われた俺は、彼女に声をかける事にした。



294 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:25:06 ID:7aq4z8YB
「おーい!ソフィア!」

だが、彼女の足は止まらない。
何故だ?聴こえていない筈はないだろうに――。
一度戻るべきか?多少迷うが、此処で彼女を見失ってしまえば例え戻ってミネアやクリフトに相談しても迅速な対処はできないだろう。
意を決して、一人でソフィアの後を追う。
幸いなことに――彼女の目的地はさほど遠くないようだった。
やがて見えてきた建物――あれは、祠だろうか?――に、その小さな姿が飲み込まれていく。
俺も慌てて彼女の後を追った。

「おわ!?」

するとどういう訳か入り口近くで立ち止まっていたソフィアに軽くぶつかってしまった。
そこで初めて俺の存在に気づいたかのように、ソフィアはひどく驚いているようだった。
俺が、宿屋から出て行く姿が見えたから追ってきた、途中で呼びかけたがそれも聴こえていないようだった旨を伝えると、
ソフィアは首を傾げて、俺の声は聞こえなかった、代わりというかなんというか、誰かに呼ばれて此処まで来たような気がするがよく覚えていない、との事だった。
もしかして、罠だろうか?
顎に手を当てて考え込む俺に、ソフィアはそういう嫌な気配は余り感じない、と言う。
…大丈夫だろうか?
未だ迷っている俺を尻目に、ソフィアの方はこの建物自体に興味津々と言った様子だった。
彼女は出会った時から好奇心が旺盛で、新しい物や場所にはとても関心を示す。
――だが、好奇心は猫をも殺す事もある。
まあ、そうならないように俺が見守る事ができれば良いのだが、残念ながら俺はまだまだ守られる側である。
…差は詰まる所か余計に開いている気もするがー…。
俺がまた内面世界に引き篭もっている間にソフィアの方はきょろきょろとしながら前進している。
俺は再び彼女を追った。

295 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:25:57 ID:7aq4z8YB
建物自体はそこそこの大きさがあるようだった。
高さも横幅も俺が知っているような家々のものとは違い大分大きい。どちらかというと、祭壇のイメージだろうか…?
建物の中央に、眼の高さ位まである十字の塀の中で一際大きな炎が赤々と滾っている。
とりあえず、火の大きさだけで俺の身長以上あるわけだ。
そして中央の炎を守護するように――或いは寄り添うように、7つの少し小さな、それでも十二分に大きな炎。
そもそも何が燃えているんだろうか?こんな所で炎を焚いている理由はあるんだろうか?
疑問は尽きないが、魔法が実在する世界でそういう事をあんまり気にしてもしょうがないかもしれない。と、最近達観してきている。
…思考停止だな。これは危険な気もするが…。
俺たち二人は、その何とも言えない不思議な空間に眼を奪われつつ、ぐるっと回り込み奥を目指した。
ソフィアの足が止まる。俺がどうしたのかと彼女の視線を追ってみると、そこには1つの人影が見えた。

「ようこそ。此処は、お告げ所。神のお告げが降る聖なる祠」

こちらが誰何の声を上げる前に、人影が語りだした。
声の雰囲気から察するにどうやら女のようだが。
俺とソフィアは一度顔を見合わせる。

「バトランドの戦士ライアンが、勇者を捜し求めてやって来たのです。
神の示された勇者の姿をライアンに伝えておきました。
光が一段と輝きを増しています。やがて、出会いの時が来るでしょう」

一方的に叩き込まれる情報に俺たちは軽い先制パンチを食らった気分だ。
というか、オラクルマスターはミネアだけで間に合っている。

296 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:31:53 ID:7aq4z8YB
「神って、なんすか?」

「神は、神です。全知にして、全能なる存在」

「本当にいるの?」

「いますよ」

「見た事あるの?」

「ありません」

「じゃあ、いる事の証明はできないんじゃね?」

「私には神の声が聴こえます。それに、存在するのですから、それは存在するのです」

淡々とした応答。うぐぅ、よく解らん。
俺はとりあえず一度質問を変える事にした。

「全知って事は、何でも知ってるの?」

「そうです」

「じゃあ、俺の事も知ってるんかな?」

「貴方についての神の御意思は量りかねますが、神が知りえぬ事はありません」

297 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:33:08 ID:7aq4z8YB
ふーん…?
どうも眉唾物の話しだが、仮に実在するとしたら神様とやらに会えれば元の世界に戻れるかも…?
しかし、なあ。全知全能ならもっと色々やって色々良くしてくれりゃいいのに。って、俺も抽象的過ぎるか。
少なくとも――ソフィアにこんな過酷な運命を背負わせる事は無いんじゃないかと思う。
それとも、神とはそういうものなのだろうか?存在するにしろ、しないにしろ。
あんまり良いイメージが無いな。神様とやらには。
いやまあ、神様に罪があるとするならその存在自体が罪だって事になっちまうし、それはあんまりかもしれないが。
カルトにしろ、原理主義にしろ、神の名を盾に好き勝手やるのがいるとなあ。
俺の世界の宗教はイデオロギーの面が強すぎるし――神がいつも見ていると説かないと己を律する事ができない奴が多いのが、人の落ち度なのだとしても。
神という概念が存在する世界としない世界を比べるのはナンセンスだが、どうだったろうなと考える事はある。
まあ、今より良いと断言できるほど神を憎んでもいないのだが。
俺の元の世界の話こそ今はどうでも良い。悲しい事だが。
この世界に神の概念がなければ、比較する事もできたかもしれないがね。

くんっと袖を引かれる。
何か訊きたい事があるのだろうか。どうした?と訊ねてみるが、ソフィアは眼を伏せ頭を振るばかり。

『此処は…此処は、何か、嫌…』

…震えているのか?
ソフィアのこんな姿を見たのは久しぶりな気がする。
それこそ、あの村や、エンドール以来では無いだろうか…?
この祭壇に邪悪なる者達の気配は無く、禍々しい邪気のようなものも感じない。(俺はまだまだ素人だが)
そんな俺が感じるのは――圧迫感、だろうか?
俺は女に軽く会釈をした後、ソフィアの手を引いてハバリアの町へ戻る事にした。
とりあえず、ライアンという戦士が確かにこの辺りに来ているらしいというのが解っただけ収穫だったと今は思おう。

298 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:34:24 ID:7aq4z8YB



俺たちの目前には、威風堂々とした城が立ちはだかっている。
なるほど、キングレオ城の名に恥じないものだ。

「相変わらずこの城はいやーな空気に満ちているわね」

隣にいるマーニャが、眉間に皺を寄せる。
ミネアがきゅっと自分の服の襟元を掴む。

「バルザック……。今度こそ、絶対に許さない」

思い詰めたようなミネアの言葉。
それとは対照的なのがアリーナだ。

「お城っていうだけでちょっとサントハイムを思い出すわ」

なんとも能天気な台詞だなと思い、アリーナを見ると、彼女の眼は思いのほか真剣だった。
此処ではない何処か。この眼は何処かで見た気がする。…そうか、あの時のソフィアも…。
――今は決して届く事が無い、哀切を帯びた瞳。
彼女たちには、非常に重たい荷があるのだろう。
現在、城の前にいるのはソフィア、アリーナ、ミネア、マーニャ、そして俺の五人である。
他の男たちは皆馬車で待機している。
この面子になったのも、事情を考えると妥当と言えば妥当なのだが妙に偏ったものだ。
アリーナだけは、彼女を心配するクリフトと揉めたのだが、
結局何処ぞのストリートファイターのような、俺より強いヤツに会いに行く的な事を言う姫君を止める事はできなかった。
俺としてはそんな強敵に出会う事無く、穏やかにつつがなく波風の無い人生を歩みたいのだが…。
…まあ、そんな事を言えばついてこれないクリフトに怒られてしまうかもしれない。潜入に近い形になる以上、全員でぞろぞろと行く訳にもいかなかったのだ。
俺は何のかんのと言ってもソフィアを出来る限り助けてやりたいと思っているし、その為にはついて行く必要があるのも確かだ。
俺がついて行きたいと言う限り、ソフィアは許可してくれそうなのだが――最近、こちらを心配そうに見る事が増えている。
もっとしっかりしないと危ないかも、俺。

299 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:35:53 ID:7aq4z8YB
見張りもおらず、開け放たれたままの城門をくぐる。
前方には庭が広がり、二つの噴水。そして、大きな正門。流石に正門の周りには、兵士が二人ほど立っていた。
先頭を行くソフィアが何かを見つける。どうやら、噴水の近くに人影があるらしい。
俺たちが近づいていくと、相手もこちらに気づいたようで小走りに近づいてきた。

「ボクはホイミンという旅の者です。
どうか、お城の中に連れて行かれたライアン様をお助けください!
魔法のカギがあれば中に忍び込める筈です」

なんだこいつ?ちょっと迂闊じゃね?
まあ、俺たちは城の兵士には見えないだろうが…。
アホな子かな、と思ったのだがどうやらかなり焦っているようである。
ライアンという戦士とどういう関係なのだろうか…?
ちなみに、ぱっと見は男に見えるのだが詩人のようなゆったりとした服装に、整った顔立ちの為性別がはっきりしない。
うほっ、なのかボクっ娘なのかは敢えて言及を避けよう。俺は後者の方が夢があって良いと思う。

「助けてと言われると途端に見捨てたくなるのは何故なの?ねえ、あたし。
そういえば、あの時も鍵がかかってて中に入れなかったわね」

サドっ気全開のマーニャに内心おどおどしつつ、
その時も魔法のカギとやらを使ったのかをミネアに訊ねた。

「いえ。以前はオーリンさんが扉をこじ開けてくれたんです」

この台詞が決定的だった。
これを聞くまでは、彼女もカギを先に取りに行かないとだめかーと言っていたのだ。
マッスル・プリンセス・アリーナその人である。

「人間に出来た力技なら私に出来ない訳がないわ!」

おまいはいつから人類最高の力を持っている事になったんだ。オーガか?
そもそも、忍び込むんだろう?門の前には兵士がいるんだぞ。

300 :獅子王  ◆gYINaOL2aE :2005/04/26(火) 01:38:32 ID:7aq4z8YB
「城には大抵裏門がある筈よ!そっちからいきましょう!」

こうして俺たちは、アリーナが細い腕で信じられない力を発揮しこじ開けた扉をくぐり、城の中へと潜入した。
ホイミンも焦っていたことだし、兵は拙速を尊ぶという事で良しとしよう。


そこは、外見の立派さとは違い大分おかしな城だった。
一階にも二階にも玉座、王の間が無い。
城の廊下でキモスな男と娼婦のような女が追いかけっこをしている。それを咎めるべき兵士も殆どいない。
散乱したご馳走であったもの。床にぶちまけられたワイン。
それら腐敗臭に混じり、別の異臭もする気がする。毒ガスでも噴き出してるんじゃないのか?いや、それは困るが。
二階の一室に、ひっひっひっと解りやすく笑う学者っぽい男がいた。
軽く小一時間問い詰めたところ、なにやらこの国の王は城の人間を使って魔法の実験をしているらしい。
それを聞いたミネアの表情が沈痛なものに変わった。
とりあえず、こいつを簀巻きにするのは後でも良かろうと一度部屋を出る。

「これで一通り確認しましたね…こうなってくると逆にあそこしかない、となるのですが…」

まだ当てがあるらしく、こちらへ、とミネアが先導する。
城の奥の廊下を歩いていると、壁に向かって立っている兵士が三人ほど見えてきた。

「こ、こら!大人しくしろ!」

中央の、趣味の悪いピンク色の鎧を着た兵士――いや、あれは城の兵ではなく戦士、か――の気合の声が辺りに響く。
戦士――ライアンは、両隣にいた兵士たちを一息で吹き飛ばして見せた。

「あの戦士、中々できるみたいね。兵士をあんなに吹っ飛ばすなんて!」

喜びながら駆け出すアリーナ、そしてソフィア。俺たちも後に続く。


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